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おやすみなさい

 迷宮を出ると、そこには数十人が寝ている姿と、それを見て右往左往する冒険者たちがいた。

 黒の迷宮から出てきたモニカたちを見て、カテドラル・ナイツの制服を着た男性が驚いた様子で話しかけてきた。


「あ、君たち! 一体なにがあったんだ!」


 三人には、モニカが何をしたのか一瞬でわかった。


「はっはっは!」

「あははっ」

「うふふ」


 それが無性に面白くて、三人は笑い出した。


「な、何がおかしい!」

 モニカたちのことを警戒するような様子で、男性は腰の剣に手を伸ばした。


「あーあ、なんか今すぐ報告書っていう気分じゃないよなぁ。クソ疲れたし」

「うふふ。でも報告書というより始末書じゃないかしら」

「じゃあ……。はいこれ」


 耳栓をつける三人。


「おっけーっ!」

 モニカは再び杖を取り出すと、残りの冒険者たちも夢の世界へ送った。


 ****


 王国ギルドのアジトまで帰ってきたモニカたち。


 相変わらずギルド本部は蜂の巣をつついたような騒ぎになっている。

 ヴラドたちを探しているような声も聞こえてきたので、咄嗟に四人はモニカの部屋に隠れた。

 窓から差し込む月明りだけが部屋を照らしている。


「ここ、失礼しますね」

「どうぞ~。好きなところで休んでね」


 一気に疲れが押し寄せた様子で、各々がイスやベッドに倒れ込むように腰かけた。


「あーどっこらしょっと」


 小綺麗な部屋にいると、薄暗いなかでもヴラドたちの汚れた格好が目立った。


「ちょっと! その汚い格好でベッドはやめてよ!」

「あ? 別にいいだろうがお前のじゃないんだし」

「そうだけど、なんかイヤなの!」

「二人とも、あんま騒ぐと居場所バレちゃうよ?」


 ルティが忠告してすぐ、ヴラドの声が聞こえたような気がするといって部屋の前の廊下を何人かが走り去っていった。


 その後、しばらくは誰も口を聞く者がいなかったがヴラドが口火を切った。


「あー疲れた。ここんとこ戦いっぱなしだったから、ここらで一旦、任務からは離れっかな」

「私も、しばらくはアーミライトについての研究をして過ごそうと思っています」

「ぼくも手伝うよ」

「ありがとうルティ」

「モニカ、これでお前も晴れてベビーシッター復帰だな」

「うん、そうだね」


 会話はそこで途切れた。


 みんな平然としているようで、かなり疲労困憊しているのが表情からわかった。

 しかし、同時に満足感も得ているような雰囲気があった。


 再び誰もしゃべらない時間が続いたと思うと、かすかな寝息を立てながらルティが眠り始めた。

 そして、つられるようにエマもイスに座ったまま夢の世界へと旅立った。


 ヴラドはバーサーカーの副作用で神経が興奮して眠れないはずだが、モニカの肩に寄りかかるようにしてスヤスヤと眠り始めた。

 以前のようにアブソリュート・スリープを発動したわけではないが、いつかの噴水を思い出した。


「おやすみなさい」


 モニカはそう言って微笑むと、ヴラドの頭を優しく撫でた。

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