フェンリルのカルノ
「………。」
「で、実力の程はどうだ?」
絶句するフェンリルにヴェロキは問うと、細く、小さく溜め息を吐いた。そして、
「………汝と戦う事は、避けた方が良いのかも知れぬ。」
フェンリルはヴェロキに向き直った。
「話を理解してくれて助かる。クロノ、あとは良いか?」
「う、うん!分かった!」
小走りでヴェロキの横に向かうクロノ。それを見届けたヴェロキはゲイ・ボルグに手を伸ばし、一言。
「戻れ。」
その言葉に反応したゲイ・ボルグは、一人でにヴェロキの手に戻って来た。
到底槍とは思えない魔道具の動きに、シロント達は話す事も忘れていた。
「ほう、人族のくせに人族の国と対立か。」
「だから、貴方に対立するつもりはありません。」
クロノの懸命な説明を聞き、フェンリルは何かを考える様に目を閉じた。数秒後、
「ならば、我も真実を話すとしよう。………汝等を敵ではないとして。」
フェンリルは決意を目に表し、ヴェロキ達に話を始めた。
「我が名、『カルノ』と言う。敵意を表した事に、謝罪しよう。」
カルノは頭を下げた事に、ミロク達竜族姉弟が驚いていた。
「嘘だろ!?」
「フェンリルが頭を下げるなんて!?」
ティタノは何故二人が驚いているのか分からず、ファントム・ナイトの知恵者二人に問う。
「なんで、謝罪するだけでこんなに驚いているの?」
「『幻獣』って言う種族はね、魔物が知恵を持った種族なの。つまり、理性が生まれている種族ってこと。それに伴って、プライドも兼ね備えているのよ。」
「特に『フェンリル』は、誇り高い幻獣として知られている。そんな種族が謝罪をするなんて、考えられないことなんだ。」
「成る程………。」
その解説も聞いていたカルノは、頭を上げて話を続けた。
「我が警戒している訳は、守るべきものがあるからだ。その為ならば、頭を垂れる事もいとむまい。秘密にするより、打ち明けた方が良いのだろう。来るがいい。」
カルノは背を向け、茂みの中へ歩いて行った。




