23/40
魔王の涙
今日は超短編物語。
人類も生物も滅んだ星。
人々が住む家々は殆どが崩れて、瓦礫と化していた。
瓦礫に絡み付く蔦の跡。
その蔦もからからに枯れはてていた。
木々も草も絶えたこの世界に、生き残る者が一人。
魔王だ。
不老不死の魔王は朽ち果てずに、この星にいた。
一人で。
全ての生き物が絶滅していくなか、魔王だけが滅ぶことなく存在していた。
魔王はかつて、自身以外の生物なんて滅べばいいと言っていた。
今その状況に、魔王はいる。
孤独になってもう何百年…何千年…
いや、もっとかもしれない。
「…お前の言う通り、一人はつまらんな…勇者よ」
勇者の墓の前に胡座をかきながら、魔王は無口な勇者の墓に話しかける。
「再生の呪文があったら…私はお前を…みんなを…なんて、今更か────」
魔王の頬に伝う、あたたかなひとしずく。
魔王は初めて、涙を溢した。
孤独な世界で、魔王は涙を溢しながら吼えるように泣いた。
魔王の声は、静寂の枯れた地に…よく響いた─────