表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
叛逆のヴァルキューレ  作者: 雪野螢
100/138

第81話

捜索




 あの子は西の傾国姫ともいわれた、物言う花だった。

 聖王国のトケイ姫にも劣らぬ、可憐な美女だった。


 西の国の王女であった彼女は、とある日、失踪した。

 営利誘拐されたというのが自国の見解だったのだが、月日の経った今となっても彼女の所在は分かっていない。


 所在どころか安否一つも不鮮明な状態で、王は大層お嘆きになり、今では床に臥せっている。

 我が国切っての密偵たちが世界中に放たれたが、有力となる情報などは報告されないままだった。


「……」


 わたしはしがない老い耄れ、姫の教育係である。

 密偵たちとは別行動で彼女の行方を追っており、終戦後、わたしは一人で東に足を延ばしていた。


 東の大陸、そのまた東の最果てにある大辺境。

 こんな場所まで辿り着いても、姫は……。


 どこにもいなかった。


「……」


 辺境海を見つめ、わたしはゆっくり頽れた。

 体力的にも精神的にも、この身は……若くはなかったのだ。


 東西南北、ありとあらゆる場所へと赴き、捜索した。

 しかし姫の痕跡さえも発見するには至らない。


 未調査であるところといえば、それこそ……魔王の居城くらい。

 はたまた、生者は干渉できない……死後の世界くらいだ。


「!」


 その時、海辺の砂が軋む小さな音が聞こえてきた。


 戦女神、ヴァルキューレ――。

 身体に鞭打ち、平伏する。


「い、戦女神様! 何卒、お聞かせください!」

「……?」

「貴女様の眷属、従者に、我らがリアン姫は……っ!」

「……」


 戦女神様が現れ、わたしは、ぴんと来たのである。

 聡明である姫が仮にご逝去なされた後ならば、英霊として選定されて、或いは……神界、ヴァルハラにと。


 人差し指を顎に当て、何やら「うーん」と考え込む。

 戦女神様は、その後、


「恐らく」――ゆっくり開口した。




ボルネオソケイ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
うふふっ、もしも出会えたらどう思い、どう言葉をかけるのか想像しただけで楽しくなってしまいました♪( *´艸`)<ありがとうございます! そして、エピソード100達成おめでとうございます♪٩( ''ω…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ