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黒い天使長編「黒天狗村の伝説」  作者: JOLちゃん
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「黒天狗村の伝説・序章」

「黒天狗村の伝説・序章」



ある日のこと。

飛鳥に呼ばれたサクラとJOLJUは、突然京都旅行を提案される。

しかし、そこにはちゃーんと理由があった。

相変わらす面倒な事件に首をつっこみたがる明日かに呆れるサクラだが、結局……。

***



序章



 それはまだ7月半ばの頃……東京練馬、真壁飛鳥の家にて。




「おい。来たぞ、飛鳥ぁ~」

「来たJO~」


 サクラとJOLJUが、飛鳥の家を訪れた。サクラとJOLJUは遠慮なく家の中に入り、飛鳥に冷たい麦茶とお菓子を要求すると、さっさと部屋に入りクーラーをいれる。その涼しい風が吹き込むところでサクラは上着を脱いで座った。



「いきなりクーラーの下かい。まだそこまで暑くないやん。少しは節電せんかい」


 冷えた麦茶と煎餅を、珍しく素直に持ってくる飛鳥。そして「いかにも何か隠しています」といわんばかりに笑みを浮かべサクラとJOLJUの前に座った。


 いやな予感しか覚えないが……サクラは警戒しながら、まずズズッとよく冷えた麦茶を啜り、無言で煎餅を一枚食べてみた。いつもの煎餅と違い上品な味で堅さも程よく美味い。



「美味いやろ~? 京都の煎餅や、高いンやでぇ~」

「…………」

「で? オイラたちに用って何だJO」


 味わいながら……という言葉とはまるで無縁、その大きな口でパクパクと煎餅を貪りながらJOLJUは言った。



「お? 興味あるか? ふむふむ」満足そうに頷く飛鳥。

「いや。全然興味はない」と素っ気無く答えるサクラ。だが飛鳥はそんなサクラを無視し、一人「よし、説明しよう♪」と頷くと、自分の部屋……隣の部屋だが……に飛んで帰り、カレンダーを持って帰って来た。


「8月の11日から16日、お前らを旅行に連れてってやるでぇ~」

「旅行? 別にそんなもんお前に頼らんでも自分で行きたい場所に行くワイ」

「そっけない奴やなぁ~。折角の京都旅行やで?」


「京都……なんでまた京都?」


「招待されたんや。依頼主はウチの学校の友達なんやが、その実家に呼ばれているンやけど、お盆にちょっとした祭りがあって、どうやろかーって」


 成程、だからこの煎餅は京都のモノなのか。話は少し繋がった。しかし大筋はまだ分からない。珍しい伝説がある秘境の村に……とかいうのであれば、好奇心旺盛な飛鳥の触手に引っ掛るのは分かる。しかし観光都市京都ならば東京から三時間もあれば行けるし、転送機を使えば大阪まではタダで行ける。つまり行こうと思えばサクラたちも飛鳥も簡単に行ける場所だ。


「何と! お盆の繁忙期に温泉旅館付きやで!」


「いや……別にあたしはそんなに嬉しくはないけど」


「それでもお前は日本人か! 和の心はどうしたっ!」

「あたしは米国人だ、米国人。皆で温泉に入ってマッタリする習慣はなーい」


「そういうな。で、京都旅行の話やけどなー」さり気なくもう旅行確定として話に組み込まれている。「実は……温泉と祭りを満喫する前にちょっとした仕事があるんやけどな」



「ホラ見ろ。それが本題だろ」


「お前ら、テキトーくらいの腕のバンドやってる知り合いとかおらへん?」

「バンド? 音楽の?」

「他に何があるねん。バンド! 軽音!!」


 サクラとJOLJUは顔を見合わせた。色んな事をいつも突然言い出す奴だと思っていたが、まさか軽音楽が出てくるとは思っていなかった。それほど飛鳥と音楽とは無縁……のはずだ。



 話というのは、シンプルといえばシンプルだった。



 その飛鳥の高校の友達は、町で大きな旅館を経営している顔役の一族の一人だという。そして村で行われる今年の祭りは、今年20年に一度の記念祭で特別盛り上がる。そこで、祭りを盛り上げるため、バンド演奏を行いたいという話になった。その話が回りまわって飛鳥が引き受けることになったらしい。飛鳥の好きそうな話ではある。



「そういう知り合いおらへん?」


「アンタのほうがそういう広く浅い交友関係あるじゃん。芸能界だって少しは知り合いいるだろ?」


 飛鳥は『AS探偵団』というネット探偵をやっていて色々な事件に挑んだり普通の探偵のように依頼も受ける。その実績はサクラも協力していて中々のもので、ネットのアングラ世界ではそこそこ有名だ。その関係で警察関係から芸能関係まで幅広く知人はいる。勿論、飛鳥も最初は自分のコネを使う予定だった。だったが、安請け合いした後スケジュールを知って意外にこの案件は難しい事に気付いた。世間でいうお盆直撃ということだ。芸能界はこの時期は特番で忙しく、アマチュアは自分たちの活動で一番忙しい時期だ。


「あー。夏音フェスと、サマコミケか」


 夏音フェスは音楽の祭典、サマーコミックマーケットは年に一度行われる最大規模の同人誌即売会である。どちらもお盆前後に開催されるイベントで、日本中のアマチュアや新人プロたちにとっては直接販売で利益が稼げる重要なイベントだ。


「そうやねん。いやいや、そんなに本職のバンドでなくてええんや。所詮高校生が手配できる程度やし、田舎の町民が楽しめればええんやからカラオケ・バンドで十分やねん。ようはかるーくバンドできる素人でええっちゅー事や」


「そういうの好きそうなアマチュア・バンドに声かけたら? ネットで検索してサァ」

「それやとウチも参加できへんやん」


「は?」


「ウチも参加するんや!」

「アンタは音楽なんか何もできんだろーが」

「フッフッフ♪ ウチは太鼓ならできるんやで! こう見えてもゲーセンの<和太鼓達人>じゃあマスタークラスのレコード・ホルダーや!! ……ま、こういう形でウチも参加しとらへんと、京都旅行に参加できへんからなぁ~」


「ゲーセンのゲームのノリで参加するな。そんな素人入れるなんて、ますます普通のバンドやってる人たちじゃ無理だな」


「断れば?」

「もう手付金貰ってしもうたし、報酬の一部はお前ら、今食ってるやん」




「…………」



 サクラとJOLJUは手に握っている煎餅を見つめ、露骨にいやな顔を浮かべた。つまりこの京都煎餅は依頼の手土産だったようだ。なんだかんだと喋りながらサクラは5枚、JOLJUは16枚食べてしまった後だ。



「詐欺だっ!! 陰謀だ!!」

「詐欺でも陰謀でも卑怯でもいいから、何とかアイデアださんかい!! 京都に行ったらもっといいモン食わせてやる!」と強気に豪語したかと思うと、急に弱腰になり手を擦る飛鳥。「頼む~。新しい動画編集ソフトとデジカメが欲しいんやぁ~。どうせ聞きに来るんはジーさんバーさんばっかやから、ほどほどに演奏会ができたらそれでええねん~。なんとか助けて」


「無茶苦茶いいおって……そんな都合のいい奴いるか」


「ベストは日本の歌のカラオケ・バンドやけど、もうメキシコのギター弾きでも中国の曲芸師でもインドの蛇使いでもええんやけど? ウチ、テキトーにマラカス振るから」


「アホか。そんな知り合いおらんワイ」


 サクラは溜息をつき残った麦茶を飲み干す。サクラの知っている音楽家は大体一流ばかりだし、ほとんどが英語圏の人間だ。日本に来い、と言っても来る筈がないし、第一そこまで仲がいいわけでもない。サクラは飛鳥以上に交友関係は広いが浅い。



「セシル呼べ、セシルを。あいつは本業音楽家じゃん」

「もう断られたワイ。『プロだから高いですよ。飛鳥がローンで払いますか』とか嫌味いいやがった!」


「ま……セシルはプロ中のプロだしな。第一セシルだと軽音じゃなくてクラシックになるし、来日するだけでもニュースになるくらいだから、セシルが来るってなればテレビもやってくるかもねぇ~」

「そこまで大げさなのはせんでええねん。所詮祭りの催し物なんやし」


「オイラ、なんとかなるかもしんないJO」


「まぢでか!? ウーパールーパー犬もどきっ!」


「誰がウーパールーパー犬もどきだJO! ……お盆。京都。間違いないかだJO?」

「間違いない。できれば日本語が喋れるとええんやけど……」

「いるJO。大丈夫かどうかは聞かないとわかんないケド」


 ふむふむ、と頷く飛鳥。JOLJUはカレンダーを見つめながら指折り数えて思案していた。しかしサクラは不審顔でJOLJUを見た。確かにJOLJUの交友関係は、サクラは勿論、飛鳥よりも広く、意外なところに知己がいたりする。しかし日本人で、ということになると話は少し変わる。サクラも知らないという事はないはずだが……?


 その時だった。下の階から「夕食じゃぞー」と誘う声が聞こえた。



「んじゃあ、あたしは関心ないからご飯食べてくる」


 興味のないことには深く関わらない、それがサクラである。さっさと下に向かって歩き出した。飛鳥も気にせず「いけいけ♪ ウチらは打ち合わせしてからや。ジッチャンにヨロシク~」と手を振った。


 サクラは一階に降り、待っていた飛鳥の祖父真壁風禅に「あいつら、今何か悪巧み中だからご飯先食べていっていいってさー」と言い、さっさとリビングの食卓に着いた。夕食はてんぷらと素麺だった。サクラは「伸びると不味くなるから、先食っちゃおう。ジッチャン」と言い、さっさと食べ始める。


 20分後……飛鳥とJOLJUも降りてきたが、その時にはすでに鶏や魚のてんぷら食われ、野菜天ぷらと少し伸びた素麺だけになっていたが、珍しく飛鳥は上機嫌で、夕食のおかずの良い所がもう食われてしまった事に文句を言わなかった。


 食事が終わり、デザートのスイカを食べている時、飛鳥が「お前も特別に招待したる! 8月11日の朝、京都駅集合やでー」と言った。サクラはちょっと気になったが、この時はとりあえず興味なさげに相槌だけを打った。行くかどうかは、また日が近くなれば考えればいいだろう。詳しい話はJOLJUに聞けばいいか……。



 しかしその後、サクラは夏の暑さに辟易したので、急にアラスカにでも行きたくなった。そして、ついついその事を忘れてしまった。



 サクラがその約束を思い出したのは、前日になってからだった……。





 こうして、サクラたちは新しい事件に巻き込まれる事になった。





「黒天狗村の伝説・序章」でした。



ついに始まった新シリーズ!!

ということで始まりはいつものように飛鳥が厄介事を持ち込んだ所から。

短編でもよくある、飛鳥が持って来た探偵仕事。

ここからまさかの大事件に発展していきます。


ということで始まった「黒天狗村の伝説」!!


長いシリーズですが、これからもよろしくお願いします。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 軽妙な掛け合いが素晴らしかったです。 女主人公というのも良い! [気になる点] 会話文は行間を開けていただいた方が読みやすいと思います。 [一言] 何かしら影響を受けた小説はございますか…
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