王城戦闘
彼等は元々、シュラ付近の高山地帯エルフェスの荒野で独自に戦闘技術を学んだ、異常なメンバーだ。
付近の魔物は、唯一非戦闘のヴェロキによって、接近した途端に察知される。そしてクロノ、シロント、ティタノによって瞬く間に迎撃されるのだ。
その為、エルフェスで彼等が戦闘の怪我を一つも負った事は無い。また、魔物が群れで襲ってきても、結果は変わらない。
端的に、彼等は強すぎる。個人もそうだが、このファントム・ナイトの連携は最早、世界最高峰の実力集団である。
そんな彼等にとって、たった一国の精鋭の軍が一斉に襲い掛かったとしても、大した危機にはならない。
「な、何をしている!相手はたった四人なんだぞ!!何故一人も殺せないのだ!?」
ドロース国王が叫ぶ。その先には、
「うう………。」
「はぁ、はぁ………。」
一撃ですら食らわせられずに無力化された、ドロース王国随一の兵士の山が出来ていた。
「何だこれ、手応え無さすぎだろ………。」
「ホントねぇ~、呆気ないね~。」
シロントとティタノが、実力差に拍子抜けし、
「まぁ、それが俺達の実力だって事だろう?」
「何にせよ、無事なら良かった。」
ヴェロキが二人を宥め、クロノはホッと一息吐いた。
「さて、ドロース国王。これはどう弁明するつもりですか?」
「くっ………。」
ドロース国王がギリギリと歯軋りをする。
「認めぬ………。」
「まだ、そんな事を言うのですか?」
「やれぬと言ったらやれぬわ!それにそこのお前!!」
ドロース国王が指差した人物は、ヴェロキだった。
「お前だけが戦いに参加しておらぬではないか!!そんな奴がいる様な腑抜けの集団に、やれる報酬など無いわ!!」
途端にヴェロキ一人だけを非難した。
その時、スッと前に出てきた影が一つ。
「こちらのヴェロキは、確かに戦闘には向きません。」
クロノだった。
「ならば………!!」
「しかし!彼は我々の参謀です!相手の動きを予知し、最適な行動を指示してくれる、大切なメンバーです!何も知らない貴方が、彼を侮辱しないで頂きたい!!」
「ぐぬぬ………!」
頭に血が上り、怒りで顔が真っ赤になっているドロース国王。
「ならば、その者が戦いに役立つ事を、証明してみせよ!証明出来たのなら、本当に金貨五十枚を払ってやろう!ただし、その者一人だけで証明してみせよ!!」
「「「なっ!?」」」
三人は驚愕した。パーティー唯一非戦闘のヴェロキは、戦闘を経験した事ですら無い。しかし、
「分かりました、証明してみせましょう。」
気丈に、ヴェロキは答えた。