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黒い天使長編「黒天狗村の伝説」  作者: JOLちゃん
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「FBI動く!」

「FBI動く!」



作戦変更するサクラ。

357マグナムは攻撃ではなく救援信号!

そしてそれはユージたちに届いていた!

ついにユージたちも動き出す!!

***




「こうなったら信じるしかないな」

「何をや!?」


「飛鳥! その箱の中に357マグナムが混じって入ってるから、357マグナムだけ選んでこっちに渡せ!」

「マグナム? あんた、357マグナム――」

「いいから渡せ! 2割くらいは357マグナムがあるはずだから! ちょっとだけでかい弾がマグナム弾!!」

「この暗い中そんなん見極められるかいっ!!」


 そう言いながら、飛鳥はスマホの明かりで「でかい弾」を探し始めた。

 言われなくても38口径と357マグナムの違いは知っている。

 弾の大きさはほんの僅かしか違わないが、威力は1.5倍の差がある。サクラのS&W M13は本来357マグナムが撃てる銃だから撃つ事は出来るが、反動も倍近く強くなるので余計に当たらなくなる。しかしサクラの考えは別にあった。


 連中が2発発砲し、サクラが応戦で一発撃ち終えたとき、なんとか3発だけ見つけることができた。


 飛鳥がそれをサクラに手渡すと、サクラは素早くその場で弾を交換し、シリンダーに357マグナムを詰めると、これまでと違い空に向け一気に3連射した。これまでとは違う、甲高く大きい銃声が山間に木霊する。



「何しとんねん、お前は!」

「いいからもっと357マグナム探せ!」


 そういうとサクラは後ろを一瞥し、次に隠れられそうなポイントを見つけ「行くぞ!」と走り出した。飛鳥も遅れまいと、弾丸箱を睨みながらサクラの後に続き走った。

 その直後、上から数発の銃弾が先程までサクラたちがいた木の表面を削っていった。


 そしてすぐに連中もサクラたちの後を追った。





***






「間違いない。今のは357マグナムだ」



 ユージ、拓、エダの三人はユージたちの部屋<山桜の間>に集まっていた。


 セシルから「銃声を聞きました」と外に呼び出されたユージは、外に出て初めて銃声らしき音がするのを確認した。宴会場は防音で中では聞こえなかったのだ。


 ユージはすぐに38口径と散弾銃の銃声だと分かった。サクラに電話してみたが電話には出ないし、飛鳥は圏外。

 念のため……と自室に戻った時、遠くだがはっきりと357マグナムの音を確認した。他の銃声ならともかく、357マグナムはサクラしかいない。しかも銃声は一発ではなく連続している。



「サクラたちが何か危険な目に遭って、それを報せるために357マグナムを撃っている……って事?」


 エダは不安げに尋ねた。


 ユージと拓は答えず浴衣を脱ぎ、服を着替え、愛用の銃とホルスターを身につけていた。


 沈黙は肯定だ。



「サクラは……357マグナムは苦手だもの。それを連射するなんて」


 エダもすぐにサクラの意図が分かった。

 357マグナムのほうが銃声は大きく、かつサクラにとって愛用していない反動の大きい使い勝手の悪い357マグナムを連射するということは、それだけ危険が迫り非常事態ということだ。


 間違いなく相手も銃を持っていて、今銃撃戦をしている。


 そこにセシルがサクラの携帯電話を持って飛び込んできた。サクラたちの部屋に置き忘れていたものをセシルが発見したのだ。これで電話が通じなかった理由も分かった。



「事件を起こすなとあれほど言ったのに」とボヤくユージ。

「居場所が分からないのにどうやって探す?」


 拓が真顔で尋ねた。いくら耳のいいセシルがいても銃声を辿って向かう事は不可能だ。


 そこはセシルの知識が生きた。音楽家としてではなくCIAとしての専門知識だ。

 セシルは売店で買って来た<北丹後雅町案内>の地図を広げた。



「銃声がしたのは北北東です。きっと山の中にいるでしょう。飛鳥の携帯電話は市販品で圏外……ですから、各社携帯電話のアンテナ受信エリアを調べます。ここは日本です。田舎といっても、携帯受信圏外のエリアはそう多くはないと思います。方向ははっきり分かっていますからそれで大まかなエリアは絞ることが出来ます。幸い私はCIAの装備一式を持って来ていますから、すぐに調べられます。町の衛星地図と照らし合わせればルートもすぐに出せます」


「待っていられん。俺たちはすぐに出る。その調査データーは俺の携帯に送ってくれ」

「分かりました」


「エダ、一応用心だ。俺たちが帰るまでセシルと一緒にいて、飛鳥にコンタクトを取り続けてくれ。セシル、俺たちが帰るまでこの部屋には誰も入れるな!」



 そういうとユージと拓は部屋を出て行った。エダもセシルもユージの命令に従った。



 が……すぐにエダが「あっ! 大変!」と声を上げた。



「どうしたんです!? 何かトラブルですか!?」

「トラブルじゃないけど……問題が……」


 そういいながら、去っていったユージたちの後を目で追うエダ。だが二人はもう飛び出した後だ。



「ユージも拓さんも……飲酒運転……」



 そう、ユージも拓も酔ってはいないが、基準値を遙かに超える酒を飲んでいて、近くに寄ればアルコールの匂いははっきり分かる。ユージが酔いのため何かミスをするということはないと信じているが、警察に見つかれば飲酒運転を問われ、状況はさらにまずくなる。



 セシルは少し黙り考えた。



 エダもセシルも車の運転免許はあるし未成年だから酒は飲んでいない。今駆け出せばユージたちに追いつくだろうが、ユージたちは事件にエダやセシルを巻き込むのを嫌い拒否することは目に見えている。銃撃戦が行われているとすれば尚更だし、エダやセシルが関わると問題はもっと複雑になる。   

 それならばユージたちだけのほうがいい。

 反則的ではあるが一応合法的に銃を所持していても咎められないのはこの二人だけである。万が一容疑者を射殺しても二人は外交特権があって逮捕されない。今回は建前ではあったが出張扱いで来ている。



「ユージさんなら何か対処するでしょう。警察無線の傍受も行い、警察が動き出しているようなら警告するようにします。エダさんは、飛鳥との連絡のほうをお願いします」


 エダは頷いた。それを見てセシルは部屋を出た。自分たちの部屋に戻り、CIAの特別装備を取りに行くためだ。捜査活動はすぐに入れるだろう。



 もっとも、飲酒運転になることはユージも拓も分かっていたが、何の躊躇もない。



「俺が運転する。お前はセシルちゃんとやりとりしてくれ」


 拓はすぐに運転席に飛び乗ったが、ユージは「ちょっとだけ待ってくれ」というと、ダッシュボードを開け、なにやらシートのようなものを取り出すと、素早く前後の車のナンバープレートに貼り付けた。



「これでいいだろう。照会されても数日は誤魔化せる」


 言いながらユージは車に乗る。それを確認し、拓はすぐに車を発進させた。


 移動しながら、ユージは自分の携帯電話と車についているカーナビを同調させていた。位置情報はすぐにセシルがユージの携帯電話経由で情報を送ってくるだろう。ユージの携帯電話もサクラと同じもので、メイド・イン・JOLJU製で特別だ。これ一台で相当専門的な対応をすることが出来る。


「用意があって良かったな」

「バレたら始末書だがな。まさか使うとは思わなかった」


 ユージがナンバープレートに貼ったシートは、米国外交官用の即席ナンバープレートシートで、これを貼るだけで搭乗する車は外交車になり、日本の司法管轄圏外になり日本の警察の検問があっても従わなくていい。事前登録はしているので違法ではないが、米国外務省には報告せず使うのだから、米国政府に知られれば叱責を食らう事は間違いない。ユージ自身がなんらかの事件に巻き込まれたときのためこういう物を用意してきてはいたのだが、本当に使うとは思ってもいなかった。



「車はレンタカーだ。できれば無傷で返さんとそっちはそっちで厄介だ」

「物損なら保険が適用になるだろうけど、弾痕はさすがに適用されないだろうからな」


「しかも借りたのは俺の名義だ。俺は嫌だぞ、修理費出すのは」


 面白くなさそうにぼやくユージ。



 大通りを抜け山道に入ったとき、セシルから連絡が入った。



 現在地から飛鳥がいると思われる場所まで10キロほどということだ。おまけの追加情報があり、今いる大通りを京都方面に向かった15キロほどのところで京都府警が飲酒検問を行っている、ということだ。祭り帰りの酔っ払いを摘発するためだろう。ただ京都府警が銃声に気付いている様子はないようだ。花火も鳴っているし距離もあるから気づいていないのだろう。


 とりあえずいい話としてはサクラたちが撃ち合っているのが警察相手ではないことは分かった。しかし、あまり派手に騒いで京都府警までやってくると事態は複雑の極になるだろう。



「花火の音で気づいていないんだろう。日本の警察は銃声慣れしていないしな」

「サイレンサーも持ってきたら良かったな」


 ユージはつぶやきながら愛用のDE44を抜き、弾を確認し安全装置を外した。超高速44マグナム弾を放つDE用のサイレンサーなど存在はしないが。



「まさか熊が相手……とか言わないよな?」と拓。

「いるのか? 京都に熊が」

「いるよ。ツキノワグマの生息範囲内だ」



 一瞬……その可能性も考えた。

 だが飛鳥はともかくサクラは熊好きだし、接する機会が多いから、こんなに連発するはずがない。ツキノワグマなら357マグナムでも冷静に撃ち込めば倒せるし、サクラは動物にはテレパシーで制することが出来る。すぐにその可能性は捨てた。



 やはり対人で何かしら事件が起きている事は間違いないようだ。



「FBI動く!」でした。


ユージと拓ちん、動く!


飲酒運転ですけどね(笑

とはいえこの二人、お酒に相当強いので酔っぱらってはいません。ユージは長年の付き合いであるエダや拓ですら酔っぱらっている姿を見たことがなく二日酔いもしたことがない化け物です。

それに一応FBIも日本では外交官です。ということで建前として仕事を挟んで日本にきた二人は一応外交官なので日本の警察に逮捕権はありません。もっとも、正規ルートで抗議されると怒られますがその程度です。


しかしまだ肝心のサクラたちの場所は分かりません。

何より、何が起きているかはまだユージたちも知らないですし、知ったとしても日本人住民相手に犯罪者だからといって皆殺しにするわけにもいかないので、どこまでやれるかは分かりません。


何よりこのシリーズは短編ではなく長編!

これで事件が終わるわけではありません!


これからも「黒天狗村」をよろしくお願いします。

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