番外編 異世界少女は今日も奮闘する
大変お待たせ致しました。
私の心は浮き浮き気分。何故なら、今日は参観日だからだ。小三になって初めての参観日。今日来てくれるのはシュン様とリグラーだ。
お母さんとお父さんは、用事で来れなくなった。私が残念に思っていると、シュン様が「亜莉亜、そのサンカンビってやつに、俺達が行ってもいいか?」と言ってきた。
私は嬉しくて、思わずシュン様に抱きつきながら「勿論」と答えた。
だが、このとき私はまさかあんなことになるなんて思わなかった。
「皆さん、授業を始めますよ。」
先生がニコニコ笑いながら言う。私も思わず、つられて笑ってしまう。
「今日のテーマは『将来の夢について』です。皆さん、考えましたか?」
先生は生徒を見渡して言う。皆一斉にこくこくと頷く。
「それでは、順番に発表していきましょう。」
私の順番は最後から五番目。私はそれまで、算数の宿題を隠れてすることにした。
……86-14はえっと、72ね。73-21は52。45×50……2250だよね。
気がつくと私の順番まであと少しになっていた。そろそろ宿題を隠さなければバレるわね。発表している子の方を見る。
発表していたのは夕汰だった。
「僕の夢は、歯医者になることです。僕には歯医者の知り合いがいるのですが―――……。」
……歯医者、そうなんだ。
小さい頃からずっと一緒に居たが、初めて知った。夕汰はきっと立派な歯医者になれるよ。
パチパチ
皆に合わせて私も拍手をする。
「はい、次は伊崎亜莉亜さん。」
「はい。」
名前が呼ばれ、私は返事をして立つ。ちらりと後ろを見るとシュン様とリグラーがこちらを見ていた。
「私の将来の夢は、教師です。私は勉強が嫌いではありません。なので―――……。」
こうして、参観日は終わった。ここまでは良かった。問題は、帰る前だった。
「シュン様!」
私は急いでシュン様のところに駆け寄り、抱き付く。
「亜莉亜、お疲れ。良い発表だったよ。」
そう言って、ふわりと笑うシュン様はとてもかっこ良かった。暫く、三人で話していた。そのときだった。
「あのー……。」
後ろを振り向くと、若い女性がいた。多分、誰かのお母さんだろう。
「私、磨里葭の母です。」
「磨里葭のお母様でしたか。私、磨里葭の友人の伊崎亜莉亜です。よろしくお願いします。」
私がにこりと微笑んで言うと、磨里葭のお母さんはこちらを向いた。
「あら、丁寧にありがとう。亜莉亜ちゃん、こちらの方たちはお兄さん?」
磨里葭のお母さんはニコニコと笑いながら言っているが、シュン様を見る目は、まるで獲物を狙っている虎だ。
……確か、磨里葭のお母さんはシングルマザーって言っていたような……。成る程ね。シュン様は渡さないよ?
「いえ、俺達は亜莉亜の兄ではありません。」
シュン様が目を細めて、笑いながら言う。
「そうなんですね。実は、私女手一つで娘を育てているのです。磨里葭の為にもいい人がいればいいのですけど……。」
……おっ! 堂々と言ってきたぞ。
「まぁ、そうなんですね。大変なんですね。」
ニコニコとお嬢様らしい頬笑みを浮かべながら言う私。だが、私の目は笑っていないだろう。
どうやら、磨里葭のお母さんはその事に気付いたようだ。
「えぇ、かなり大変です。」
磨里葭のお母さんもにこやかに言うが、目は笑っていない。
「……亜莉亜、リグラー、そろそろ帰るか。」
私達の険悪な空気を察してシュン様が提案してきた。私は素直に頷く。
私達は自然と手を繋ぐ。
そして、三人で話しながら帰宅したのであった。
番外編ですね。本編は……もう少し待って頂けたら幸いです。
良ければ感想、評価、ブクマよろしくお願いします。




