絶命
二話目、書いて見ました。感想などがあればお願いします。
「大変だぁー!! ロアムが現れたぞー!」
誰かが叫ぶ。一同声のした方を振り向く。そこには、巨大化したロアムがいた。ロアムの魔力がどんどん溢れてくるのを感じて、私は思わず、スカートの裾を握る。
ロアムとは熊に似た魔獣だ。
「何故ここにロアムが!?」
リグラーがロアムを睨みながら言う。そして、剣の柄に手をやる。その対応力は護衛騎士なだけある。
……何故、ここにロアムがいるのだろう?
ロアムを含め、魔獣は基本的に森の奥深い場所に潜んでいる。なので、人は安全な場所に逃げ込んでそのまま住み始めたのだ。
人々は安全なところを探し求め、逃げる。
のそのそと歩くロアムはまるでここが自分の棲んでいる場所だと言っているようだ。何故だか分からないが、王都に出てきてしまったらしい。
「リグラー、アスカを連れて逃げろ!!」
シュン様が真剣な表情でリグラーに向かって言う。その声を聞いたリグラーは無理矢理私を安全な場所に連れていく。
「り、リグラー! 離して! 私も戦うわ!」
「アスカ様、駄目です! 敵はあのロアムですよ!?」
そう言ってリグラーはシュン様のところへ戻る。そして、腰に指している剣を取り出す。
「っ! リグラー、俺のサポートをしてくれ!」
「はいっ!」
私はただ、二人を見ていることしか出来なかった。私にも何か出来ることは無いだろうか。
……魔法だわ! 私には魔法がある!
「私も戦う! この中で一番魔力が強いのは私なのよ!!」
私はそう言って二人のところへ行く。すうっと息を吸う。
ぐわぁぁぁぁあ!!!!
瞬間、ロアムの声が轟く。私は思わず耳をふさいだ。
「アスカ様ー!!!」
リグラーが声を上げながらこちらに向かって走ってくる。何事だと思った直後――――……。
ロアムが目の前に来ていた。
「え?」
気がつくとロアムの爪が私の肩を貫通していた。私の体がゆっくりと倒れていくのが分かる。リグラーが一度、ロアムを追い払うと、私を抱き寄せる。
『ズア・ロウム』
シュン様が魔法の呪文を唱えて、剣を出しているのが微かに見える。こんなときにシュン様が格好いいと思う私は本当に馬鹿なのだろう。私は思わず、掠れた声で笑う。
霞んだ視界の中でシュン様がロアムに斬りかかっているのがわかる。段々と、意識が薄れていく。
……あぁ、私死ぬんだな。
微かに聞こえるリグラーの声。何度も何度も、悲しそうに私の名前を呼んでいる。私は嬉しくて、思わず笑ってしまう。
……そんな顔をしないで。
声に出して言おうとしたが、私の口から出たのは、小さな息だった。もう喋る力も残って無いらしい。
「アスカ様あぁぁぁぁぁ!!!! うわぁぁぁあぁああぁ!!」
リグラーが叫ぶ中、私は絶命した。
次は、日本が舞台です。