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期待ハズレの物語  作者: 梅屋卓美
2/12

~生誕 幼年期part2~

そのよくわからん不思議なオッサンは、かなりの確率でウチに来ていた。


俺も姉ちゃんも随分可愛がってもらった。


若干とゆうか、かなり頭が固かったような・・・・


厳しい所もあるオッサンだ。


子供心に俺は思った。


「何だ?コイツ」


ちょっと俺も酷いが、なんせ生まれついての『反抗期』を背負っているから。

そんな疑問を姉ちゃんにぶつけた記憶があるな。

そしたら


「母上はあの人と結婚するらしいぞ」


との回答が返ってきた。


スゴく微妙だ。


「じゃあ、あのジジイを父さんと呼ぶの?」


「まぁ、そうなんだろな。母上も満更でもないらしい」


ちなみにこの会話は、幼子同士の会話だ。



やがて、トントン拍子に話が進み、母は再婚。


妙なオッサンが父になった。


早速 親父は、会社の4トントラックを持って来て引っ越しの段取りを始め、梅屋家は母の再婚を期に烏山団地を撤退。


土浦市の真鍋2丁目のポンコツ長屋に居を構える事になった。



でも俺は新たな住居も嬉しかったが、それ以上に親父が出来た事も心でひねくれながら嬉しかったんだ。


俺は幼稚園児になっていた。


通っていたのは『土浦いくぶん幼稚園』。

今も、土浦市最古の幼稚園として、名前は変わっているが残っている。


親父はトラックの運転などの仕事をしてた。

仕事人間で、あんま家に居なかったからな。


姉ちゃんは小学2年位か?多分そんくらいだった。


俺の通園は、母のチャリの荷台に乗せられ無遅刻無欠勤を幼稚園児ながらに貫いた。


まだ、女性が運転免許を所持してるのが希な時代だ。


最初、俺はかなり幼稚園を警戒していた。


内向的なんだ。


まずは人間観察。


友達になれそうなヤツかなれなそうなヤツか。


そこは『梅屋的見極め』だ。


そして、輪に加わらないおとなしい俺に、幼稚園の番格のマサルが「俺の子分になれ。弱虫」とヌカしやがった。


俺の中の癇癪玉(かんしゃくだま)が爆発した!


手元にあった木製の椅子をマサルの頭に叩きつけた!


ビュー!


ちょっとだけ潜血が飛び散る。


慌てて飛んで来る先公。


「ちょっと梅屋くん!何してんの!」


と、俺に猛烈ビンタを食らわせた。


こちとら元来の癇癪持ちだ。


すかさず


「ウッセーな、痛てーんだよクソババア」


暴走する暴言が爆発する。


唖然とした先公は、母を呼び出し説教をカマした。


その帰り、母はチャリを転がしながら


「次はせめてカラーバットで殴ってあげなさい」


と、猛説教をされてしまった。



しかし、次の日からは俺に逆らう命知らずは居なくなり、完全に俺の天下となる。


マサルも舎弟にし、悠々自適の幼稚園生活を満喫した。



当時の真鍋の我が家は、長屋が6件並んでるホントに昭和な住宅で、まだまだ近所付き合いも重圧だった。

普通に醤油借りに行ったり来たり。

困っていたら助け合う。そんな今では考えられない近所付き合いがその住宅ではあった。


その住宅のボス的な存在が、松沢のオッサン。

肝っ玉母ちゃんを連れて子供は姉ちゃんと同世代の息子が二人。

よく四人で遊んだな。チャリ乗ったり、大久保商店って駄菓子屋行ったり。松沢のオッサンに水郷公園連れてってもらったりな。松沢のオッサンの職業は・・・・。


謎だった・・・・。


庭に大量の植木を並べ、値札を付けていた。


子供心にこんなモン買うヤツいねーだろと思った。


季節の変わり目には、出張と銘打って何日か出掛ける。


そう。


松沢のオッサンは・・・・



フリーランスのテキヤだった。


しかし優しくて、俺も姉ちゃんも随分可愛がってもらった。


ウチの親父は、中卒のクセに公務員のような堅物で、子供目線でもつまらないヤツだったから余計に松沢のオッサンが楽しかったんだ。


当時、押し売りセールスマンが全盛で、男の留守を狙い、主婦を強引に恫喝し、利益を得る輩が後をたたなかった。

当然ウチにもその手の闇のセールスマンが来た。


気が強いと言っても母も女である。


母が闇のセールスマンの恫喝に困っていたら・・・・



いつもブラブラして暇な松沢のオッサン登場である。


木刀を持って。



闇のセールスマンは頭を叩き割られ、木刀でメッタウチにされ、半殺しにされてしまった。


そして、松沢のオッサンは、愛車の軽トラの荷台に闇のセールスマンを乗せて朝まで帰って来なかった。


次の日の朝、軽トラを洗ってる松沢のオッサンに


「あの押し売りの人どーしたの?」


と、聞いたら


「ん?埋めてきたよ」


だった。


・・・・・・・・。



こんな人殺しの松沢のオッサンだったが、悪く言う人は1人も居なかった。みんなこのオッサンに守られてたから。


俺が武器を使う喧嘩に傾倒したのもこの事件がきっかけだ。


テレビなどの正義の味方は、基本素手で戦い、弱者を守ったが、松沢のオッサンは日本刀や木刀で住民達を守った。


どっちが正しいかは一目瞭然だろ。



そして月日が流れ・・・・・・



その住宅の住民達も、一軒、また一軒と新たな場所にマイホームを購入し出て行った。


勿論 松沢家も・・・・



ウチの親父も焦り始めたんだろう。


姉ちゃんも小学校高学年にさしかかり、俺も小学校入学を控えていた。


いつまでもポンコツ長屋で。


鈍い親父でも気付いたろう。



そして母の実家の近所に新築一軒家をぶったてる。



その場所こそが。



俺の人生を大きく揺るがす・・・・




新治郡(にいはりぐん)




出島村だ!



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