皆で祭りに参加する
「皆で祭りに参加する」
ついにその日が来た。
仕方がなく京都駅にやってきたサクラとJOLJU。
飛鳥をまつが来ない。
しかし実は…………。
まさかの驚愕展開!?
1 皆で祭りに参加する
***
8月11日 早朝 京都駅。
夏休みの京都である。駅は帰省客と観光客でごった返し、すごい人である。
「一番暑い季節に、日本屈指の暑さを誇る京都に来るなんて、皆物好きなもんだ」
「アイスが美味いJO~」
京都駅北口ターミナルビルのカフェテラスで、サクラとJOLJUはアイスを食べながら駅の改札方向を見下ろしていた。日本人も外国人観光客も大勢いる。さすがは観光都市、サクラもJOLJUも京都に来た事はあるが、こんなに大勢の人で賑わう京都に来たのは初めてだ。元々二人は自由人、京都くらいならばいつでも来られるから特に感慨はない。
サクラは携帯電話を取り出し時間を確認した。もうじき8時になる。飛鳥との待ち合わせ時間だ。飛鳥は今朝一番の新幹線に乗って京都に向かっているはずだ。
……まぁ、たまには日本の祭りを楽しむのも悪くない……。
泊まりで祭りに行く、という事で多少多めに小遣いも貰えたし、たまにはこういう夏も悪くはない……と思ってやってきたが、どうも嫌な予感がする。
「そもそも飛鳥のアホはいつ現れるンじゃい。携帯に電話しても出ないし」
「新幹線で移動中じゃないのかだJO?」
多分そんなところだろうが、新幹線だったら到着時間も分かるはず。それならメールででも連絡くらいすればいいではないか。飛鳥はワリとサクラ相手にはファジーな奴なのである。まぁサクラも時間に几帳面なほうではないが、放置されるのは好きではない。
「ま……後10分待ってやってこなかったら大阪のUSJにでも行こう」
サクラは風流より娯楽優先だから、京都より大阪のほうが好きだ。幸い今回懐は温かい。
JOLJUも特に異存はない。そしてきっちり10分後……飛鳥の姿も連絡もないので、問答無用で大阪行きの電車に乗るべく京都駅北口改札に向かった。もうサクラの関心は飛鳥にも京都にもない。
しかしサクラは後悔することになる。「後10分」だなんて待たなければ良かった、素直に京都観光を選んでいればよかった……と。改札に入ったところで、巨大な荷物を持つ飛鳥の姿が目に入ってしまった。そしてサクラとJOLJUは存在を知る人間にとっては非常に目立つ。気付かれないはずがなかった。
「なんやーお前ら。遅かったやないか! 改札前っていうてたやろ!」
……どうやら飛鳥たちは駅の中の改札前で待っていたらしい。そう言われてみれば『改札前集合』とだけしか打ち合わせていなかったのを思い出した。
「いやいや! 改札前って約束したら普通外ダロ! なんで駅内のほうなんじゃい!」
「そりゃあ、ここからさらに移動するからに決まってるヤン。一度出たら、また乗車料金かかるやないか」
「JO? 確か駅には車の迎えがきてるんじゃなかったっけ?」と言ったのはJOLJU。飛鳥との打ち合わせをしているのはJOLJUである。サクラは初耳だ。しかし、なら余計にそれなら待ち合わせは改札を出たところでよかったではないか。何故駅構内に戻る必要がある? サクラには飛鳥の意図が全く分からない。だが飛鳥はいつも通りマイペースで、「まぁ道は長い。のんびりいこうや~」とさっさと歩き出した。
「だから車が来てるんでしょ」
「来とるよ~。ああ、京都駅やないで。別の駅や」
「ふむ? 市内の別の駅ってコトか。何分くらい乗るんじゃ?」
「ええっと……」
飛鳥はスマホを取り出しメモを見始める。そしてその時、スマホの電源を切っていた事に気付いた。繋がらなかったのはこういう事だ。
「今からやったら……乗り換えいれて一時間ちょっとくらいかかるやろーか?」
「は? 京都でしょ?」
「京都やで。京都府北丹後雅町」
「……は?」
「舞鶴よりさらに北や。温泉あるけど他はなーんもない、ド田舎の町やでー。ほらほら、先方との約束もあるし、さっさと行くどサクラ! JOLJU!」
そういうと、サクサクと飛鳥は一人進んでいく。その話を聞いて、サクラとJOLJUは顔を見合う。しばし沈黙した。
どうやら行くしかないようだ。
こうして、予想もしえなかった大事件に、三人は参加することになる。
***
京都市から山陽方向の電車に乗る事一時間ほど……雅な古都の風景はどこにもなく、見えるのは山と田んぼと畑、時々人家が見える長閑な日本の田舎の風景が続く……。
そうして、いくつもの山を越え、ようやくたどり着いたのが、北丹後雅町駅であった。
「…………」
「さー着いた着いた。いくでーサクラよ」
「…………」
駅前には小さな商店街があり、駅前に一軒だけコンビニがある。が、基本周囲は山と田んぼに囲まれ、大きな建物といえばはるか遠くにこんな田舎にはちょっと似つかわしい大きな病院のようなものがあるだけ。バスの時間を確認してみたら一路線が30分に一本動いているだけ。『これが日本の田舎の見本』というような大きな町があるようには見えない。
「…………」
夏の蝉が、リンリンと騒がしく鳴き、直射日光は強く降り注ぐ。そして日本独特の纏わり付くような湿気が蒸せ、気温以上に暑苦しい。
「どこが京都じゃーーっ!!」
サクラの怒声が田舎町に響いた。
「何いうてるねん。ちゃんと京都府やで。かなり端っこやけど」
「お前京都って言ってたジャン! どこだここはっ!!」
「だから京都府やって。京都には間違いない」と、飛鳥はスマホの地図アプリを起動させ、現在地を表示させる。京都市からは100キロほど離れた山奥だが、確かに京都府であるようだ。
そう、飛鳥は別に嘘は一言もついていない。ここは京都府だ。飛鳥は京都市だなんて一言も言っていない。
すぐにサクラも自分の誤解に気が付いた。だが基本的には米国人であるサクラにとって、京都といえば京都市の事だ。京都(市)だと思ったから参加する気になったわけで、こんな山奥のド田舎だと聞いていれば来なかった……。しかし逆に考えてみると、飛鳥が活き活きとするのも納得である。100%東京都民の飛鳥にとっては、田舎は好奇心満点の場所だ。
ガクッ……と肩を落とすサクラ。そんなサクラの肩を楽しそうに飛鳥は叩く
「そう落ち込むな! 田舎サイコーやないか! 都内よりは涼しいし、別に騙したワケやないし」
「……今からでも一人で京都に帰るわい!!」
「残念だJO~。お迎えが来たみたいだJO」
サクラは顔を上げる。
そこには、一台の白くて大きなレクサスSUVと、中型バイクに乗っている一人の男の姿があった。
「おお! さすが時間通りやな~。やふ~」と、飛鳥は暢気に手を降る。
「出迎え?」
「ちょっと違うねん。助っ人や。ホラ、いうてたやろー? 音楽の」
「ああ、そんな事言っていたわね。あれが音楽やる人なワケだ」と顔を上げるサクラ。そういえば元々そういう依頼だったのを思い出した。しかし飛鳥の知り合いで最上グレードのSUVのレクサスなんかに乗る金持ちの音楽家なんかいただろうか? とか思っているうちに、車のドアが開き、三人が姿を現す。その姿を見たサクラは、今後こそ本当に仰天した。
「暑いな、本当に」とダークスーツに身を包んだユージが運転席から顔を出した。
「日本の夏だねー♪ ああいい気持ちっ♪」と楽しそうに周りを見渡すエダ。
「たまにはこういう夏もいいですね♪」と眩しそうに空を見上げるセシル。
「な! な! なんでユージたちがここに来てるンだぁぁぁっっ!!」
サクラは普段の冷静さをどこかにすっ飛ばし、ユージたちを指差しながら叫んだ。
どんな事にも動じないサクラが、この時ばかりは目を泳がせ、驚きのあまり腰を抜かしてしまっている。
まさか、ここで家族であるユージたちに出会うとは夢にも思っていなかった。
飛鳥もJOLJUも知っていたことのようで、何の疑問もなく飛鳥はいつも通りユージたちに挨拶しながら大きな荷物を車に運んでいる。
「どういう事じゃ! 飛鳥っ!! なんで皆が来てンだ!?」
「そやから助っ人って言うたやん。ホレ、さっさと車に乗るで」
「いやいや! 説明しろ説明を!!」
「早く乗れサクラ。暑い」とユージはいつも通り無愛想に答え、運転席に戻っていった。エダとセシルはワイワイとはしゃぎながら一旦近くのコンビニに走って行った。何か食べ物や飲み物を買うのだろう。まだ状況が飲み込めず座り込んでいるサクラの横に、バイクに乗った男がバイクを動かし回り込んで来た。
……ということは、このバイク男は……と、そろーっと顔をバイク男に向ける。
予感は当たった。
そこにいたのは拓だった。
「やっぱり拓ちんかっ!!」
「拓ちんとはなんだ拓ちんとは」
拓はフルフェイスのヘルメットを取りながら答えた。
「こっちの後ろに乗せてやってもいいぞ。お前、バイクの後ろ乗るの好きだろ?」
「…………」
「ああ拓さん。そのアホガキに事情説明するから、気ぃつかわんでええで」と飛鳥は言うと、さっさと車に乗りこんだ。拓は何か言おうとしたが言うのをやめ、黙ってヘルメットを被る。
結局、サクラはエダとセシルがコンビニから帰ってきて一緒に乗り込むまで一言も言葉を発するこ
とが出来なかった。
「皆で祭りに参加する」
ということで、いきなりクロベ・ファミリー完全勢ぞろい!
このあたりは後半でフルメンバーになった「死神島」と違う点です。
まぁ……ユージも拓も元日本人ですし。
エダもほぼ日本育ちですし。
ということで彼らにとって日本での夏のバカンスは十分旅行です。
もっともこのまま終わらず事件に巻き込まれるわけですが。
ということでこの事件もこれからです。
これからも「黒天狗村の伝説」をよろしくお願いします。




