拳銃の初陣
拳骨を落とされて反省させられたミロクェルーンに連れられて、『ファントム・ナイト』は西の森を歩いていた。
「なんと!あの悪名高いドロース王国の崩壊の原因は、貴方達があのリヴァイアサンを討伐した事から始まっていたのですか!」
「はい、そうなんですよ。」
クロノが無難に返事を返すも、
「クロノの愛しきヴェロキが危険な目にあって、クロノは泣いてたものね〜。」
「ちょっと、ティタノ!それ言っちゃダメ!!」
ティタノによって、一気にギャグの空気になってしまう。
顔を真っ赤にさせているクロノとヴェロキ。それをミロクェルーンは、クスクスと笑っていた。
道案内の道中、互いに自分達の身の上話に花を咲かせるうちに、いつの間にか友人関係になっていた。拳骨を落としたシロントとも、今や普通に話が出来ているあたり、二人してコミュニケーション能力が高いのだろう。いつの間にか『シロント』、『ミロク』と呼ぶ仲になっていた。
「シロントの拳骨、父よりも痛かったです………。」
「そりゃ、『怪力』で強化してるからな。むしろたん瘤ですら出来てない点、流石竜族だな。」
「いえいえ、それ程でもありませんよ~。」
………敬語だけは治らない様だ。
「シロント。」
「おっ、来たか?」
「ああ、東北東三十八メートル地点の茂み。『ホーンコヨーテ』が四体だ。」
ホーンコヨーテとは、文字通り角の生えたコヨーテの事。大抵二体〜八体程度の寄せ集めで狩りをする習性を持つ。単体では大した脅威にはならないが、群れると偶に軍隊を翻弄させる事もある、侮り難い魔物だ。
ただの人族で有ればだが………。
「………了解。」
ニヤリと口角を上げ、マントの脇に手をやる。カチリと金属音、覗かせるグリップ、黒光りする巨大な拳銃が現れた。
折角手に入れた武器を使ってみたいと言う希望が、特にシロントが強く主張してきた為、どんな敵でもまず、シロントに相手をさせる様にしていた。新しい玩具を喜ぶ様だが、それが拳銃であれば、素直には微笑ましくはなれなかった………。
因みにPfeifer Zeliska は、その巨大さ・重量のあまり、普通のホルスターには入れる事が出来ない。その為ヴェロキは、シロントに専用のヒップホルスターを渡し、拳銃の存在に気付かれない様に紺色のマントを着せた。拳銃を見せて、無用な騒ぎを防ぐ為だ。マントを羽織った百九十センチ程の巨体は、五十センチ以上あるPfeifer Zeliskaを完全に隠していた。本人は微妙な顔をしていたが………。
「グワアアァッ!」
茂みからホーンコヨーテが躍り出た。それを認識するや否や、
ーーードゴオォォン!!
「うひゃあっ!?」
聞いた事も無い爆音に、ミロクェルーンは悲鳴を上げた。その横には、Pfeifer Zeliska を構えたシロントがいた。
目の前のホーンコヨーテは頭が完全粉砕され、胴体しか残っていなかった。
「な、何………?」
「拳銃。ヴェロキの話によると、Pfeifer Zeliska と言うらしい。」
シロントは淡々と告げ、そのまま三回引き金を引いた。
「うん、前方は問題無いな。」
シロントが一発目を撃つ直前、ヴェロキはクロノとティタノの所まで下がっていた。
「『前方は』って言うと?」
「後方の南南西から二体、西南西から二体、北西から二体来たか。いずれも同じ、ホーンコヨーテだ。北西は俺がやるから、二方向は頼む。」
「「了解。」」
返事をすると同時に、茂みから二体のホーンコヨーテが飛び出して来た。クロノは西南西に、ティタノは南南西に身体を向け、クロノのS&W M500とティタノのニューナンブM60をショルダーホルスターから引き抜いた。そして………。
ーーードオォォン!!
ーーーパァン!!
立て続けに二発の銃声が響いた。直後、眉間に銃弾を撃ち込まれたホーンコヨーテの身体が、力が抜けた様に崩れ落ちた。
(こっちも、問題無しか………。)
そう判断するヴェロキ。そのまま北西に半身を向け、いつの間にか構えていたデザートイーグルの引き金を引いた………。




