歪みアソビ
物語のカケラ。
「優弥俺さ、もしかしたら見つけちゃったかも。異界へ行ける歪みを」
朝、隣のクラスの拓磨は学校に来るなり、ランドセルを背負ったまま俺の席のところに駆け寄ってきて、興奮気味にそう言った。
「歪み」…この世には、時空の歪みが所々にあって。俺らの住む町は、特にその「歪み」が多くあるといわれている。歪みといっても、大体がちょっとその場所からずれてるってだけで。だから、歪みに入ってもちょっと離れたところにワープするような感じなのだ。
ただ噂では『異界に通ずる歪みがある』と言われていて。だけど、異界への歪みは噂だけで誰も見たことがなかった。
「朝からなんだよ?夢の話?」
「違うよ!昨日放課後昴たちとかくれんぼしてる時にさ、偶然それっぽいのを見つけてさ!」
目をキラキラと煌めかせながら、拓磨はそう話す。
「なあなあ!今日の放課後さ、その場所に一緒に行こう!」
「何で俺だよ。昴たちと行けばいいじゃん」
「昴たちに話したけど信じてくれないもん!なあ、優弥~異界に行ってみようぜー!」
うーん…と俺は少し考えて。
「…わかった、いいよ。その代わり何もなかったらアイス奢れよな」
「え~?まあいいや。じゃあ、放課後なー!」
拓磨はそう言って、ランドセルをガチャガチャと揺らしながら自分のクラスに戻っていった。
◆
「わりー!今日居残りしないといけなくなっちゃった!」
放課後、ワクワクしながら俺のクラスに来た拓磨に謝りながら俺は言った。今日提出しないといけない算数の宿題を忘れたので、罰として算数のプリントを書いて先生に提出しないといけなくなったのだ。
「え~…じゃあ俺先に行って待ってるよ」
「悪い。ソッコー終わらせて行くから!」
「うん!絶対来てね!」
そう言うと、拓磨はガチャガチャとランドセルを揺らしながら駆けていった。
そしてそれが、俺と拓磨の最後の会話になった。
拓磨はその日、行方不明になったのだ。