第105話
挿餌
数日前、南の空にて魔鳥の群れを観測した。
魔鳥たちは北の空から飛来したとの見立てであり、南の大陸、山岳地帯に降り立ったとのことである。
わたしたちは竜王国から送り出された偵察隊。
魔鳥の脅威を視察するべく、現地調査を進めていた。
「隊長、上を見てください!」
「あれは……っ!」
「魔鳥の卵です!」
山頂付近の荒れた丘陵、大きく反り立つ岩肌には、魔鳥のものと思しき卵が無数に産みつけられていた。
それにしても凄い数だ。十や二十の騒ぎでない。
その大きさも一つ一つが大人の人間ほどであり、山岳地帯の峰において一際異彩を放っていた。
「……魔鳥の出所、北方だったな」
「はい。仰る通りです」
「渡り鳥が魔王の城の瘴気に当てられ、変異した。狂暴化した渡り鳥は魔鳥となって群を成し、温暖気候の南の地上で卵を産んだというわけだ」
しかし、妙だ。過去の事例に比べて、規模が異常である。
魔王が召喚されて以降、野生の鳥や動物たちが魔物化するのは茶飯事で、わたしたちは此度のような事象を何度も観測した。しかしそれは規模の小さな偶発的なものであり、こんな数の魔鳥の卵を見るのは、未曾有のことだった。
「まるで、誰かが人為的に糸を引いているような……」
「隊長、緊急事態です! 国へと帰還し、報告をば!」
「いや、隊長、卵が孵化する前に一掃するべきです!」
確かに、卵が孵ってしまえば非常に大きな脅威となる。
幸い、現状親鳥たちは留守にしているようであり、危険の大芽を摘んでおくのは今こそ絶好機であった。
「うん……?」
その時、ぴしっ、ぴしっ、と、乾いた音が聞こえてきた。
まさかと思い、遠望魔法で魔鳥の卵を確認する。
魔鳥の雛が、自ら卵を割って――。
次々、孵っていた。
「不味い! 卵が孵化しているぞ!」
「魔鳥が、こんなに一度に!」
「……っ!」
「ぴきーっ!」「ぴきーっ!」――雛鳥たちが一挙に、同時に鳴き始めた。
親鳥を呼んでいるのだろう。駄目だ。もはや間に合わない。
間もなく翼の羽搏く音が四方の空から聞こえてきて、わたしたちはあっという間に魔鳥に取り囲まれていた。
偵察隊の仲間の一人が魔鳥の鉤爪に襲われて、宙に攫われ、逆さまになり――。
「うわあああーっ!」
……そのまま啄まれた。
「散るな! 固まれ! 狼狽えるな! 総員、戦闘態勢――」
「きゃあああーっ!」
魔鳥の鋭い嘴により、仲間が……引き千切られていく。
そして、わたしも……。
「――」
……。
偵察隊は、全滅した。
ハコベ




