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黒い天使長編「黒天狗村の伝説」  作者: JOLちゃん
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「思わぬピンチ!?」

「思わぬピンチ!?」



銃声に気づいたセシル。

日本で銃声……?

そんなことをするのはサクラだけ!?


そしてサクラと飛鳥は思わぬ苦戦の真っただ中!

***




 綾宮天狗荘の大宴会場の廊下。


 演奏を終え、旅館の浴衣に着替えたセシルは遙か遠く……北の空のほうを見上げた。



「銃声?」



 近くの白芥川の花火はクライマックスを向かえ、激しく鳴り響いている。気のせいか……と思ったが、花火とは別の音が微かだが確かに北の山のほうから聞こえる。

絶対音感で抜群の耳を持つだけではなく、CIA秘密工作員として活躍するセシルだ。銃声を聞き間違えるはずがない。


 しばらくその場で立ち止まり、じっと耳を澄ませた。

 そして、セシルの中で疑惑は確信に変わった。だが、同時に困惑した。



「ショットガンと……38口径……? 38スペシャル・プラスPかな?」


 こんな夜中に猟をするのだろうか?

 確か今度ジビエ料理を振舞うイベントがあったけどそのためだろうか? いや、狩猟の制限の厳しい日本でそれはない?


 それに38口径というのも気になる。


 38スペシャル・プラスP……38口径リボルバー用の強化弾だ。米国ではごく一般的なリボルバー用だが日本で持っている人間は限られている。日本の制服警官に配備されている38リボルバーにプラスP弾はない。こんな田舎町で持っている人間は知る限り二人しかいない。拓とサクラだ。


 サクラは銃が大好きだ。山で獣に会って慌てて撃ったりするかもしれない。

 が、サクラは玄人ではないが素人でもない。第一サクラとJOLJUは動物と意思疎通ができる。こんなに連発するだろうか?



 セシルは少し迷ったが、意を決し腕に嵌めた<非認識化>のブレスレットの効果を最大にし、宴会場のドアに手をかけた。





***




「くそ……中々散らないな、連中~」


 サクラは苛立ちながら愛用のS&W M13・FBIスペシャルの空薬莢を抜き、弾を新しく詰めなおす。



「おいおい……これってピンチやないんか?」


 サクラの傍で飛鳥が息を殺しながら呟く。飛鳥の横には奪還した子供がいる。


 最初に奪還した場所から銃撃戦を繰り広げながら大体200mは下山した。だが相手も離れず付きまとい逃げる様子も諦める様子もない。連中の銃の数や弾の数はそれほど多いわけではないようで、間断なく猛烈に銃撃してくる事はないが、サクラたちが逃げようとすると一斉に撃ち込んで来るし、気を許せば駆け込んでこようとしている。サクラの激しい銃撃で、なんとか距離を保てているという現状だ。



「弓もてぇー! 弓で射ったれ!!」

 と上から聞こえた。


 弓まであるのか……と声を聞き、ゲンナリとするサクラと飛鳥。



「おい、サクラ! 何発撃ったんや?」

「24発。今30発目までリロード中!」


 サクラのほうは、ほぼ間断なく撃っている。日本の民間人がこんなに潤沢に銃弾を持つはずがないから、複数だと警戒しているのだ。まさか二人の少女が相手をしているとは気付いていまい。



「いい話と悪い話があるんやけど?」と飛鳥。

「んじゃあ、いい話」


「実は今いる道、真っ直ぐ下って、それからぐるぐると二箇所回れば綾宮天狗荘前の大通りにいけることが分かった。ただ、12キロあるんやけど」


 飛鳥はスマホを弄りながら言った。地図アプリでようやく確認できたことだ。


 12キロ……と聞いてサクラは溜息をついた。ということは人家のある里山までざっと半分と考えても6キロはあるではないか。

 何よりこんな状態で6キロも逃げ切れるはずがないし、走るには遠すぎる。これのどこがいい話なんだろーか……これだけ離れていればいくら喧しい銃声も花火に掻き消え一般市民は気付かないだろう。



「んじゃあ悪い話!」


 そう言いながらサクラは1発、牽制で撃つ。



「さすがにコレはユージさんを呼んでいい案件やと思うんやが?」

「珍しく同感よ! ユージでも拓ちんでも呼べ! セシルでもいいわい!」


 さすがにもう発砲がどうとか日本がどうとかいっている次元ではない。幸いユージも拓もこの町にいて、しかも幸か不幸か二人はフル装備を持って来ている。二人ならこんな修羅場はなんでもなく蹴散らしてしまうだろう。


 が、飛鳥にはそれが出来なかった。



「実は悪いことに圏外なんやけど……ここ」

「なんじゃそりゃ!!」


 さらに一発撃ってから喚くと、サクラは自分の携帯電話を取り出そうと四次元ポーチに手を突っ込んだ。

 サクラの携帯電話は見た目はただのスマホだが実は特別な衛星電話で世界中どこでも通話圏内で使用することができる。



 が、サクラはポーチをまさぐるが……。



「……いい話と悪い話があるんだけど……」

「いい話」

「実はサクラちゃん、弾だけはどっさり持ってるンだな、コレが」


 そういうとサクラは四次元ポーチから小さな工具箱のようなものを取り出し飛鳥に渡した。飛鳥がそれを開くと、メーカーはバラバラでリボルバー用の弾が100発以上、雑多に詰め込まれていた。



「普段弾丸箱なんか持ってへんやろ?」


 サクラが銃を持っていることはいつもの事だが、ユージたちのように護身用のためでも仕事用でもない。ただの玩具として持っているので、いつもは20発くらいしか持たない。



「いやー……ホラ、あたしこないだまでアラスカいたでしょ? それで多めに持っていたんだな、コレが」


 アラスカは自然豊かで危険な野生動物も多く、全米で唯一対野生動物の護身用として拳銃所持が奨励されている場所である。町中でもグリズリーや大きなヘラジカが闊歩する地域だ。そして広大な大自然の中で気軽に銃を撃って遊ぶプリンキングするのにもいい場所だ。ということで、サクラも大量に弾を持ち出していた。これはその残りだ。


 しかしそれはどうでもいい。



「悪い話は?」


「携帯電話、忘れてきた」


「はぁ!? お前! 銃は持ってくるのに携帯電話忘れるってネタか!? いつもそのヘンテコ四次元ポーチに入れて持ちあるいとるやんっ! 超貴重品やろっ!」


「浴衣に着替えたとき携帯電話を別に持って……そんで、浴衣を脱いだ時携帯電話はどこかに置いて……それで忘れたっぽいな」

 と頭を掻きながら牽制の一発を放つサクラ。



「アホーっ!! この重大局面でそのボケはいらんわ!」

「煩い! サクラちゃんだってたまにはポカするワイ!!」


「どうするんや! もうアンタがあの連中皆殺しにするしか手がないぞ! 弾はわんさかあるんやったら少しは当てろ!!」


「もう当てる気で撃ってるわいっ!」


 そう言いながら一発撃つ。だが弾丸は外れてどこかに飛んでいった。


 サクラは銃が好きだし射撃も好きだが、プロではない。連中との距離は30mちょっとあり、しかも連中はサクラが銃を持っていることを認識し物陰に隠れている。38口径の有効射程距離は25m、射撃が好きなだけのサクラの腕では、銃撃戦で当てられる距離は10m以内というのが実情だ。それも動き回っていないということが条件で、全速力で走りながらということになると、有効射程距離は6mくらいになってしまう。そもそも拳銃は近接戦闘用武器なのだ。



 <非認識化>を使って近づけば殺せるが、さすがにそれはやりすぎだ。それに近距離で殺せば<非認識化>でも見つかる。


「思わぬピンチ!?」でした。



セシル気づく!

まぁ、プロですしね。

宴会場は防音なので、外に出たセシルが初めて気づきました。

しかしこれでユージたちも知ることになるでしょう。


一方現在交戦中のサクラと飛鳥。

結構山奥な上に人数で負けてて、その上肝心の携帯電話を忘れるという痛恨のミス!

こうして思わぬ苦戦に陥ってしまうサクラたち。そして知ったからには動くであろうユージや拓たちですが、肝心のサクラの場所が携帯電話がないためわからない。


さぁどうなる、サクラたち!

まだ事件は始まったばかりだぞ!


これからも「黒天狗村」をよろしくお願いします。

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