新たな戦争の予感
「おお、ファントム・ナイトの皆様!お帰りなさいませ!!」
門番のミノタウロスとも、すっかり顔馴染みになっていた。
「ただ今戻りました。ミロクは城にいますか?」
「は、ミロクェルーン様は城に戻られております。」
「了解です、ありがとうございます。」
ディプロ城の空気は、以前より重くなっていた。見掛けるメイドや執事達が、挨拶もそこそこに慌ただしく走り回っている。
「何があったんだ?」
「さぁ。取り敢えず先を急ごう。」
執事達の簡単な説明で辿り着いた大広間には、ミロクェルーンをはじめ、様々な竜種がそこにいた。
「おお、戻られま、した、………か?」
アグニムーンの言葉が、何故かたどたどしい。
「どうなさいましたか?」
代わりにミロクェルーンが前に出た。
「………ファントム・ナイトの皆さんですよね?」
「?はい。そうですが?」
「………魔力が桁外れに上昇してますよ。最早、人族の範疇を遥かに上回ってます。」
「「「「………え?」」」」
「成程、時空の試練か。………未だに実在していたのか。」
「父上、時空の試練とは?」
「かつて悪魔族が作り出した、転送系の魔法だ。これを使って、別世界に移動する事が可能になる。五百年程前から聞かなくなった為、淘汰された魔法だと思ったのだが、やはりあったのだな。」
「皆さんは、その別世界でここまで強くなられたのですね。」
「えっと、………そんなに?」
「はい、今までの皆さんとは比べ物にならない程です………。」
そう言いながら、ミロクェルーンはまじまじとファントム・ナイトのメンバーを見た。
「あの、確認したいんですけど。」
「はい、何でしょう?」
「………本当に人族ですか?」
「「「「人族です!!!」」」」
「それで、何があったんですか?城内の空気が殺伐としてますけど。」
「そうじゃな、これを見てくれ。」
ブラフムーンがとある手紙を差し出した。そこには、
「『竜種の日頃の行いには目に余る。人族を保護するなど以ての外故、魔王・アザルシアンの名のもとに、裁きを下す。明朝に進軍をする為、降伏と人族の差し出しの用意をする様に。 代筆 魔王軍第一秘書・トルメキトス』。」
「何だそりゃ、随分勝手だな。」
「竜王様、確かこの国は魔王国の管轄外でした筈。この様に口出しする事があるのですか?」
「いや、今まで一度も無かった。しかしつい先日、魔王国の魔王が代替わりし、新たに魔王となったアザルシアンが進軍を指示したのだ。聞く所、血気盛んな軍隊上がりの王らしく、武力で制圧しようと考えておるのだろうな。」
「そうですか………。」
「仇を打ってくれた恩人を、みすみす引き渡す訳にはいかんが、このままでは全面戦争になりかねん。」
「勝機はありますか?」
「分からん。単体の質ではこちらが勝るが、数は魔王軍が圧倒的に上回る。長期になれば、こちらが不利だ。」
魔王軍は第一陣から第五陣まであり、各千名で構成されている。これに斥候が五百名、魔法軍が五百名と計六千名になる。
しかもこれは前線部隊の人数であり、後方支援部隊を含めれば一万名にもなり得る。
一方竜種軍は、各森と城の守衛を含めてもギリギリ二千名である。
単なる兵力差では火を見るより明らかである。
「皆、ここはやっぱり。」
「ああ、そうだな。」
「異議無し!」
「クロノの言う通りにしよう。」
クロノ達は、アグニムーンに向き直った。そして、
「私達も、参戦します。」
恩人と呼ばれて、見て見ぬふりは出来無かった。




