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黒い天使長編「黒天狗村の伝説」  作者: JOLちゃん
4/19

「家族たちの事情!」

家族たちの事情!



クロベ・ファミリー全員参加に驚きまくるサクラ。

しかし理由を聞いて納得。

ちゃんとした理由+夏のバカンスだった。


……この面子が集まって事件が起きないはずがないのだが……。

***



「もー頭が沸騰してチンプンカンプン通り越して脳みそプリンになって口から垂れそう。これがドッキリじゃないんなら、どういう話か誰か説明してくれ」


 エダが買ってきたアイスを半分ほど食べたサクラが、ようやく口を開いた。



「だから、祭りでやるバンド演奏の助っ人やで」

「何でユージたちなのよ!」

「出来るってJOLJUの紹介や」

「だJO」


「そこがワカラン! 大体セシル! アンタ、こんなしょぼい祭りに出るのか!?」


「祭りのほうには出ませんよ。私は正規のルートで報酬が出るから行くだけです。綾宮家という名家がバイオリン演奏会を開くのに招かれたんです。勿論極秘ですけど」


 そういう個人の依頼を受けて演奏会を行う事はクラシックが日常的に普及している欧州ではよくある事だ。プロとしての正しい対価が支払われるならセシルとしては問題ない。成程、その点はサクラも理解した。斡旋したのは飛鳥とJOLJUだろうが。


 問題なのはセシルではない。ユージたちだ。どう考えたってここの接点が分からない。



「実はね、サクラ。あたしの事情もあったことなの」とエダが説明を始めた。


 実はエダは大学の夏の活動課題で、『文化的な社会奉仕活動のレポート』というものを出さなくてはならない。それで今回のお祭りでのバンド活動の話が渡りに船という形になり参加することになった、という事である。成程、それも分からない話ではない。米国の大学ではそういう社会奉仕活動を重視し奨励している。もっともエダならいくらでも文化的活動の選択肢はあるから、どうして日本のド田舎でバンドライブなんていう選択肢になったのかは分からない。日本語もペラペラだし歌唱力もあり、そこらのアイドルよりよっぽど華もあり上手く出来るとは思うが。



 しかししばらく考えるうちに、サクラはなんとなく分かった気がする。

 エダ本人は全然そんなことはないが、実際は半分裏世界の人間で、<クロベ・ファミリーの王女><裏世界最高のアイドル>などと呼ばれ、裏世界では一目置かれる存在だ。NYで考えなく社会奉仕活動などやれば、裏世界の人間が余計な勘ぐりをしたり、動揺させることになるかもしれない。エダもそういう騒動は困るだろう。しかし日本での活動なら警戒すべきは芸能事務所に目をつけられる事くらいで、NYで活動するよりは気が楽だ。



「本格的なロックバンドとかなら無理だけど、カラオケ・バンドならやったことあるんだよ。ユージが大学生の時大学祭の時に。日本のポップ音楽やアニメ・ソングはあたしも好きだし」


「エダが出たら、色々盛り上がりそうだけど。ていうか! ユージが何でいるんだ!」

「俺がギターを弾くからだ」


「にゃにっ!!」


 今度の事はサクラも初耳だ。ユージとバンド・ギターなど、全く結びつかない。ユージはハードボイルドを地で行く人間ではないか。



「ユージってバンドやってたっけ!?」

「悪いな、高校の時やってたんだよ。それにギターっていうのは酒場で黙っているにも極秘に荷物を運ぶにも秘密の連絡方法としてもいいアイテムでな。潜入捜査官時代はギターかついで放浪していた頃がある」


「ユージとギター!? 全然そんな事……」


 と、頭から否定しようとして、ふとサクラは思い出した。ユージの部屋にギブソンのエレキギターや高そうなアコースティックギターが飾ってある事を。そして、ホームパーティーで皆に酒が回りいい雰囲気になると、時々アコースティックギターを鳴らして場を盛り上げたりしていた事を。単に格好つけているだけだと思っていたが、アレはアレでユージなりに音楽を楽しんでいたというわけだ。


「医者で連邦捜査官でギターラってどんだけ設定もっとるんじゃい。つーか、そんな軽々しくバンドなんてやるタマじゃないじゃん、ユージは!! 死神捜査官の名前が泣くぞ!」


「ユージさんの音楽の素養は確かですよ。思い出してください、サクラ。私の音楽の才能に気付いたのだってユージさんだったじゃないですか」とセシル。そういわれてみればそうである。秘密暗殺者だったセシルを保護し、音楽の道を薦めて、その道で大成させたのはユージである。まるで音楽ができない人間には到底無理な話だ。そう言われてみればその通りだ。


「エダとセシルが行くんなら、誰かしらついていったほうが安全だからな。マスコミ対策をしないといかんし、マネージャー代わりになる人間も必要だ」


「じゃあ拓ちんは何なのよ!」


「拓はピアノで、キーボード担当だ。ちょっとだけ弾けるんだ。あいつも大学時代一緒に演奏した事があるしな。ああ、後、拓の場合は墓参りも兼ねているから。あいつの実家は京都だ」

「そういえば、今お盆か」



 そう言われてみればそうだった。

 拓は全然そう見えないが、高校までは京都で育った元京都人で実家は京都の山科区にある。拓は祭りが終われば、ユージたちと別れて帰省する予定になっている。だから移動手段にバイクを選んでいるのだ。成程、拓の場合元々お盆帰省の予定があったのだから、ちょっとバンドを手伝う事くらい大した問題ではないという事だ。JOLJUが最初に本件の日時を確認していたのは、まず拓の事が頭に浮かんだからだった。



 こうして、話は一本に繋がった。飛鳥も、ユージたちなら色々気を使わなくてすむし、何より報酬面で気を使う必要はない。エダはボランティア、ユージや拓は本業が高給取りで音楽のプロでもないから金銭要求はしない。セシルに払うのは町の名家で飛鳥は紹介しただけだ。それでいて手柄は丸々自分のものにできる。全てが万々歳の素晴らしい計画だ。


 ユージと拓も、墓参りが日本の風習だと説明すれば有給は簡単に取れる。そういう宗教上の理由があればすんなり受理される。



「納得……納得は、一応した」



 色々都合のいい話が重なった結果のようだが、そのあたりは飛鳥とJOLJUが上手く立ち回り話をまとめたのだろう。ここまで分かれば飛鳥とJOLJUの作戦も分かる。まずエダを口説き、エダが出るという事でユージを口説き、帰省するという拓を巻き込み、このメンツを集めたところでセシルに話をもっていって口説けば、このパーティーを集めることが出来る。ユージたちにもそれぞれ事情があるが、そのあたりはJOLJUが把握していたからそう難しい事ではなかっただろう。知らなかったのはサクラだけというわけだ。もっともサクラが知らないのはNYにも日本にも立ち寄らなかったせいだが。


 そしてこの一ヶ月前から依頼主とユージたちはネット通話で打ち合わせを重ねて、余暇を見つけて練習もしてきたという。あいにくこの一ヶ月間、サクラは避暑のためアラスカに行ったりロシアに行っていたりして、家には食事と寝に帰るくらいで寄り付かなかったから全然そんな事は知らない。



「サクラは思う存分祭りを楽しんだらいいよ。あたしたちも思いっきり日本のお祭りを堪能するつもりだからね♪」

「だから多めに小遣いを渡しておいただろ? 祭りで遊べるように」

「……そういうことだったか」

 溜息をつくサクラ。

 この小遣いは前日JOLJU経由でサクラの手に渡った物だが、一日3ドルもしくは300円のはずが、突然「お盆用に」と一万円も渡された。最初はユージが千円と間違えたのか、儲けた! と思ったくらいだ。



「追加は出ないからな」

「それはそうと……」


 そういうとサクラは運転しているユージの脇腹あたりをそっと触って、顔を顰めた。硬く大きいモノがしっかり入っている。



「さすがユージ。ちゃんとDE44を持って来ているし」

「当たり前だ。俺がなんで丸腰だと思ってるんだ」

 と悪びれる様子もなく答えるユージ。ユージならば休暇だろうが日本だろうが銃を必ず隠し持っている。そりゃいくら暑くても上着が脱げないはずだ。しかも腰にはリボルバーがあり二丁も持って来ている。



「この真夏のクソ暑いときに、DEなんて馬鹿でかい拳銃持ち歩いて……ここは日本よ? 撃つ気じゃないでしょうねー」

「夏だとか日本とか、襲ってくる連中がそんな事気にするか。それに1/3は公務だから拳銃所持は合法だ。盆が明けたら警察庁で潜入捜査手法の講習を行う事になっているし、警視庁外事部と情報交換会が予定されている。ま、いつもの建前だけどな」

「ということは拓ちんも?」

「いつものベレッタとリボルバーの二丁を持って来ている。お前たちがいるって知っていたからな。ちゃんと武装はしないと、何が起こるか分からん」


「こんなド田舎で、そんな大事件がホイホイ起こってたまるカイ」



 やれやれ、とサクラは深く座席に深く座り込んだ。ということはユージ、拓、セシル、ついでにサクラはこっそり銃を持ち込んでいることになる。事件が万が一起きてもユージたちなら対応してしまうだろう。もうこれだけサプライズがおきた。これ以上吃驚するようなことはゴメンだ。今は気分を切り替え、祭りを楽しむことにしよう……と、サクラは思った。逆に考えれば、これだけのメンツがいれば、大抵の事件はユージたちが解決してくれるだろうから、サクラが乗り出す必要はないだろう。


 たまには事件もなく、日本の祭りとのんびりとした時間を楽しむのも悪くはないか……と考え直した。それはそれで悪くない暇つぶしになるだろう。


 それに家族や知り合いが皆参加している以上、NYの自宅にも東京にいても居場所はないではないか。



「家族たちの事情!」



一応ここまでが序章です。

こういう理由でユージたちが参加しているわけです。


ユージの音楽、エダが歌を歌う、拓ちん京都人……このあたりのネタは「AL」でも出てくるネタだったんですが、あちらでも公表されたので無事?こちらでも公開です。

そう、意外にサクラはユージたちの過去や趣味を知っているようで知らないというか興味がないというか。このあたりは長年の付き合いのJOLJUのほうが知っていたわけです。

ユージはさりげに元々音楽でも食えたくらい才能がありまする本人はその気がなくて趣味にしていますが。拓はそれほどではなく子供の頃ピアノを習っていて少し弾けるくらいですので基本メインの演奏はユージです。セシルはプロなので祭りではなく招待音楽家です。


そして全員ちやんとフル装備!


事件が起きないはずがない! まぁ事件が起きてこのシリーズなわけですが。

しばらくは祭り編です。今回はサスペンスなので「死神島」みたいにジェットコースター型事件編ではなくじっくり捜査していく長編です。


これからも「黒天狗村」をよろしくお願いします。

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