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忍び寄る青

 んん~! ……いい天気だなぁ。


 モニカの目に映る世界は、彼女の心情を現すように輝いていた。

 道端に咲く花を見たり、青空を仰いだりしながら、のんびり歩いて辿り着いた昼の街は活気にあふれていた。


 あ! そういえばお昼ご飯がまだだっ。どうしよっかな~。


 この幸せな日に何を食べようかと悩んでいると、そんな気分に水を差すような、低く愛想のない声が彼女の背中にぶつけられた。


「おい」


 モニカは足を止め、顔だけで軽く振り向いた。

 そこにいたのは、青い髪を短く刈り込んだ、褐色肌の屈強そうな男だった。


 モニカはその可愛らしい容姿から男性に声をかけられることも少なくなかった。

 知り合いではないことを確認すると、いつものように無視して通り過ぎようとした。


「眠らせ姫」


 男の口から発せられた一言でモニカは全身の血が凍りついたような感覚を覚え、歩き出そうとした足がぴたりと止まった。


 ****


「だから、何かの間違いだって」

 半ば強引に路地裏へ連れ出されたモニカは、青髪の男、ヴラドに詰め寄られていた。

 身に纏った戦闘服は彼の体にぴたりとくっついており、その下の筋肉が浮き彫りになっている。ベビーシッター業で鍛えたモニカの細い筋肉では、どう足掻いても腕力での勝ち目はなかった。


「ハッ、あくまでもシラを切る気かよ」


 ヴラドは眠らせ姫の正体がモニカということを確信しているようで、その自信にモニカも気圧され始めていた。


「……」

「何のために正体を隠しているのか……。いやそもそも、何でそれほどのスキルを持ちながら、ベビーシッターなんていう職業を選んでいるのか、俺には全く理解できねぇがな。お前が姿を現すのは、決まって誰かがヘマをやって、ダンジョンからモンスターが外に出たときに限ってる。それも、必ずこの街の近くにだ」

「……!」

「つまりお前は、ダンジョンの外にモンスターが出ると困るってことだろ?」

 この男、私の正体を掴んだだけじゃなくて、かなり綿密に調べてる……。

「な、なんのことだか私にはぜんぜん……」


 どうしよう! ここはこの男を眠らせて姿をくらまそうか? それとも、このまま知らん顔を決め込むのが良いか……。

 モニカの頭の中ではこの二択がぐるぐる回っていた。


「森にモンスターが溢れ出しているのは、最近出現したダンジョンが原因だ。……俺たちはそのダンジョン攻略のため動いている」

「だ、だからなに? 私には関係ないから!」


 一瞬、男の言葉からトゲトゲしたような様子が消え、モニカを説得するように試みたが、それでも彼女が話に乗ってこないことがわかると、再び脅すような声色に戻った。


「バカが、勘違いするなよ。お前、正体を隠したいんだろ? 選択肢なんてねぇんだよ。黙って俺に協力しろ」

 モニカを脅す男の目は、目的のためなら手段を選ばないと言っているようだった。


「知らないものは知らないって!」

 その目から逃げるように、モニカは顔をそむけた。

 無意識のうちに、右手が杖のほうに伸びていた。

 確かに、この男の言う通りだ。もう私に選択肢はない。ここはアブソリュート・スリープで――。


「おい、何をやってる!」


 杖を取り出そうとするのを、第三者の声が止めた。

 声のほうに目をやると、赤と黒のユニフォームが特徴の一流ギルド『カテドラル・ナイツ』の男が立っていた。

 ヴラドがモニカのことを恐喝しているように見えたのか、その男が路地裏に入ってきた。


 チャンス……!

 モニカはそう思った。


「た、助けてください!」

「なっ……!」

 突然モニカが態度を豹変させたのを見て、今度はヴラドのほうがうろたえた。


「貴様っ! そこを動くなっ!」

 男は腰から剣を引き抜き、肩で風を切りながら近づいてきた。


「なんだテメェ! 関係ねぇ奴ぁ引っ込んでろ!」

 ヴラドも男に対して好戦的な態度を取った。


 一触即発といった様子の二人。


 今だっ!

 二人が争っている隙をついて、モニカはその場から走り去った。


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