第34話
希死
「スノー君、わたし、来たよ。貴方の恋人! 分かる?」
「――」
「昨日、貴方のお母様から手紙が届いて、驚いた。ほんとに不幸な事故だったね。貴方が落馬だなんて……」
「――」
「でもね、きっと大丈夫よ。何しろ、わたしがついてるもの! 学校だったら休学願いを出して、貴方を看てるから……明日からはずっと一緒。早く元気になって」
「――」
「よお、スノー。久方振りだ。遥々、みんなで来たぞ!」
「――」
「小さい頃は鼻水垂らして、毎日一緒に遊んだだろ。忘れたなんて言うなよな……目、開けてくれよ」
「――」
「なあ、そろそろお暇しよう。他の患者の邪魔だ」
「でも……」
「みんなで声をかけたところで、こいつは……返事をしないよ」
「――」
「それで、あの、お医者様……この子の容態のほうは……?」
「――」
「何とか峠は越えましたが、未だに意識が戻りません。最悪、このまま長い間、目覚めることはないかも……」
「――」
「そのことですが、家族の方に大事な話がありまして……少し外によろしいですか」
「え……?」
「病室では、ちょっと……」
「――」
「聞いたか? スノー、お前の治療、医者が匙を投げたらしい。生き長らえたと聞いた時は死に損ないめと思ったが、植物人間などになって……くくく。無様なものだ」
「――」
「この街一の名家の俺を虚仮にしたのが悪いのさ。騎士学校では平民ごときに何度も苦汁を飲まされたが、お前がいなくなったことで首席は俺のものだ」
「――」
「どうして勝手に署名したんだ! そんな書類なんかに!」
「――」
「わたしと貴方にとって、この子は大事な息子じゃないですか!」
「だからといって、こんな医療費……払えるわけがないだろう! ただでさえも高い金で進学させてやったのに、恩を仇で返しやがって! とんだ金食い虫だ!」
「――」
「スノー君、今日は……ごめん。お別れ、言いに来たの」
「――」
「紹介するね。この人、実は……進学先の同級生。スノー君のことで悩んで、相談してね、それで――」
「――」
「スノーさん、初めまして。貴方の気持ちは分かります。だけど、安心してください。これから、彼女は僕が――」
「――」
もういい。
俺は身体中の管を抜くよう、懇願した。
小さな小さな、一人の少女が、俺の願いを聞き届けた。
スノードロップ




