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Episode 1

時刻はAM3:30。

深い眠りにつけなかった俺はスマホを開く。

綺麗とも汚いとも言えない自分の部屋がぼんやりと照らされる。


「…そーいや、あの子」


仰向けに向きを変えながら呟く。



高校の入学式。

その言葉で心躍る人はが何人居ただろうか。

残念ながら俺はそっちではなく。

俗に言う『陰キャ』ってやつなのかもしれない。


紅汰(こうた)ー!!お前来るの遅ぇよ…」

「はぁ…(あおい)が早過ぎるんだろーが」

「てか見た!?俺ら高校でも同じクラス!」


やばくね!?と目を輝かせる幼馴染の葵。

陰キャの俺とは違い小さい頃からまぁモテるモテる。

コイツと何度比べられたか数えきれない。


「おー、またうるさくなるな」

「んだよつれねぇなぁ…」


周りを見渡してみると友達と談笑を楽しむ学生や

校舎の窓から新入生を眺める派手目な先輩たち。


そんな時


ふいに、後ろから視線を感じた。


「…?」

「紅汰?お前何見て…」


葵も俺と同じ場所から視線が動かせない。

俺らだけじゃない。

今この場所に居る全員が1人から目が離せなかった。


「え、あの子めっちゃきれー…」

「てか外国人?ハーフかなあの子」

「やば、俺タイプど真ん中だわ」

「俺も俺も!」


「まじかわいいなあの子!」

「…そう、だな」

「てか紅汰のことずっと見てね?知り合い?」


桜の花びらが風に乗って舞い落ちていく。

彼女の肌の白さが更に際立ち、銀髪の髪がふわふわと揺れる。

赤く大きな瞳の中には俺がいて。


「いや、知らねぇ」

「は!?いやいやいやガッツリ見てるぞお前のこと」

「知らねーっての」

「えー…?」


彼女に何も話しかけることなく自分の教室へと向かう。

ずっと視線は感じたが、知り合いですらない。


「――ああいうの、無理なんだ」



「はぁ…聞こえちまったかなあ」


不意に出た言葉で彼女を傷つけていないかと不安が募る。

あの子とは結局同じクラスで隣の席。

誤解だと謝るチャンスはいくらでもあったのに

勇気が出せない自分が情けなかった。


「あの子名前なんて言うんだろ」

「あっ、朱乃(しゅの)白銀(しろがね) 朱乃(しゅの)ですっ」

「へぇ…そんな名前なんだ……ってはい!?」


声がした方向に目線を向けると

俺の勉強机の上にちょこんと座る銀髪美少女こと、白銀さん。


「初めまして!何が聞こえてたの?まさか私に?」

「いや待てそもそもここ俺の家だし俺の部屋だし何で!?てかどうやって!?」

「ん?窓からだけど…それがどうかした?」

「あぁそうか窓開けて寝てたもんな俺ってば不用心っ☆」

「ほんとだよー?気をつけなきゃだめだぞっ☆」


…ここ2階っていうのは触れるべきなのだろうか。

いや、きっと聞いちゃいけないことだ触れたら負けな気がする。



「――で、何で俺の部屋にいんの?」


いよいよ本題に移る。

目の前の白銀さんにそう問いかけると

首を傾げながら何やら悩み始めた。


窓から月の光が差し込み、彼女の銀髪が白く輝く。

少し見惚れていると彼女の顔が視界に入る。


「君からはいい匂いがしたの!」

「…俺香水とか付けてないけど」

「ちーがーうーよ、そんなんじゃなくて!」

「てか葵の方じゃね?俺の隣にいた奴」

「身長高い方?」


こてん、と効果音がつくように首を傾げる白銀さん。

葵というイケメンより自分を見ていたことに驚きを隠せない。


「…ガチかよ」


ここまで来ると普通の男だったらこう考えるだろう。

『あれ、コイツ俺のこと好きなんじゃね?』

しかしここは陰キャの俺。勘違いなどする訳が


「君からいい匂いがしたんだよ!間違いない!」


これは俺のこと好きだよね?

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