第84話
絶叫
わたしは いまでも ゆめを みている
ただただ のどかな その ひびを
しを まえに して ゆめを みている
ははとの さいかい それだけを
つきひが すぎさり ながされてゆく
みなみな ふへんか そくさいか
なつかしき ひを おもいおこす
くるしみの ない ありし ひを
しかくい へやにて さんかくずわり
てんを あおいで まるくなる
ばとうの こえには いまなお なれず
つげた ことばは つたわらない
せんか しずまり みな よろこぶも
らいほうの もの あらわれず
れいふう くすぐり やみの ただなか
るいせん かれはて じせいと する
「……うわ、こいつ、死んでますよ。看守長、どうします?」
――。
「やっぱりくたばったのか。無期懲役の女だ」
――。
「壁にびっしり何かの文字が……? げっ、こいつ、抜歯してる!」
――。
「自分の全歯を使って、自作の詩文を書いてたのさ」
「どういう意味があるものなのか、誰にも分からなかったがな」――看守兵は、わたしの死体を引き摺り、そのまま立ち去った。
アルストロメリア・アイスクリーム