表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
叛逆のヴァルキューレ  作者: 雪野螢
40/170

第31話

悲劇




 ――月の日。


 明日は何を隠そう、わたしの十五の誕生日だ。こんな時世にそんな呑気な、気楽なことは言えないけど、家族揃って明日という日を迎えられて幸せだ。

 何でも、母がわたしと父に大事な話をしたいらしい。一体、何の話だろうか。

 母の横顔が胸に残る。


 ――火の日。


 昨日、仄めかされた大事な話の内容は、わたしの実の男親は別人だということだった。母は昔、父とは異なる別の間男(おとこ)の子を宿し、それを隠して、秘密にしたまま父と婚姻したのである。

 驚くことに今の今まで、それは父さえ露知らず……母の話を聞いた父は、黙って家を出ていった。


 ――水の日。

 

 十五の誕生日とか、浮かれたわたしが馬鹿だった。母はその日に打ち明けようと決めていたとのことだった。あれからわたしは部屋に籠もり、一度も外には出ていない。食事も、水さえ飲んでいない。

 一人で蹲っていた。


 ――風の日。


 親子で過ごした日々に、わたしは思いを馳せていた。父も母もとても優しく、わたしを愛してくれていた。

 母は何度も、扉越しにわたしに語りかけてくる。嗚咽の混じった謝罪の声が、わたしの心を苛ませた。


 ――金の日。

 

 今日はフレイア様が女神の涙を流した日。フレイア様は夫を捜して金の涙を零したらしい。

 母も、父の帰りを待って毎日涙を流している。父は未だに帰ってこない。

 わたしは、部屋から外に出た。


 ――土の日。


 母と話をした。互いの気持ちや、考えを。父とも話をしたいと思う。

 きっと……分かり合えるだろう。


 ――天の日。


 週末。今日は天の日。母と買い物に繰り出した。父が好きな料理の具材をたくさん準備するためだ。

 一息ついて、一旦、わたしは部屋で日記を書いている。家の呼び鈴が鳴り響いた!

 続きは、あとで書こうと思う!


「……」

「ねえ、もういいでしょ。恥ずかしいから止めてよ」

「……」

「人の日記を読んだりして、ほんとに変わった神様……」

「……」


 あの後、わたしはすぐに戸口に飛び出し、呼び鈴に対応した。

 思った通り鈴を鳴らした主はわたしの父であり、しかし、父は何も言わず、冷たい表情(かお)を浮かべていた。


「その後、起きたことは全部、女神様も知ってるでしょ。お父さんは調理中のお母さんの台所(ところ)に行き、包丁を奪い、襲いかかり……わたしは必死に食い止めた。それで、わたしは突き飛ばされて、頭を打って、そのまま……」

「……」


 父も父で、一人になって苦悩し、考え抜いたのだろう。そうして「決して許せはしない」と自分で結論付けたのだ。

 父は我に返った後、自責の念から自刃(じさつ)して……娘と夫の最期を目にし、母も同じく自刃した。


 女神様は、わたしの日記を何度も何度も読んでいた。

 彼女がわたしを選んだ理由は、わたし自身も分からない。


 父と母が、死んだ後に……和解できたか心配だ。

 両親(ふたり)の仲が直ったことを、(わたし)は、ただただ信じている。




キンセンカ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ