竜の一族 2
「ううっ………。」
シロントが腕組みをして仁王立ちをしている前には、正座をしたまま両手で拳骨を落とされた頭を抱えている、人族の女性がいた。ロングの髪を一つに纏めて、ポニーテールにしている。見た目は二十代半ばと言ったところ。清楚な雰囲気を醸し出す彼女は、涙目でシロントを見上げていた。
彼女こそ、先程『ファントム・ナイト』を見下ろして威嚇した竜だった。
反省を示しているのか、人族に変化している。
「それで、アンタの名前は何だ。」
「ヒッ、………ミ、ミロクェルーンです!」
「ミロクェルーンね………。クロノ、こいつどうする?」
どうやら、何かしら謝罪を表明してほしいらしいシロント。しかし、
「ま、まぁ落ち着いて、シロント。実際被害は無かった訳だし、それ位で良しにしない?」
クロノは平和主義者だった。
「ふうん、………ま、別に良いか。」
意外にもあっさり引き下がった。
「貴方はこの森に棲む竜なのですか?」
「い、いえ違います。………本来の居住地は此処から先にある『ディプロ城』です。………と、統治している領地がこの森なのです。」
「成る程、………ティタノ、ヴェロキ。何か聞きたい事はある?」
「ううん、私は無いかな。」
「そう、ヴェロキは?」
「じゃあ、質問させて貰おうかな。」
ヴェロキはミロクェルーンに目を向けた。そして、いきなり核心を突いた。
「貴方以外の竜の親類がいますよね?可能な限り、全て答えて下さい。」
「えっ、………あ、あたし以外いません!」
「いや、いる筈です。一人なら何故、『ディプロ城』を拠点にしないのですか?」
「あ、えっと………。」
「理由は単純。貴方以外の竜が、それも貴方以上の実力者がその城を拠点としているから。しかし、貴方が城に暮らしても、疎まれている事が無いと考えると、その城を拠点にする竜は貴方に近い身内。此処まで考えれば、他にも竜がいると考えて当然なんですよ。」
ヴェロキの推理にどんどん青褪めるミロクェルーン。クロノ達は、ヴェロキの推理に舌を巻いていた。
「………はい、います。」
暫くしてからミロクェルーンは、漸く重い口を開いた。
「『ディプロ城』を拠点にしているのは、実父の『アグニムーン』と実母の『サラスレム』。兄弟は私を含めて四人、城の四方の森を、それぞれ治めています。私は城の西側を任されているのです。………兄弟の名前も、ですか?」
「はい、別に攻め入る訳では無いので、お願いします。」
「そ、そう。………長兄は『アシュラウス』、北の森を治めています。兄弟唯一の既婚者で、妻は『ヤクシュナス』、子供が一人います。男の子で名前は『カルキガル』です。二番目は長女のあたしです。三番目は次女の『ガルダーシュ』、東の森を治めています。そして末っ子の次兄『タイシャクナーク』、南の森を治めています。………親戚はいますが、この近辺に暮らしている親族は、あたし達の家族だけです。」
「成る程ね………。」
顎に手をやるヴェロキ。数秒考えた後、クロノ達に向き直った。
「今後の旅に支障があっちゃ困るし、万一殺してしまうと、後々面倒になる。此処は、ミロクェルーンに全員を紹介して貰った方が良くないか?」
「えっ!?」
驚くミロクェルーン。しかしそれを無視して話を進めた。
「確かに、そんな万一があると困るね。」
「個人的には、竜族の人型が他にも見てみたいな〜。」
「ちょ、ちょっと………。」
「上手くいけば、今回の件で強力な後ろ盾が出来るかもな。ヴェロキ、俺は賛成だぜ。」
「私も賛成ね。」
「私も賛成〜。」
「よし、………って事ですので、俺達の紹介よろしくお願いしますね。」
「えっ、ええええぇぇぇぇっ!?!?!?」
ミロクェルーンの悲痛な叫びが響いた。




