表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
墓穴を埋める  作者: 下之森茂
5/10

5.盗掘仲間

隙間風の鳴る物置のボロ小屋で、

イタリア語の古新聞を読んでいると

扉が叩かれ、少年が覗き込む。



「連れてきたか。」



「へぇ。」



この赤髪の少年は、仲介業者の盗掘仲間だ。



スコットランド訛りの英語を使うが、

口が固いので重宝している。



道具を持って外に出ると、

少年の後ろにハゲ頭の大男が立っていた。

体臭が酷く、5歩先まで臭ってくる。



少年がつたないドイツ語で、

俺との仕事内容を説明している。



「さっさと行くぞ。」と、

俺はわざとフランス語で指示した。



仕事には決まって外国人を使う。



墓を掘り返すのは肉体労働なので、

当然ながら多くの言葉は必要ない。

違法行為なので、外国人は勝手がいい。



この外国人が他所で捕まったとしても

決して惜しむ人材ではないし、言葉の壁のお陰で

英国人の俺にまで捜査の手は伸びない。



そして失敗はありえない。



失敗は依頼主にまで、影響を及ぼすからだ。

失敗は信用を失い、仕事を失う。

すなわち俺の死に直結する。



少年時代に仲介業者(エージェント)から教わった。



それから賃金。

墓荒らしは決まって成果払いだ。



違法ではあるが、儲かると思われては困る。

現金は出せない。現物支給が条件だ。



報酬は『特効薬(ローダナム)』の小瓶。



ケシの実から採取・合成され、

鎮痛効果があるので万能薬とまで謳われ、

これさえあれば高い医療費を払わずに済む。

そんなはずはないが、信じてる者は多い。



一般に出回っている安い薬だ。

仕事にあぶれ、路上で寝ている外国人は

こんなものも買えないほど、困窮していた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ