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薔薇の棘

 水晶の宮殿を攻略し、ギルドに帰宅したモニカたち。

 一度、別の王国ギルドパーティが失敗に終わったダンジョンを攻略したのだ。

 モニカは英雄にでもなったような気持ちで城門をくぐったが、待ち受けていたのは期待していた反応とは全く異なった。


「おい、あいつらまた新しいガキ連れてるぜ」

「ちょっとぉ、聞こえるって」

「あれじゃない? そういうシュミなんじゃない?」

「えー、キモチワル」


 モニカが横目で声のするほうを見ると、二人の女と一人の男がクスクスとやっていた。

 ギルド内でヴラドが嫌われているのは城に入った直後から気づいていたし、納得もできる。しかしエマとルティもこうしてクスクスと笑われながら陰口を叩かれるのは意外だった。


 エマとルティも慣れているのか、全く気にしている様子はない。

 ヴラドの性格を考えればすぐにでも反撃しそうなものだが、争いは同レベルでしか発生しないということなのだろうか。


「私はギルドに報告してから行きますから、先に戻っていてください」

「うん、よろしく」


 エマはギルドにダンジョン攻略達成の報告をするため別方向に歩いていった。


「じゃあ、僕たちは夕飯の支度でもしよっか」

「うんっ! 勝利のお祝いだね!」

 モニカは両手でガッツポーズをして気合いを表現した。


「攻略したっつっても、あんま達成感ねぇけどな」

「僕たちモニカにくっついて歩いてただけだもんね」


 ルティもヴラドに賛成した。


「ええ~。みんなでお祝いしようよ~。楽しそうじゃん! ……あれ? エマさん落とし物してる」


 モニカはエマが持っていたと思われるハンカチが落ちているのを見つけた。

 確か、こんな柄のものをティータイム……もといヴラドがトラップに引っかかっている間の待ち時間に使っていたはずだ。


「私、これエマさんに届けてくるから先いってて! すぐに戻るよ!」


 ヴラドたちにそう言うとモニカはエマを追って走り出した。


 あとで渡せばいいじゃん、というルティの言葉はモニカには届いていなかった。


 城内に詳しくないモニカなので、エマとの距離が離れてしまうと探すのが困難になってしまう。

 確か、あっちに歩いていったよね!

 何となくエマが歩いて行ったであろう方向に走っていくと中庭に出た。

 キョロキョロとあたりを見回す。


「あっ! エマさん!」


 運よく見つけることができたモニカは笑顔で駆け寄った。


「あれ? エマさん、どうかしたの?」


 報告に行ったはずのエマだが、花壇の向こう側で腰をかけて何かをしている様子だった。


「いえ、お恥ずかしながら、段差につまずいたら靴が脱げてしまって。モニカさんこそ、どうかしましたか?」

「これ、エマさんのだよね」

「いいえ、違いますよ。私のは……ほら、こちらに」

「あれ! 私まちがえちゃった。じゃあコレは元の場所に戻さないと……」

「うふふ。そうですね」

「じゃあエマさん、またあとで!」

「はい、また」


 笑顔で手を振りながら戻っていくモニカと、同じく微笑みながら手を振り返すエマ。


 しかしモニカは、エマが座っているのがイスではなく、先ほど陰口を叩いていた三人組ということは知る由もなかった。

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