表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
叛逆のヴァルキューレ  作者: 雪野螢
153/163

第105話

挿餌




 数日前、南の空にて魔鳥の群れを観測した。

 魔鳥たちは北の空から飛来したとの見立てであり、南の大陸、山岳地帯に降り立ったとのことである。


 わたしたちは竜王国から送り出された偵察隊。

 魔鳥の脅威を視察するべく、現地調査を進めていた。


「隊長、上を見てください!」

「あれは……っ!」

「魔鳥の卵です!」


 山頂付近の荒れた丘陵、大きく反り立つ岩肌には、魔鳥のものと思しき卵が無数に産みつけられていた。


 それにしても凄い数だ。十や二十の騒ぎでない。

 その大きさも一つ一つが大人の人間ほどであり、山岳地帯の峰において一際異彩を放っていた。


「……魔鳥の出所、北方だったな」

「はい。仰る通りです」

「渡り鳥が魔王の城の瘴気に当てられ、変異した。狂暴化した渡り鳥は魔鳥となって群を成し、温暖気候の南の地上で卵を産んだというわけだ」


 しかし、妙だ。過去の事例に比べて、規模が異常である。


 魔王が召喚されて以降、野生の鳥や動物たちが魔物化するのは茶飯事で、わたしたちは此度のような事象を何度も観測した。しかしそれは規模の小さな偶発的なものであり、こんな数の魔鳥の卵を見るのは、未曾有のことだった。


「まるで、誰かが人為的に糸を引いているような……」

「隊長、緊急事態です! 国へと帰還し、報告をば!」

「いや、隊長、卵が孵化する前に一掃するべきです!」


 確かに、卵が孵ってしまえば非常に大きな脅威となる。

 幸い、現状親鳥たちは留守にしているようであり、危険の大芽を摘んでおくのは今こそ絶好機であった。


「うん……?」


 その時、ぴしっ、ぴしっ、と、乾いた音が聞こえてきた。


 まさかと思い、遠望魔法で魔鳥の卵を確認する。

 魔鳥の雛が、自ら卵を割って――。


 次々、孵っていた。


「不味い! 卵が孵化しているぞ!」

「魔鳥が、こんなに一度に!」

「……っ!」


「ぴきーっ!」「ぴきーっ!」――雛鳥たちが一挙に、同時に鳴き始めた。

 親鳥(なかま)を呼んでいるのだろう。駄目だ。もはや間に合わない。


 間もなく翼の羽搏く音が四方の空から聞こえてきて、わたしたちはあっという間に魔鳥に取り囲まれていた。

 偵察隊の仲間の一人が魔鳥の鉤爪(つめ)に襲われて、宙に攫われ、逆さまになり――。


「うわあああーっ!」


 ……そのまま啄まれた。


「散るな! 固まれ! 狼狽えるな! 総員、戦闘態勢――」

「きゃあああーっ!」


 魔鳥の鋭い嘴により、仲間が……引き千切られていく。


 そして、わたしも……。


「――」


 ……。


 偵察隊は、全滅した。




ハコベ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ