何気無い、日常
修学旅行が終わればすぐテスト! そして受験対策の補習があります。
運動部系は引退と引き継ぎが終わって、勉強一本。
私達のような文系の部活は一応文化祭辺りが引退時期ですが、三年生は部活が自由参加となりました。
「うぅ……終わらないよ~」
「晶子ちゃん、頑張れ! あと縫ってアイロンあてて開いて縫って裏返して縫うだけだよ!」
「…それ、だけって言わない……」
しかも、裏布も同じように縫ったりカードいれる場所作ったり小銭入れの部分作ってファスナー付けたりしたりするから……。
あぁ、終わらない。文化祭に間に合うかなぁ?
最後だからって継ぎ接ぎでカラフルなカバン作ろうなんて思うんじゃなかった。
継ぎ接ぎで表地が思ったより大変で、凄く時間がかかってる。
「晶子ちゃん、とりあえずまち針とアイロン両手に持つのは止めようか。色々危険だよ」
「はっ! あ、あれ?」
「疲れてるみたいだね、神代さん…」
しなちゃんに呆れられ、木内君に苦笑されました。
木内君は、やっと終わりが見えてきたらしくて、今は最後の一作品を丁寧に作っています。
本当に渡された本の作品を全部作っちゃったんだもん、凄いよね。
しなちゃんは作り終わっているので、教科書を開いています。
家でやるとテレビ観ちゃうから、学校である程度勉強してから帰るんだって。
「そう言えばさ~、飯塚先輩来るのかなぁ? 文化祭」
「あ~…来るでしょ」
「だよね~」
「…川口さん、楽しそうだね…」
「だって私には関係無いし! 頑張れ木内君!」
「うぅ…心配になってきた」
しなちゃんがニヤニヤしながら木内君を見ている。いじめだ。
飯塚先輩来るんだろうなぁ。木内君を本格的に引き込むために…。
ごめんね木内君。私にはなにもしてあげられないわ。
金曜日。
今日は部活には行かずに帰ろうとしたら、担任に呼ばれました。
ついていけば、進路指導室? 何かあったかなぁ?
「神代は単願希望だったよな」
「あ、はい」
先生と向かい合わせに座ってお話です。
私の希望する高校は、割と近いし偏差値もまぁまぁ低め…中の中だから、受験する子が結構います。
で、推薦の方もちらほらと希望したい子がいるので…
まぁ早い話が、単願推薦は取れませんでした。
「そうですか~。単願取れれば、楽だったんだけどなぁ~」
「まぁ神代の場合は、普通に受験しても合格ラインは越える筈だから大丈夫だろう」
むしろ今からでももう二つくらいレベル高いところに変えないか? と先生に割と真剣に言われましたが、私の行く高校は決まっているので、やんわり否定しておきました。
まー、確かにねぇ。違うところに通って、全く違う人生を生きてみたいと、思うときもありますよ。
でも、私が`私´としてやり直しているのなら、`私の人生´はある意味で一本道しかないわけです。
まぁ、`前´よりも道の周りを観察したり立ち止まったりしているかも知れないけれど、結局、行く道は決まっています。
……あと、約四年。
四年で私は`終わる´。
また死ぬということが、怖くないとは言わない。というか、判っているだけにとても怖い。
大学生になって、バイトを始めて、少しずつお金を貯めて、お母さんと二人で何処かへ旅行に行きたいと思っていた。
二十歳になったら、お母さんとお酒を呑んでみたいねって、夜に狭いアパートで、声を潜めて電話をしながら笑っていた。
`前´のことを思い出してちょっとしんみりしながら教室に戻ったら、亮くんが待っていてくれました。
「晶子、帰るぞ」
「うん」
カバンを持って亮くんと一緒に帰ります。ふと気付いたら、いつの間にか手を繋がれていました。
いつも思うんだけど、亮くんは私がうろちょろと何処かに行くと思ってるのかな?
そんな小さい子じゃないんだけど。
「姉ちゃん、亮太兄」
「光希。あれ、部活もう終わり?」
「今日はミーティングだけだったんだ」
「そうなんだ? 珍しいね~」
「来週末に試合があるんだったか?」
「そう。その説明とかを聞いて、今日は解散だったんだ。俺、他校に行って試合っていうの初めてだから、楽しみなんだ」
おおう…喋りながらも亮くんと光希に挟まれましたよ。
別に一緒に帰るのはいいんだけどね?
二人とも、背が高いから……人の頭の上で会話するの止めてくれないかな?
光希も大分背が伸びて…今二人で出掛けると、姉弟じゃなくて兄妹に間違われるんだよね。
私ちゃんと平均あるはずなんだけどなぁ。
…なんか、悔しい。




