オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
まったり。まったり。
転生物書きたくて見切り発車してます。
ひとまずプロローグ的なものを短編として置いておきます。
確か昨日は台風ですごい風と雨だった。
仕事先に行く為車に乗って、橋を渡った。さすがに川は混濁して水の勢いが激しかった。そんな川を見ながらウィンカーを右に出した。その時目の前にスリップしたらしい車が飛び込んできた。
……ぶつかった……はずだ。
正面衝突のはずだ……。助からない……。
子供が3人。私がいなくて大丈夫だろうか?
1番上は社会人だから何とかやっていくだろう。
真ん中は高2、1番下は中2。まだまだ母親は必要だろう。
去年旦那の父親が脳出血で倒れ、実家が農家の旦那は手伝いと行って毎日会社前に農家の手伝いに行く。土曜日、日曜日さえ実家に入り浸りだ。どんなに私の体調が悪くてもお構い無しだ。台風が来ても我が家の台風対策などしたことはない。実家のビニールハウスが飛ばされないようにと会社を休んでまで実家のお手伝いに行くのだ。私が出かけたいから仕事休んでくれないか?と頼んでも「は?遊びすぎだろ!」と、言われる。いやいや毎日家事、子育てワンオペしてる私に労いの言葉もない。いじめで引きこもりがちな真ん中の娘のことをわかってるのかさえ怪しい。1番下が検査入院してもきっと家にいないことも知らないのだろう。そんな旦那とは下の子が高校卒業したら離婚届を叩きつけるつもりだ。用意はしてある。
そんな家庭で子供を残しては死ねない……ん、でも無理かも。なんだか赤い血が頭から流れて、視界が霞むわ。
まあ、みんな頑張りなさいね。
……目が覚めた。
あら?生きてる!生きてるわよ。
……ん?病院?にしてはきらびやかな部屋だわ。
隣に誰かいるのね?看護婦さんかしら?
目をパチクリさせた。
隣にいた女の人と目が合った。
「奥様!シャーロレット様が!シャーロレッ!!……さ!ま」
バタバタと人が入ってきた。
金色の髪を艶やかに結い上げた貴婦人が、涙を流しながら私を抱きしめた。
「ああ!シャーロ!シャーロ!よかった!」
ん?いやいやもしかして、もしかしてこれはこれは!!
私の楽しみは携帯で異世界転生物を読むことだ。
毎日毎日読み漁っていた。
目の前に広がるこの状況!
もしかしてこれは異世界転生じゃない!
私は転生したの?!
ヒロイン?悪役令嬢?取り巻き?
いやいや魔法なんかカンストしてたりして?
いやだわ高スキルに王太子妃の婚約者とか。
前の知識を活かしてお金儲けとかしちゃう~!
……あれから3年たった。
私は確かに転生した。
シャーロレット=ディ=サー=ヴェクセレーネ
という侯爵令嬢だ。
御歳15歳。
綺麗な金髪……?少しくすんでないか?
大きな瞳……?いやいや普通の大きさだし茶色の瞳。
豊満な胸……?いやいやいやいやペタンコ。
偉大な魔力……?い~や。日常生活に必要最低限な魔力。
癒しの力……。ナッシング。
聖女の……。…………。
??ん…私にはまだ婚約者はいなかった。王太子殿下との婚約はこれから?
転生ってとある恋愛ゲームの登場人物とかがテンプレじゃないの?
私には無いわ。じゃあ何もないの?
ヒロインならバットエンド回避とかしたかったわ。
やはり王太子殿下が一押し。めちゃくちゃテンプレ!
しかし幼なじみの彼と結ばれて……なんてのもいいわね。
王太子妃だといろいろ面倒くさそうだし、
やはり私は幼なじみの攻略対象がいいな。
のんびり過ごすのは良いわね。
…ん……ないない。
幼なじみはいないやん。
侯爵様と言ってもあまり顔が広くないらしい。
落ちぶれてる?
飛ぶ鳥を落とす勢いとか……ない。
嫌だわ。無いわ……。私には何も転生者のラッキーアイテムが無い。
どうして転生したのかしら?
私はどうやって50+14歳の人生を生きていけばいいの?
目標を作らなくては行けない。
前のように家庭に振り回されて疲れ果てた人生は嫌だ。
男の見る目がなかったのよ!
あんなマザコンいらなかった。
…子供たちは大丈夫かしら?泣いてない?
と、言ってもわたしもこっちの世界で生きていかないといけないから忙しい……いやいやまだ何もしてない。
じゃあまず、私は何になりたいか決めなきゃね。
1、自由
2、気の向くまま
!自立!そう!自立よ。侯爵令嬢なんてガラじゃないわ。
家を出て自由になるの。
悪役令嬢になって家から追い出されたらいいんじゃない?
国外追放になって実はひっそり幸せを手にしてました!なんて。
そうねぇ、決まったわ。
悪女令嬢を目指しましょう。そして家を追い出されて悠々自適なスローライフだわ。
ん…白衣を着てポーションとか作っちゃう?
家を出たらポーション屋さんやりたいわね。
目指せ!森の調合師!!
…ってこの時のわたしは悪女令嬢がポーション屋さんってわけのわからない小説を無理やり繋ぎ合わせて、安易な目標をたてた。
実際は悪女令嬢はかなり難しい。見た目が大事よね。前の人生でせめて化粧やヘアーセットくらいしっかりしとけばよかったと後悔した。
それでも読んだ小説を、頭の中でもぐるぐる掻き回して悪女令嬢を演じることに決めた。
今思えば別に目標なんて必要だったのかしら?
まあ、いいか。