進路の道
遅くなりました。
ずっとずっと夢を見ているかのように、現実は儚く、美しい。この世は思い通りに行かないことも、辛いことも沢山ある。目の前の問題が解決したかと思うと、また新たな問題が目の前に現れる。
もし、目の前に、壁が立ち塞がった時、あなたはどうしますか?
◇◇◇◇◇
今日は部活の大会がある。3年生最後の大会。私は美術部でどうしても賞を取りたかった。そのため私は只管下書きに力を入れた。私の作品の作成期間は1ヶ月半。気がついたら締切ギリギリだった。
顧問であるリグラー……リグラー先生には呆れられるほどだった。
「亜莉亜様、今回はいつもに増して気合いが入ってますね」
「えぇ……3年生最後だもの。それより、敬語はまだしも敬称はダメよ」
「申し訳ございません。昔のくせで」
そういうなりリグラーは静かに微笑む。今更だが、私と阿季くん夕汰は高校でも美術を続けていた。入学当時、美術部に入部したのは私達3人含め、14人だった。
部長は私で、副部長は阿季くんと夕汰だった。これは努力結果だと私は思う。
当たり前だが、私達の進路は違う。阿季くんは美術系の専門学校、夕汰はなんとホテルの従業員の内定が決まった。これは意外だった。私はと言うと、進学も、就職の予定もない。いつか、シュン様が迎えに来るって信じているから。それまではバイトをして、家にお金を入れようと思う。親には申し訳ないと思っている。親不孝なのはわかってる。お兄ちゃんみたいに大学行くなりなんなりした方がいいこともわかっている。それでも私はこの道を選んだ。
後悔はない。因みにバイト先は昼はコンビニ、夜は女の子専用の、お悩み相談の窓口だ。窓口と言っても、直接会うものではなく、電話でも相談受付だ。内容は虐待、性別、友達関係、性についてなど色々とある。基本、コンビニのバイト週4、相談電話の方は週6で入っている。コンビニは朝の6時昼の3時。相談電話は夜6時から夜11時。コンビニが休みの時は夕方5時から夜中の1時までにしている。それをリグラーに伝えた時は今までにないくらいにないくらい泣きそうな顔をしていた。
それにしても、私もリグラーもシュン様に頼りきっていた。今の私は自分で言うのもなんだが、かなりしっかりものだと思う。リグラーは少し気弱だったが、今はそんな素振りすら見せない。多分私……アスカの死がきっかけだろう。
今日阿季くんと夕汰は用事があって一緒に帰れないらしい。一人で帰るか。廊下で上靴から外靴へ履き替えていると、ふと目の前が影になった。見上げるとリグラーが立っていた。
「亜莉亜様、帰りましょう」
「……えぇ」
静かに微笑んで右手を差し出すリグラー私の護衛騎士そのものだった。家を捨ててまで私の傍にいてくれるリグラー。
本当に感謝だ。
『亜莉亜様の見目形が変わろうと私は一生亜莉亜様に使えますから。私は亜莉亜様の護衛騎士です 』
あの時言ってくれた言葉今でも覚えている。




