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不安しか感じないよ……

 シュン様と離れてから三年の歳月が経った。リグラーはあれから見事に就職し、私は明日から中学生になる。

 といっても私の学校は私立だ。そして、幼稚園から大学までエスカレーター式なので顔触れはあまり変わらない。……え、そんなの聞いていないって? まぁ、確かに言っていないわね。ごめんなさい。

 それは兎も角。明日は入学式。うぅ……緊張しか無いよぉ。


「亜莉亜ちゃん……大丈夫?」


「夕汰……どうしよ……私緊張す……」


 最後まで言葉を紡ごうとした刹那、夕汰に抱き締められた。頭が真っ白になる。


「え、ゆ、う……た……?」


 え、ちょっと待って。どういうこと? 私何で夕汰に抱き締められているの?


「……ら。大丈夫だから」


 大丈夫? 何が? どういうこと?


「大丈夫だよ。僕がいるから」


 ……夕汰。そっか。私を心配してそう言ってくれてるんだ。ありがとね。でもね、夕汰。ここ公園の中。

 え、何で公園にいるかって? 時を(さかのぼ)ること一時間前。




 ◇◇◇◇◇




 夕汰はいつも通り私の家に入り浸っていた。私はそんな夕汰の横でゲームをしている。夕汰はというと、相変わらず私のことを見つめていた。……やりづらいわね。

 だが、最近ゲームばかりだ。なにかやることはないだろうか。一週間前に小学校を卒業して、怠惰な生活ばかりだ。


「そうだ!! ねぇ、夕汰! 卒業記念みたいな感じで何処かへ行かない?」


 私が勢いよく立ちながら言うと、夕汰は驚いたような顔をした。


「……良いけど、急にどうしたの?」


 どうしたの? と、聞かれた私は笑って誤魔化す。大事なのは理由じゃなくてどうするかだ。


「でも行くって何処に?」


 夕汰に聞かれた私は固まった。何処へ行くかなんて全く考えていなかった。小学校を卒業したばかりの私にはお金なんて無い。


「……公園?」


 こうして私達は公園に行くことになったのだ。



 私達は横に並んで歩く。小学生の頃から通って来たこの道。全てが大切な思い出。

 明日からは違う道を通る。私立と言っても幼稚園、小・中・高・大学は同じ敷地には無い。流石に大きすぎるからだ。


 暫く歩くと公園が見えてきた。私達は公園の中へ入る。そして、現状に至るわけだ。


「……夕汰、あの、そろそろ離れてくれないかな?」


「お前ら、何をやってんだ?」


 バッと後ろを振り返ると阿季君が立っていた。私が夕汰に抱き締められているのがバッチリ見られてしまった。

 ……穴があったら入りたい。


「……二人供付き合って……」


「「 違う 」」


 私と夕汰は同時に否定する。すると、阿季君は何故かとても残念そうな顔をした。……なんなのよ。

 取り敢えず私達は草の上に寝転ぶ。空には色々な形の雲が見えている。雲の隙間からチラリと見える青色の空。


 早く、早く大人になりたい。そしたらシュン様とずっと一緒にいられるのに。

 明日は入学式。私は明日、大人の階段を一歩上がる。




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