必要に応じて
死刑執行人は妻の妊娠を知った。彼女はその為にお金が必要であると夫へ申し立てた。あたらしい産着が要るし、赤ん坊へ乳をやると腹が減るから喰うものが必要だと。
数日後、「告発」された人物が処刑されることになった。彼はすでに用意を終えていた。ごうごうと燃える火に長い棒をくべればいいだけだ。やることはたき火と大差ない。棒の先に魔女がくくりつけられているかいないかの差である。
死刑執行人は手紙を書いたのだ。彼の仕事を増やす為に。処刑される人間が居なくては彼には仕事がないし、仕事がなければ彼はお手当をもらえない。
でっちあげは大した苦もなく行われた。彼は悪魔憑依考察を読んだことがあった。彼は文字の読み書きが得意だった。
死刑執行人は仕事を終え、お手当をもらった。妻がうまれてくる子どもの為に産着を縫っている。彼はもう三人くらい子どもがほしいと思う。仕事がなくなることはないから、金の心配は当分要らない。