君は……
大変お待たせ致しました。
優しいそなたは、いつも私のことを助けてくれた。私がそなたに辛く当たっても、いつも困ったように笑ってばかりで。そんなそなたのことが好きだった。いつか、いつかそなたに私の心を打ち明けようと思っていた。
なのに、なのに……そなたが選んだのはシュン様だった。
◇◇◇◇◇
ハァハァ……。
え、待ってくれ。リグラー、走るの速くないか?え、ちょっ本気で待ってくれ。
そう思っているとリグラーがこちらを一瞥した。何だろうと思っていると、小さく何か言った。
『ツァルド』
すると、僕の体は一気に軽くなった。恐らく、リグラーが配慮してくれて、僕の体に魔法を掛けたのだろう。
これで心置きなく走れる。アリアを助けたいのは僕だけじゃない。皆で力を合わせてアリアを助けに行くんだ!
「カズト、大丈夫ですか?」
「はあはあ。はい、大丈夫です。」
僕達は兎に角ひたすら走った。
アリアは大丈夫なのだろうか。ふと心配になる。泣いていないだろうか。
……いや、考え出したらキリがない。何も考えずにただ前を向いて走ろう。
どれぐらい走ったのだろうか。気が付くと、辺り一面真っ暗になっていた。まるで、世界が闇に呑み込まれたように。
リグラーが急に、ピタリと足を止めた。何だろうと思っていると、こちらを振り返って言った。
「多分ここに、アリア様が居ます。」
そこは、貧相な掘っ立て小屋みたいだった。
……ここに、アリアが!?
僕達は顔を見合わせる。そして、頷くと同時にリグラーがドアを蹴り破った。
……おおぅ、すげぇ。流石リグラーだ。
そんなことを頭の隅で考えながら、僕は小屋の中を素早く見渡す。だが、アリアはそこにはいなかった。
「リグラー様、アリアが居ませんが。」
「……追跡魔法に気が付いて逃げたのかも知れませんね。」
……それじゃ、どうすればいいんだ!?
僕が焦りだしたのを感じてか、リグラーは琥珀色の瞳を細めて笑った。
「大丈夫です。アリア様は絶対助かります。」
そう言って僕の頭を撫でるのであった。ふと、涙が零れ落ちそうになる。何故、僕はこんなにも無力なのだろう。
自分が恨めしい。
だが、今はそんなことを考えている暇はない! 僕はただ、前を向いて走るのみ!
「……ト、カズト!」
「は、はい!」
……ヤバい、リグラーに名前を呼ばれていたのに気が付かなかった。
「ここに、シュン様が来ていたようです。シュン様は、私達にヒントを残してくれました。」
「えっほ、本当ですかっ!?」
僕が目を輝かせて聞くと、リグラーはこくりと頷いた。
「えぇ。これを見て下さい。」
そう言ってリグラーが差し出してきたのは紙だった。何やら文字らしきものが書かれているが僕には読めなかった。恐らく、アルカティアの言語なのだろう。
僕が読めないのを悟ってか、リグラーは読んでくれた。
「手紙にはこう書いてあります。『アリアはユーマと一緒。彼はアリアがアスカだと知っている。彼らは呪いの古城にいる。』」
呪いの古城? よく分からないけど物騒な名前だな。
「カズト、呪いの古城に行きましょう。そこにアリア様とシュン様と、ユーマ様がいるはずだ。」
僕は決意した。どんなことがあっても絶対アリアを助ける、と。
本編です。もし誤字等があれば、感想等でご指摘して頂けたら嬉しいです。




