コロシアム戦闘のその後
砂煙が上がり湧き上がる歓声の中、ヴェロキは悠然と立っていた。
「…………。」
国王は何も喋らない。否、喋る事を忘れていた。
無理もない。単体であっても脅威であるワイバーンを、非戦闘者と思われていたヴェロキが、たった一人で倒してしまったからだ。
「ドロース国王。私はご覧になりました通り、ワイバーン程度であれば倒す事は可能です。そして我々は、リヴァイアサンも討伐しました。これだけご覧になったとしてもまだ、金貨五十枚支払わないのでしょうか?」
その言葉に彼は、ハッとした。パーティー最弱であろう彼ですら、ワイバーンを怪我無く倒してしまう。このパーティーの強さも個人の強さも、異常だった。このまま何事も無く報酬を支払って貰えれば、事は済んだのだ。しかし、
「………認めん。」
口から溢れた言葉は、またしても否だった。
「何故でしょうか?」
ヴェロキはあくまで、低姿勢で尋ねた。その姿勢ですら侮辱と捉えた国王は、
「貴様等の様な薄汚い下賤な平民風情に、くれてやる報酬など存在せぬわ!」
そう、豪語してしまった。
その後、ドロース国王はヴェロキに向けて放った言葉によって王国内で反乱が起き、密かに結成されていた反乱軍の首脳部に捕らえられた。リヴァイアサン討伐の依頼は常に掲示され、冒険者や兵士でない一般人にも受けさせられる内容だった故、報酬が存在しないと言う告白は、王国民全員を敵に回したのだ。
その後、隣国ギルシャナ王国の支援を受けた反乱軍によって国王の裁判が行われ、ドロース王国の重鎮を含めた全員が有罪判決を出し、極刑となった。どうやらこの国は、国王一人による独裁政治であり、恐怖政治を実施していた様だった。重鎮の身内の約三分の一が拷問や極刑を受けたり、強制的に妾にされていたりしていた。当然敵ばかりを作り、今回の件でそのツケが回ってきたと言う事だ。
極刑の判決を受けたドロース国王は、翌日に刑を執行された。
国王が処刑されたドロース王国は後、世界有数の平和的政治を行うギルシャナ王国と合併し、事実上ドロース王国は消滅した。
「………あのぅ。」
ワイバーンを倒し、重鎮を含めた国民全員の仇を結果的に討ってしまったヴェロキは、情け無い声でシロントとティタノに助けを求めた。
助けを求められた二人は、ニヤニヤしながらヴェロキを見ていた。
ヴェロキは今、動けなかった。ヴェロキに抱き付いて、泣き疲れて寝ているクロノが、彼をかれこれ一時間以上拘束していたのだ。
彼等は、元ドロース王国の宿で休憩していた。部屋に着くなりクロノは、いきなりヴェロキに抱き付いてベッドに押し倒し、号泣した。宿泊客は全員今日の一件を知っている為、クレームこそ無かったものの、生温かい視線には居心地の悪さを感じていた。
「まぁ、無事だった事に安心したって事だろ?」
「そうそう。だからヴェロキも、思いっきり抱き付いても、甘えてもいいんだよ?」
「んな事するかっ。」
クロノが寝ている以上、大きな声は出せない。小さな声で怒鳴ると言う器用な事をしたヴェロキ。
「んっ、………ふぅ。」
軽く身動ぎをしてから穏やかに眠るクロノ。その綺麗な髪をヴェロキは、そっと撫でた。
「………ありがとう、クロノ。」




