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アンストッパブル

「はぁ……はぁ……」

 モニカは黒の迷宮を目指して森の中を懸命に駆けた。


 ベビーシッターとして子供たちと走り回っているおかげで、冒険者をやっていた頃よりもスタミナがついた気がした。


 ん? あれは……。


 遠くの木々のあいだから、黒と赤の制服をまとった一団が見えた。

 指折りの一流ギルド、カテドラル・ナイツだ。


 方向的に黒の迷宮に向かっているようだ。


 もしかして、王国ギルドだけじゃなくって他のギルドからも応援を呼んでいるのかな?


 総力戦となるとモニカのスキルは活きない可能性があるが、ただ待っているだけなんて出来ないと思った。


 その思いがモニカの足を黒の迷宮へと向かわせた。


 ****


 黒の迷宮の前には、王国ギルドメンバーを含む冒険者たち数十人が待機していた。


「うわ、すごい人数……」


 モニカはこれだけ大人数で組まれる討伐部隊を見たことがなかった。


 ヴラドくんたち、もう来てるかな。


 モニカはキョロキョロしながら迷宮の入り口に近づいていった。


 近づいてきたモニカに気が付くと、王国ギルドの男が大声で注意喚起した。


「おい君! ここは君が居ていい場所じゃない、すぐに離れるんだ!」


 あ、そういえば私、眠らせ姫っていうの秘密にしてるんだった……。


 当然のように制止されてようやく、モニカは正体を隠して活動していたことを思い出した。


「いや、私も……」


 どうすれば仲間に入れてくれるかな……。眠らせ姫って証明するために誰か適当に眠らせてみようか?

 あ、そうだ! ヴラドくんたちに説明してもらえばいいのか。


「えっと……私も討伐に加わりに来たんですけど、たぶん知り合いが――」

「笑わせるな。お前みたいな何の装備も持たない奴がこの討伐チームに加われる訳がないだろう。何が目的かは知らんが、あまり調子に乗るなら牢獄行きにするぞ」


 男の高圧的な態度に不快感を覚えたモニカだが、戦うべき相手は迷宮の最深部にいるんだと自分に言い聞かせた。


「……ヴラドさんはいますか?」


 ヴラドの名前を出すと男は鼻で笑った。


「何だ貴様、奴らの知り合いか? おい、こいつあの落ちこぼれ集団の知り合いらしいぞ」


 男が言うと、冷やかし目的のギャラリーが何人か集まってきた。


「あいつらなら命令を無視して突入していった。奴の魔力が動き出したとか言ってな」

「え?」


 男の言葉にモニカは混乱した。


「三人が中に入ったのなら、あなた達はここで何をしているんですか?」

「王国からの指示を待っているのだ」

 男は当然だとばかりに言った。


「馬鹿な奴らだよ。もし報告が本当なら、三人で勝てるわけなんかない」

「無駄死にだろうな」

「……」


 モニカは怒りをぶちまけたい気持ちを精一杯おさえながら言った。


「……でも、魔力が動き出したってことは、街が危ないってことですよね」

「だから何だ?」

「突入は俺たちが判断することじゃない、王国がすることだ」

「それじゃあ街が……」

「俺たちの責任ではない」

「……」

「さぁ、分かったらさっさと失せるんだ!」


 モニカは男の指示に従う代わりに、懐から杖を取り出した。

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