竜の一族 1
「………うん?」
周辺の異常に一早く気づいたのは、やはり参謀のヴェロキだった。
「どうかしたの?」
「………鳥の声がしなくなった。………それに、風も止んでる。………いつの間にか、生物の気配が一切感じられなくなってる。」
「………言われてみれば確かに。」
「何か起こる前兆か?」
「そう考えた方が良さそうだな。」
「具体的には分からないの?」
「すまん、分からない。………ただ、気を抜かない方が良いだろうな。」
ヴェロキの意見に、全員の気が引き締まった。
その異常が実際に起きたのは、それから五分後の事だった。
突然地響きがして、木々が圧し折られる音が森に伝わった。そして、それ以上に轟く声が鳴り響く。
「貴方達、何をしている!此処から先が、あたしの領地と知らないとは言わせないよ!」
女性の声と共に姿を現したのは、巨大な竜だった。
体高およそ十メートルは越えているであろう。竜は上空から、『ファントム・ナイト』を見下ろしていた。
「人族三人揃って、何の用!?あたしは静かに寝たいのよ!」
「えっと、私達は旅をしている冒険者パーティーですが、………あれ?」
「三人?」
竜の言葉に疑問を持つクロノとヴェロキ。後ろには、小柄なティタノと………巨漢がいなかった。
「………シロントは?」
そう呟いたその時………。
「痛っあああぁぁぁっ!!!」
ゴンッと言う鈍い音がした途端、竜の巨体が砂煙を上げて地面に伏した。
上空には、見慣れた巨漢の影が一つ。影が音無く着地して、一言言い放つ。
「手ぇ挙げて無ぇのに、威嚇すんな!」
………シロントが竜の頭に向かって、『怪力』でブーストを掛けた拳骨を落としたのだった。




