宝の事情
「へぇ、冒険者なんだ!!」
「どんな所行ったの?」
「化け物倒した?」
カルノが守っている子供達は、年相応に元気だった。そんな子供達にティタノはまるで、実の姉の様に接している。
「そうだよ。シュラって言う小さい村から来たんだ。今までにリヴァイアサンとか、マンティコアとか倒したね。」
「「「すごーーーい!!!」」」
少し離れた所には、意外にもシロントの巨体に子供達がよじ登っていた。
最初こそ怖がられたものの、転びそうな子を咄嗟に助けた事から慣れ始め、今ではシロントに肩車してもらってはしゃいでいた。
「うわー、高ぇ!!」
「落ちるなよー。」
「「「いいなー、代わってよ!!」」」
「すまぬな、子供達の面倒を見てもらって。」
「良いんですよ、本人も楽しんでますし。」
少し離れた所でカルノ達は、子供達を眺めていた。
「あやつらこそ、口減らしでこの森に捨てられた子達よ。」
「………腹が立つ話ですよね。」
「許せる事じゃ無いな………。」
ヴェロキとクロノは、静かに怒りを燃やした。
「良くも悪くも、国は滅んでおる。その事には、礼をせねばな。」
「いや、良いんだ。俺達はあくまで私情で相手をしただけだ。結果的に子供達の仇を打てた。」
「………私情で国を滅ぼすか。」
カルノは改めてファントム・ナイトの恐ろしさ、規格外さを感じていた。
「今後………更なる試練が訪れるかもしれぬ。」
カルノはゆっくりと口を開いた。
「………国をまた相手にするって事か?」
「然り。そなた等の力は最早、世界を滅ぼす可能性を秘めておる。だがまだ可能性の問題だ。その力をより理解し、正しく使わねばなるまい。」
「………秘めたままではいけないのですか?」
「不可能だろう。」
「何故?」
隣のヴェロキに目をやる。
「例えばヴェロキじゃ。万能とも言える力を持ってはおるが、個人の戦闘力でみればどうしても劣ってしまう。」
「な!?そんな事………!!」
「あるんだ。落ち着け、クロノ。」
ヴェロキの一言で、激昂しかけたクロノは渋々座り直した。
「確かにそうだ。俺は武器生成や魔法生成ならば強いが、腕力では敵わない。」
「そうだ。そして参謀でもあるコヤツがもし戦闘不能に、………殺されてしまった際そなた等はどうする?」
「っ………!!」
クロノは目を見開いて黙ってしまった。もしかしたら、怒りのままに敵味方関係無く暴れてしまうかもしれない。そんな惨状を思い浮かべていた。
「だからこそ、そなた等は戦い方を知らねばならぬ。………竜種姉弟以外、全員着いて参れ。」
カルノが洞窟の奥に進む。その先には不自然に陽炎の様に揺らいだ空間があった。
「あ!『時空の試練』するの?」
「『時空の試練』?」
ティタノの疑問に、カルノが振り向いて答えた。
「この先には、そなた等の力に見合った空間と繋がっておる。この先に進み、更なる高みを目指してみよ。」
「これは………転送系の固定空間魔法か。」
「行先は定まって無いの?」
「そうらしい。あくまでこれは空間、いや、別の世界に転送する為のドアだ。」
「「「別世界!?」」」
「………更に突き詰めると、これは別の並列世界に繋がる橋の入口ってところだな。」
「ほう………そう解釈するか。」
「この世界と同じ時間の流れを持つ並列世界のうち、一つと接続される。………異なった世界同士を接続させる、異次元転送の魔法か。」
ヴェロキは立ち上がり、振り向いた。
「この魔法は安全だが、この先が全く想像がつかない。それでも進む価値はあると思う。皆はどうする?」
「勿論、行くよ。」
「当たり前だ!更に強くなるぜ!!」
「頑張ろ〜!!」
軽く笑みを浮かべ、カルノに向き直る。
「ありがとう、カルノ。行ってくる。」
「うむ、気をつけよ。」
………一行の進む先。
「こ、これは………。」
「酷い………。」
「何、ここ………。」
燃える石炭の様な重く、厚い雲。所々ひび割れ、窓は全て壊れている家々。看板らしき物には、やたら角張った見慣れぬ文字が書かれている。不自然に舗装された道は、陥没跡とひびで原型が分からない。
三人はこの見慣れぬ世界に言葉を失った。しかしたった一人、ヴェロキだけが理解した。
「崩壊した………日本だ。」




