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厄災竜 アーミライト・ミュルミドラ

 ヴラドは怒り混じりに扉を蹴り開けた。

 すると部屋からは邪悪な魔力が漏れ出した。


「どうやら、これが全ての元凶ね」


 その部屋にいたのは白い大蛇のような竜だった。


 大木ほども太い胴体がダンジョン内をゆっくりと旋回するように浮遊している。


「予想はしていましたが……『アーミライト・ミュルミドラ』。やはりこのダンジョンのボスは厄災クラスでしたね」


 厄災クラスは最も上位に位置するボスモンスターを表す。


「へぇ、これが厄災クラスってやつか。俺が今まで戦ってきた全モンスターが束になっても敵わねぇかもな」


 ヴラドは平静を装ってはいたが、緊張からかアックスを握る手にも力が入った。


 白い鱗には幾何学的な模様が浮かんでおり、バチバチと音を立てながら体全体に電気のような光をまとっているその姿はモンスターというよりも神の使いといった印象を抱かせる。


「モニカさん」

「なに?」

「厄災クラスを眠らせたことはありますか?」

「うーん……多分ないんじゃないかな」

「多分……って、どういうこと?」

「私、あんまりモンスターのクラスとか気にしたことないから、よくわかんないや」

「嫌味じゃねぇのは分かってるがムカつくな」


 ギュラァァアアア!


「うわ、ビックリした! ヴラドくんが吠えたのかと思ったよ!」

「あー確かに。ちょっと声が似てる?」

「はっ倒すぞクソチビ」


 もちろん咆哮したのはヴラドではなくアーミライトだ。


「くるぞっ!」


 アーミライトは光の球体を飛ばして攻撃してきた。


「はぁっ!」


 ルティが前方にバリアを展開した。


「参ります」


 エマも雷の球体を扇子の先端から飛ばして威力を相殺しようとしたが、敵の球体のほうが一回り以上も大きく押し負けてしまった。


 エマの球体を打ち消しながら飛んできたそれは前方のバリアに当たり、消滅した。

 大きな衝突音とバリアに入った傷が敵の攻撃力の高さを物語っていた。


「私の攻撃魔法とルティの防御魔法を合わせてもギリギリですか……」


 ギュラァァアアア!


 仕留めそこなったのが気に食わないのか、アーミライト・ミュルミドラは激しく咆哮した。


「うっ……るさっ! ルティちゃん、私にも耳栓ちょうだい!」

「え? ああ、うん」


 ルティが作った耳栓を装着すると、モニカはアーミライトの圧にも屈せず歌いながら近づいていった。


「~~~♪ ~~~♪ ~~~♪」


 モニカの歌声を聞いた途端、明らかにアーミライトの動きが鈍くなった。


「効いてる!」


 アーミライトは地上すれすれまで落下したが、寸前で持ちこたえて再び浮遊した。

 さすが厄災クラスというだけあって、アブソリュート・スリープに耐えている。


 うそっ! 目いっぱい魔力を込めてるのに眠らないなんて……。このモンスター、本当に強いんだ。


 ギュラァァアアア!


 今までで最も大きな咆哮と共に、全体攻撃を放ってきた。


 部屋全体に降り注ぐ光の落雷。


 三人は目くばせで意思の疎通を図った。


 エマは自身が電撃となってモニカの元に一瞬で移動した。


 バーサーク状態のヴラドはルティを抱えてモニカの元に飛んだ。


「はぁっ!」


 ルティが頭上に大きなバリアを展開した。


 それは四人を雨から守る傘のように落雷を防いだ。


 ギュラァァア……ァ……


 この全体攻撃がアーミライトの最後の悪あがきだったようで、地揺れがするほどの音を立てなが

 ら落下し、眠りについた。


 静まり返るダンジョン。


「あ、あっけないね……」

 口を開いたのはルティだった。


「まぁ別にいいんだけどよ……。俺らの苦労はなんだったんだ」

「私へのお膳立て?」

「テメェもう一戦ここでやるか?」


 無事に終わった安心感からか、三人の表情は柔らかかった。


「……」


 しかし一人だけ、エマの表情が晴れなかった。


「どうかしたの?」


 モニカが聞いた。


「まだモンスターの気配を感じるの」

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