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襲来しました

やって来ました、文化祭!

何とか、ギリギリ間に合いましたよ、私のカバン。


「いやぁ……圧巻って言うんだっけ? こういうの」

「壮観じゃない?」


家庭科室がレース作品で埋もれております。

全て作・木内君ですよ。


「だ、だって飯塚先輩来るって川口さん達が言うから…。とにかく作ったやつは全部持ってこないとって、思って」

「うん、主にしなちゃんのせいか」

「私!? えー、晶子ちゃんだって飯塚先輩来るって言ったのにぃ」


三人できゃいきゃい騒いでいますが、実はもう文化祭始まってるんだよね。

当番が私達三人、初日の最初になったのです。

亮くん? 剣道部の的当て的なゲームの当番に行ってます。三年生の役割が伝統らしいので。

引退してるんだけどね…剣道部三年って言うラストの行事だとかなんだとか…。

男の子の考えがよく解らないわ。


まぁ、そういうわけで、今日は一日フリーダム! ボッチじゃないよ!


「とりあえず座ろう。まだ一人も来てないけど」

「毎年、昼過ぎないと見学者は来ないよねー」

「まぁ何か体験するって訳じゃないしね。仕方ないよ」


飲食物は持ち込めないので、ひたすらお喋りして時間を潰すしかないんです。

縫い物をするわけにもいかないしね。

窓の外や廊下の遠い方から聞こえる音楽や笑い声を聞きながら他愛ないお喋りをする。

三人とも三年生のせいか、話題は受験や高校についてになっていきます。


「木内君は飯塚先輩の高校行くんだよね? っていうか、行かなきゃだよね…」

「……まぁ、合格範囲内だし、通学も、電車使うけどそんなに時間かからないし、公立だから親も反対とかないけど……今日来るなら、借りた本返しちゃ駄目かな?」

「それは…」

「どうだろう……」

「ダメに決まってるよね」

「「「わぁっ!」」」


後ろからいきなりにゅって、ニュッて顔が出てきた!

私としなちゃんは椅子を蹴倒す勢いで立ち上がって移動。木内君は前のめりにこけてしまいました。

バクバクしてる心臓を押さえながら後ろを振り返れば、飯塚先輩がにっこり笑いながら立ってました。


「…い、飯塚先輩……」

「ビックリした~! ビックリした~!」

「…っ、痛い……」

「久しぶり、神代さん、川口さん、木内君」


一体いつ入ってきたのか、私達の反応を全く気にせずにヒラ、と手を上げた飯塚先輩。その後ろに、知らない女の子と男の子が呆れた表情で立っていました。

飯塚先輩、私服だ。当たり前なんだけど、凄い新鮮ですね。


「飯塚、あんまり後輩いじるのやめなよ~」

「そうだぜ。お前が嫌われるだけなら別に良いけど、折角の戦力がうちに来ないってなったらどうしてくれる」

「酷いな二人とも。別にイジッてないし、ちょっとびっくりさせてみただけじゃないか」


呆れた声で話し掛けた二人は、私達の視線に気付くと、ニッコリと笑って一歩前に出てきました。

飯塚先輩を押し退けて。


「いきなりごめんね。私達は飯塚の同級生よ。私は如月佑奈きさらぎゆうなよ」

「俺は桐生万里きりゅうまさとだ。因みに、部活も飯塚と一緒」

「「「初めまして!」」」


促されて私達も自己紹介をしていく。

…ん? 飯塚先輩と一緒の部活? ってことは……。


「いやぁ~、木内君の腕前の確認しに行くって言ったらさ、二人も行くって言い出してさ~」

「わっ! 見てみて桐生! このカフェカーテンの繊細さ!」

「如月、こっちのケープなんか超緻密! おっ、レース手袋まで!」

「…木内君…」

「もう後戻り出来ないよ、これ……」


如月さん? と桐生さん? がいつの間にか教室の奥に行っていました。そして木内君の作品を見ながら興奮してます。

木内君の作品は教室中にあるので、二人は忙しなく動き回って声を上げてます。

とりあえず、木内君の肩をポン、と叩いておきました。しなちゃんと二人で。


飯塚先輩は二人を放置し、木内君の正面に椅子を持ってきて座り、木内君にも座るよう促しました。

手に持ってるのは何だろう? 入試の過去問? あ、入部届けがあるわ。


「……しなちゃん、受付用の机、もうひとつ出そうか」

「そうだね。話長くなりそうだしね」


木内君が助けを求める視線を送ってきてる? ……ごめんね。私達二人じゃ、飯塚先輩一人にさえ勝てないよ。

主に笑顔に気圧され言葉で負けます。


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