第一の故郷
いよいよ明日、アルカティアに行く。事前に準備は済ませており、あとは明日に備えて寝るだけだった。髪や瞳の色は既に変えてある。アルカティアには黒髪黒目なんて魔獣と人とのハーフでしかありえないからだ。薄茶の髪にエメラルドのような緑の瞳。髪も伸びたこともあって以前の私、アスカと同じくらいの長さになっていた。それも含めるとよりアスカに似ているように感じる。こうしてみると本当にアスカみたいだ。なんだが懐かしく感じて私は思わず少し笑った。
気がつくと時計の針は22時を過ぎていた。明日の朝5時には出発する。私は急いで寝る準備を済ませて眠りに着いた。
◇◇◇◇◇
スマホのアラームがけたましく鳴る。私は急いで起きると、カーテンを勢いよく開けた。軽く伸びをすると、私は顔を洗うため下へ降りた。1階に降りると、リグラーが立っていた。流石私の護衛騎士。既に支度は済ませてあるようだ。私も急いで部屋に戻り、着替えた。
アスカの時の服だ。瞳の色が映えるようにと、白を基調とした服にワンポイントで緑の装飾がされてある服だった。懐かしく感じながら私はリグラーの元へ戻る。いよいよアルカティアに行く。少し不安を抱えながらもドキドキしているのが分かる。
「亜莉亜様……行きましょうか」
「……えぇ」
リグラーが少し微笑んでから私に手のひらを差し出す。私はその手に自らの手をそっと重ねる。リグラーの唇がそっと小さく魔法を紡ぐ。辺りは光で覆われていく──……。
目を開けるとそこには懐かしい景色が広がっていた。アルカティアだ。たくさんの緑と涼しさが広がる噴水。全てが綺麗だった。
「アリア様、行きましょう」
「えぇ」
私達2人は歩く。行くと言ってもどこ日行くのだろうか。私は取り敢えずリグラーについて行く。
「リグラー……様?」
歩いていると後ろから誰かが呼び止める。私とリグラーは同時に振り返る。そこに立っていたのはボブカットくらいの銀色の髪に金色の瞳の女性だった。私と同世代に見える。
「……これはこれはミアルシャ嬢、お久しぶりですね」
「嫌だわ、前みたいにミアでいいのに」
リグラーは無表情のまま、彼女の手の甲にキスを落とす。うっとりする彼女。
「ところで、其方の方はどなた?」
そういう彼女の目は侮蔑の表情が現れていた。
……身分が私より上なのか分からないが、この態度は明らかに失礼じゃないかしら。私は思わずリグラーを見る。リグラーは私の考えていることを察したのか口を開く。
「ご紹介が遅れました。アリア様、彼女はミアルシャ・シノルト子爵令嬢です。25歳なのでアリア様の7歳上ですね」
おぉぅ……全然同世代じゃなかったよ。
「ミアルシャ嬢、彼女はアリア・アスカノーラ・ミアリー様です。イーサイ伯爵令嬢で、後にリトリーチェ侯爵令嬢でになる予定です。現公爵のシュン・アラルド・ハーザンド・リカイル様のフィアンセです」
リグラーがそういうと彼女はわなわなと口を震わせた。
「そう、でしたの。ご挨拶が遅れて申し訳ございません。ミアルシャ・ルシア・シノルトです」
え、私お母様の娘になるの? 聞いていないのだけれど。とにかくまぁ、ミアルシャの反応がよかったので良しとしよう。
「わたくしも挨拶が遅れて申し訳ございません。アリア・アスカノーラ・ミアリー・イーサイです。よろしくお願い致します」
挨拶をした私はゆっくりと腰から丁寧にお辞儀をする。ミアルシャも慌ててお辞儀を返した。
「……挨拶も済ませたことですし、アリア様行きましょうか。ミアルシャ嬢、私たちはこれで失礼しますね」
リグラーが言うと私に手を差し伸べる。私はその手を取る。ゆっくりと歩き出す私たち。顔を真っ赤似させてこちらを見るミアルシャ。少し可哀想だけれど人を小馬鹿にするからだ。私達は目的地に向かって歩き始めた。




