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移住記録 ~異世界に移住した僕の開拓と捜索と成り行きの日々~  作者: 於田縫紀
プロローグ 現代日本

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プロローグ3 移住の時

 それでは移住場所の調査及び選定をしよう。

 大雑把な処までは決めている、

 異世界、惑星オースの南半球にあるヒラリア共和国。

 ここの南西部にある『ヒラリア共和国特定開発推進区域』。


 これはちひの居場所がある程度掴めたからだ。

 ちひの奴、1つの暗号だけでは伝わるか心配だったらしい。

 それとも漢詩暗号が消される可能性を想定していたからなのだろうか。


 ちひは署名の飾り部分にもう一つ、もっと簡単かつわかりにくい暗号を隠していた。

 署名の端にある飾りのような文字をUNICODEの16進数になおし、更にその16進数を10進数に読み替える。

 その読み替えた数値を原子番号として読んで元素記号に変換する。


『HIRaLiAg HeRaSUNiSi』

 そんな文字列になった。

 つまり『ヒラリアg、ヘラスニシ』だ。

 gが余分だが、これはAという元素記号が存在しないからだろう。


 ヒラリアとは異世界移住先である惑星オース上の国、ヒラリア共和国。

 ヘラスとはその南部にある都市名だ。

 その西側には『ヒラリア共和国特定開発推進区域』がある。

 移住者や移民を募集している区域だ。


 つまりちひはそこに移住したという事だろう。

 そしてこの場所、今でも移民受け入れ実施中だ。

 ただこの区域、結構広い。


 その中で僕は次の条件で場所を探した。


  ① ヘラスの西、海沿いで

  ② 移住可能な開発区域内で

  ③ 既存集落から比較的近い場所

 

 ①はまあ、ちひがいそうな場所の近くという事で。

 近い場所なら集落に出る際、同じ経路を使う可能性がある。

 しかも海沿いなら海産物から蛋白質等を採る事も出来る。

 自然相手にサバイバル的に生きるにも有利だろう。


 ②は移住する関係上、手続きの問題からの必然だ。

 ③はちひを探す関係上、集落等へ出向くことが多くなるだろうから。

 それなら集落からは近い方が絶対的に便利だ。


 30件以上の場所を精査し、ようやく悪くないと感じる場所を発見した。

 西側に川があり、中央に全長700mと小さめの浜がある場所だ。

 先程見た場所程傾斜も厳しくない。

 低地でそこそこ平らな場所もありそうだ。

 周囲の地形から、これより良さそうな場所は無いだろうと判断する。

 あとはもっと日照条件が悪いか集落から許せない位に遠いか。


 ならば予約してしまおう。

 予約の訂正は後からでもある程度可能なようだから。


 さて、次はオース共通語の勉強をしよう。

 僕は語学は苦手としているが仕方ない。

 これも全て脱出する為だ。

 

 最初はちひがどうなったかを確かめる事だけが目的だった。

 しかし今、目的は更に2つ増えた。

 ひとつはこの息苦しい環境から脱出する事。

 もうひとつはWebに記載している通りの異世界に行く事だ。


 ◇◇◇


 ちひのメールから1ヶ月と少し過ぎた9月半ば。

 僕は残りの夏季休暇をまとめて取った。


 それ以外にも職場で色々細工をした。

 たとえばそれ以降の月曜から金曜までを6週間分、年次休暇として勤務予定に入力済みだとか。


 これらの休暇は当然上司の決裁を受ける。

 僕は主任だから係長、課長代理、課長が順番に決裁。

 資源節約という事で全てが電子決裁だ。

 しかしここの連中、課長以外はパソコンをほとんど使えない。

 電子決裁も基本的にめくら判というか見もせずチェックするだけ。


 実際、ほとんどの書類はそんな処理で済む。

 そんな電子決裁の中に休暇届を紛れ込ませておいた。

 案の定課長代理まではあっさりノーチェックで通過した。


 課長だけはパソコンを一通り扱える。

 課内の仕事内容も全て把握しているし決裁もしっかり確認する。

 ほとんどの部下が無能なのを知っているから。

 だからあらかじめ話しておいた。

 もう我慢できないから他へ逃げると。


「その方がいい。今思うと私も逃げた方が良かったと思う。後悔してももう遅いけれどな。君は新天地で頑張ってくれ」


 怒られるどころかむしろ励まされてしまった。

 結果、僕は週休日等を含めると10月終わりまで休みとなっている。

 書類上は正規の決裁を経ているので問題ない。


 その休み初日の午前5時過ぎ。

 怠惰な同居老人達が起きるより早く僕は起きて準備を開始。

 まずは自動車のトランクに隠してあったグッズを自分の部屋へ運び込む。


 パソコンは昨日夜にデータを完全消去しておいた。

 スマホも初期化して今はメールも何も入っていない状態。

 向こうへ持っていくものをアイテムボックス魔法で収納する。

 ベッドも寝具一式も、更に僕自身の服もロッカーや洋服ダンス事全部。


 練習用の魔法陣設置済みの僕の部屋内ならこの程度は収納可能だ。

 なお移住事務局に預けてある移住用に購入したものは、異世界へ転移時に僕のアイテムボックスに追加される予定。


 今後日本側で必要となる手続き等は全て事務局に委任済み。

 退職、スマホ契約解除、預金口座解約、転出届から自動車の登録抹消まで考えられる手続き全て。

 委任状も何通も作成して送付済みだ。


 事務局はこれらの手続きを全て代行した後、僕の残った預金と役場の退職金等をヒラリアで使用可能な通貨に両替し送付してくれる予定。

 実家に残すのは登録抹消した12年落ちの中古車だけだ。


 多少の騒ぎにはなるかもしれない。

 しかし実家の老人達がどう騒ごうと心は痛まない。

 その程度には見放しているし恨みもある。

 

 職場の方は課長がなんとかしてくれる予定だ。

 係長と代理も形式的には決裁している以上、文句は言えまい。


 さて、まもなく6時になる。

 事務局に移住転移を予約した時間だ。

 靴まで履いたフル装備で部屋の中央に立つ。


 確か転移時には目をつむっておいた方がいいとあった。

 そろそろ6時ちょうどだろう。

 僕は目をつむる。


 ふっと足元の感覚が消失した。 

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