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神代光希

光希視点です。

部活を終えて帰ろうとした時、偶然恵斗兄と会って、今日は皆うちに集まっていると話せば、じゃあ俺も。と一緒に帰ることになった。


恵斗兄は結構露骨だと思う。

中学に入学したら、それが良く判るようになった。

恵斗兄って、由紀乃姉とかな姉以外の女子と話すとき、作った笑顔しか見せていない。

初めて見たときはビビった。

あれ、恵斗兄ってあんな性格だっけ? って首を傾げた。

まぁ、後で亮太兄に聞いたら、小学生の頃からそうらしいけど。


「ただいまー」

「ただいまっ! お邪魔しまっす!」


母さん達はまだ帰ってないみたいで、姉ちゃんが降りてきた。

どうやら、そろそろ皆帰ろうとしていたらしい。

恵斗兄は、じゃあ一緒に帰るか。と由紀乃姉とかな姉と帰っていった。

何しに来たんだって姉ちゃんが首を傾げてるよ。

靴すら脱がなかったからなぁ。


「じゃあ、俺は早苗ちゃんを送るよ」

「えっ? いいよ~、大丈…」

「光希のカバン部屋でいい? あ、洗いもの入ってる?」


遠慮しようとする早苗ちゃんを遮って姉ちゃんがテキパキ俺のカバンを開く。

体操着とタオル、弁当箱をお願いしておく。汗かいたからな。洗濯物はササッと洗っておいてくれ。

早苗ちゃんと連れだって家を出る時にちょうど亮太兄が帰ってきたから、姉ちゃんが一人になることはない。


「光希君、疲れてるでしょ? 私なら大丈夫だよ?」

「俺がやりたいだけだから。それに、早苗ちゃん最近元気無いって、姉ちゃん心配してたよ?」


まぁ、元気無さそうって言ってたのは最近じゃないけど。

姉ちゃんは、暫くしたら元気になったみたいだって笑ってたけど、俺にはまだ元気に見えない。無理してるのが分かるよ?

指摘すれば、早苗ちゃんは黙って俯いてしまった。

やっぱり、何か悩んでるのか?

まぁ、無理に聞き出すのは良くないって亮太兄に言われたことあるし。

早苗ちゃんの肩を撫でて、そのまま手を繋いで歩き出す。


会話のないまま、商店街を通って早苗ちゃんの家に着く。

ちょうど早苗ちゃんのお母さんも帰ってきたらしく、スーパーの袋を持って立っていた。


「お母さん!」

「あら、早苗おかえり。まぁ~、もしかして光希君? 大きくなったわね~」

「こんにちは。お久しぶりです」


俺達を見てにっこり微笑んだおばさん。

顔色が悪いな。それに、こんなに細かったっけ?

早苗ちゃんがスーパーの袋を一つ持って階段を上がる。おばさんも階段を上がろうと足を上げて、グラリとバランスを崩した。


「っ!」

「お母さん!」


咄嗟だったけど何とか間に合った。

おばさんを背中から支える形で受け止め、スーパーの袋もなんとかキャッチ出来た。

やっぱり、おばさん痩せたな。それに、体温が低い気がする?


「おばさん怪我はない? 大丈夫?」

「大丈夫。ちょっとふらついちゃっただけよ」

「お母さん…」

「……早苗ちゃん、こっちの袋も持ってくれる? おばさん、ちょっとごめん」

「えっ、きゃあっ!」


早苗ちゃんにスーパーの袋を渡して、おばさんを横抱きに抱えあげる。

驚いたみたいだけど、ちょっと放っておけないからね。

早苗ちゃんに先に行ってもらい、俺も階段を上がる。

おばさん本当に軽いんだけど…。


おろおろする早苗ちゃんを促して家へ入り、おばさんの部屋へ運ぶ。

やっぱり体調が悪かったみたいで、運んでいる最中はおとなしかった。

ベッドへ寝てもらい、安静にしててもらう。おばさんは、すぐに寝入ってしまった。


「早苗ちゃん」

「あ、光希君、ありがとう。私じゃお母さんを運べなかったから、助かったわ」

「うん。……おばさん、体調悪いの?」

「う~ん…病気って訳じゃないんだけど。仕事、しすぎなんだと思う」


袋の中身を出しながら苦笑した早苗ちゃん。

でも、笑えてないよ。くしゃって、顔が歪んでる。

見たことある。俺がもっと小さかった頃、姉ちゃんがたまにしてた、泣きそうな、痛そうな顔だ。


「早苗ちゃん、おばさんはなんでそんなに無理しないといけないの?」

「………」

「早苗ちゃん…?」

「……っ、ふぅっ…っ、」


下を向いてしまった早苗ちゃんの頭をゆっくり撫でる。髪の毛をすくみたいに、ゆっくり撫でて聞けば、早苗ちゃんが肩を震わせて泣き出した。

どうしよう。無理に聞いちゃうのはダメ。……でも、早苗ちゃん放っておけないし。


掛ける言葉が分からなくって、早苗ちゃんを正面から抱き締めた。

女の子って、泣き顔あんまり見られたくないって、確か前にお母さんが言ってたよね?

抱き締めたまま、背中をトントンと優しく叩いていれば、早苗ちゃんは泣き止んでくれた。


早苗ちゃんをソファに座らせて、俺も隣に座る。

早苗ちゃんちのキッチンは入ったことがないから勝手が分からないから、亮太兄みたいに飲み物を出して一息つく、っていうのが出来ない。

早苗ちゃんの背中を撫でながら、どうしょうか考えていたら、早苗ちゃんが小さな声で話始めた。


早苗ちゃんは時々言葉に詰まりながら、考えながら話をしているらしく、同じことを何度も言ったり、順序がバラバラになったりしていた。

それでも、一所懸命に言葉にしようとしてるから、俺もじっと耳を傾ける。

俺が何か言って良い問題ではないけれど、震える早苗ちゃんの手を、体を抱き締めるくらいは出来ている、と思う。

もやっとしたまま終わります。

もやっとは…暫く心の奥に置いておいて下さい。

忘れた頃に、きっと来る。

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