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3話 魔王城クイズ

 

  「なぁ、ブラッディ」

  「はい?」

  「暇だなぁ」

  「そうですねぇ」

  「平和だなぁ」

  「そうですねぇ」


  平和を乱す張本人、魔王は今日も玉座の間でダラけた顔しながら鎮座していた。ブラッディもつられてなのか、魔王の隣で胡座をかきながら、のほほんとした表情を浮かべていた。

 


  「てかブラッディ、修行は?」

  「はへ?」

  「はへ?じゃねぇよ、修行しろよ。お前の取り柄なんてその戦闘能力だろ」

  「酷い!魔王様酷いよ!私はこう見えて記憶力はある方なんですよ!」

  「自分からこう見えてとか言ってるあたりもうダメな気がする」

  「え、あ!じゃ、じゃあ実は!実は、記憶力あるんですよ!ふっ、これぞ能ある鷹は爪を隠すってことですよ!」

  「もう遅えよ」


  ブラッディはポーズを取りながら威張り散らすが、既にボロが出ていたため説得力の欠片も感じられない。


  「そうだ、お前がそんなに記憶力があるならこの魔王城についてのクイズを出題してやろうではないか!」

  「あ、私修行しないと……」

  「させるとでも?」

  「ですよねぇ」


  逃げ出そうとするブラッディの肩を掴み、魔王は自分の目の前に正座させた。


  「では第1問!この魔王城の周りに張ってある結界は何級結界魔法でしょうか?1.初級2.中級3.上級4.王級5.神級6.オリジナル結界魔法のうちから選べ」

  「5番!」

  「正解!……まじか」

  「オリジナル結界魔法は維持が難しいので戦闘時に使用するってこの前ていうか昨日言ってましたよ?」

  「あれ、そうだっけ?」

  「魔王様の方が記憶力が低い?!」


  この世界では魔法の質を初級、中級、上級、王級、神級の5つのクラスに分ける。

  先代の魔王と戦っていた勇者は神級の魔法を操っていた。

  初級、中級、上級なら普通の冒険者でも習得可能。

  王級となると生まれながらの才能。神級は神に愛された者、または王級の魔法を極限までに質を上げた者にしか習得できない。

  オリジナル魔法は、自ら編み出した魔法のこと。

  その力を知るのは己のみである。未知数なのだ。


  「ごほん、気を取り直して第2問!魔王軍に入る方法とは?」

  「拾ってもらう!」

  「それはお前達幹部3人だけだ!」

  「え?!そうなの?」

  「当たり前だ!僕たち全員拾ってちゃ手間かかるだろ!現在20000の軍勢だぞ?20000の者を拾うなんてできるわけないだろ」

  「じゃあ、答えは?」

  「面接制」

  「そっちの方が手間かかるじゃん!」

  「ちなみに採用率99%だ」

  「あ、この1%は100%だと保証できないからだ。流石に私でも分かる」


  魔王軍に入るには面接を申し込まなければならない。ちなみに申し込む際結界近くにポストがあるのでそこに投函すれば面接が受けられる。

  結界内に入るには魔王により呪印を体のどこかしらに刻まなければならない。だから、面接制なのだ。

  勝手に結界内に侵入した者は焼き焦がされる。そして魔王にいち早く侵入情報が知れ渡る。


  「最終問題!仕事に集中できるため睡眠時間を長めにとっているが、仕事をサボると何が起こる?」


  そう言い魔王は指先にビリビリと電気を流し、不敵な笑みを浮かべた。

 

  「魔王様、女性の部下に手を出すのはセクハラと言うのですよ?」

  「大丈夫だ。お前は僕だからな!」

  「ヒィィ!」

  「あ、こら待て!」


  猛スピードで逃げ出したブラッディの手を掴もうとしたが、空振ってしまった。猛スピードと言っても人間の猛スピードとはわけが違う。まさに音速。だが、


  「光追撃魔法、チェイスレイ」


  魔王が放った魔法はオリジナル魔法。魔法を追撃させるにはその魔法を操らなければならないが、追撃させる魔法を創り出したことにより、魔法を操る際に生じる魔力を無すことができる、効率が良い魔法だ。そして、光魔法。音速であっても光速には敵わない。あっという間にブラッディに追いつき、


  「アバババババッ!……ぐはっ」


  背中にもろに喰らったブラッディは体全体に雷のような感覚が走り、丸焦げになってそのままうつ伏せに倒れてしまった。仕事をサボった者の末路だ。もちろん魔王は手加減をした。


  「これからは昼だろうとしっかり修行しろよ?」

  「は、はいぃ……」


  今日もはちゃめちゃなブラッディだった。

 

  「はぁ、また暇になっちまった。ほんとに勇者来ねぇのな。……風呂入って寝るか」


  魔王はブラッディを部屋に連れて行くため、ブラッディを担ぎその場を後にした。


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