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移住記録 ~異世界に移住した僕の開拓と捜索と成り行きの日々~  作者: 於田縫紀
エピローグ もしくは次へのプロローグ

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エピローグ3 キャンプじゃないけれど

 鍵を返しに役場へ。

 まだ時間的には余裕なので2階へ上がって受付の窓口に向かう。


「先ほど物件を紹介していただいた者です。鍵を返しに来ました」


 受付にいた女の子にそう声をかけたところ、奥から先程の男性が顔を出した。


「あ、どうでした」


「良かったです。広さも作りも、船着き場も」


「それは良かったです。何でしたらこれから契約手続きをしてしまいますか。物件そのものは今日引き渡しで、家賃は今月の残り分はサービスで来月分からとなりますけれど」


 確かに今契約してしまえば後は楽だ。


「契約に必要なものは何かありますか」


「来月分の家賃だけですね。公設市場等での取引があるのならそこで使用している口座からの自動引き落としにする事も出来ます。学校に通われる方がいるならその手続きも此処で可能です。まだ時間内ですから」


 なお今月はあと10日近く残っている。


「どうする?」


 ちひや美愛に声をかけてみる。


「もう借りるつもりだし、なら手続きしてしまった方がいいよね」


「私もそれでいいと思います」


「あのお家、すぐ住める?」


 結愛も含めて問題なしという事の模様。


「それではお願いします」


「わかりました。どうぞこちらへ」


 再び先程の個室へ。

 手続きそのものは簡単だ。

 契約書類に必要事項を記入してサインする程度。

 なお契約書類は知識魔法と僕の経験で確認したが、問題は無かった。


「それでは本来の魔法鍵をお渡しします。これを持った状態で家に入れば、次回からは鍵が無くとも入れるようになります。また警備の方はこちらから解除をかけますので、今から自由に使用可能です」 


 ついに家を借りてしまった。

 いままでに類をみない広さで船着き場まである。

 これで毎月しっかり稼がないとまずくなったわけだ。


 今のところは問題ない。

 しかし商売もある程度多角的にしておいた方がいいだろう。

 醤油や味噌等だけではいつ競争相手が出て来るか、それとも飽きられるかなんて心配がある。


 エビ養殖でどれくらい稼げるだろうか。

 他の方法も準備しておいた方がいいだろうか。


 でもまあ、とりあえず今日はいい方だけを考えるとしよう。


 悪くない場所にいい感じの家を無事借りられた。

 市場へ行くのにもあの山道を行く必要はなくなる。

 材料も簡単に手に入るから商品の増産も楽だろう。

 買い物だって簡単だ。

 猛獣に襲われる心配もない。


 役場を出てすぐちひが告げる。


「少し買い物をしていきますよ。ヒラリアでも向こう三軒両隣くらいには挨拶した方がいいようですから」


 おっと、その辺までまだ頭が回らなかった。

 しかし確かにちひの言う通りだろう。


「此処だと公設市場が近いか?」


「そうですね。向こうの市場は勝手がわかりませんし、公設市場が無難ですね」


「此処で一般的なご挨拶の品というと……小銀貨2~3枚(2~3,000円)程度の食品みたいですね」


「焼き菓子くらいでいいんじゃないですか。タクサルのジャムなんてのもつければ」


 さてはあらかじめ目をつけていたなと気づく。

 ちひは応用動作とかアドリブとかは得意では無い。

 何気ないような台詞でも思いついてすぐという事はまずない。


「タクサル、美味しそうだった」


「なら買って食べてみようか」


「砂糖漬けと生、それぞれ買ってあります。見た事がないものだったので、味を知りたくて」


「確かに果物っぽいの初めてだよね」


 役場から公設市場は割と近い。

 もう食品部門の入口が見えている。


 ◇◇◇


 予定通り向かい3軒と隣に挨拶した後、借りた家へ。


「船で出ると着く前に暗くなるから泊まりですね。これから焦って宿を探すのならこのお家にこのまま泊まってしまった方がいいと思うんですけれど、どうでしょう。テーブルその他最低限の家具は私の分を持ち歩いていますし、寝袋とマット、毛布くらいなら4人分ありますから」


「私もそれでいいと思います。宿代が勿体ないですし」


「あの大きな魚、食べたい」


 僕としても余分な出費は抑えたいところだ。

 その結果、家具がほとんどない中、新居に宿泊となった。


「今日は全員リビングでいいですよね。だからまず、マットを敷いてと」


 ちひが片面にアルミが蒸着してある薄手のマットを何枚か広げる。

 100円ショップで売っている奴だ。


「キャンプみたいですね」


「元々はキャンプ用に買ったんですけれどね。下手なテント用インナーマットよりこの方が使い勝手がいいですから。床からの冷たさも固さもそこそこ遮ってくれるし。寝るときはまあ、この上にこのマットを敷きますけれど」


「用意周到だな」


「キャンプ用に安くて良さそうな道具を見るとつい買ってしまう癖があったんですよ。だからこれとか同じく100円ショップのポンチョとか、安くて使えそうなのは大量に在庫しちゃってますね」


 更に銀マット2つ、エアマット2つ、寝袋がダウンからシートだけに近いのまで4つと出てきた。

 更にはやはり100円ショップ物らしいエア式枕まで。


「とりあえずこれで寝場所は確保という事で。あとはテーブルですね」


 折りたたみ式の大きなテーブルが出てきた。

 アウトドア用でシーズンになるとホームセンター等で売っている奴だ。


「今日は座卓の高さで組み立てます。ここを開いて、この折れている脚を引っ張るだけ、今回はこの個別の脚は使わないから」


 長い辺が120cm、短い辺が60cm程度のテーブルが完成。

 高さはこたつ程度。


「こういったグッズは真面目に働いていた時代、今度こそはキャンプに行くぞと思ってつい買ってはそのままになってしまってものなんですよ。まさか異世界で、しかも家の中で使うとは思いませんでしたけれど。

 でも楽しいからいいですよね」


「楽しい!」


 うーん、やはりちひと結愛、意見が合う模様。


「さて、それなら結愛ちゃんのリクエストに応えて、そこで捕ったノータスの料理を作りますよ」


「いい!」


 こっちの方が姉妹なのではないかと言うくらいにいい調子だ。

 ただ僕としてはある懸念がある。

 だから一応言っておこう。


「頼むから味付けは美愛、頼む。ちひの味付けよりは確かだからさ」


「それじゃ美愛さんはこれにかけるソースお願いしていいですか。味は基本的に鶏の胸肉系統です。棒々鶏ソースとかが美味しいようですが、今回は半生で仕上げるのでとりわさ的な感じでもいいです」


「わかりました。それではあとスープやサラダも用意します」


「先輩も働いて下さいよ。大学時代のキャンプなんかでは飯炊き職人を自称していましたよね。ならアローカで白い御飯をお願いしますよ」


「はいはい」


 広いリビングの真ん中にシートを広げ、キャンプごっこみたいな感じで夕食調理がはじまった。


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