志望校、勉強、だらけてます
「早苗ちゃ~ん…あ~そ~ぼ~…」
「晶子ちゃん…そんな死んだ魚の目で言われても…」
早苗ちゃん、喩えが的確すぎて泣く。
日曜日。運動部の皆は部活があるので、比較的暇な? 早苗ちゃん家に遊びに来ました。
外階段が出来たため、お店の中に入らなくても早苗ちゃん家の住居部分へ行けます。
早苗ちゃんのお母さんは今日もお仕事です。じゃなきゃ玄関先でこんな言葉掛けないよ。
「……と、言う感じで~、亮くんが私の言うこと聞いてくれません~。でもさ~、亮くんのレベルだったらあと二つくらいは上の学校でもいーじゃない~」
「晶子ちゃーん、愚痴るかだらけるかお菓子食べるか、どれか一つにしようよ~」
何か二人ともだらだらしたしゃべり方になっちゃってるわ。
「晶子ちゃんは、どうしてもそこに行きたいの?」
「どーしても行きたい…うん、多分。近いし、偏差値ちょうどいいし、制服可愛いしっ!」
「あー、確かに。私もほぼ一緒の理由だわ」
早苗ちゃんも同じ志望だしね。
元から知ってたし、確認したし。
なので、テーブルには高校のパンフレットがあったりするのよね。
パラパラとページを捲ったり閉じたり。薄いから全部読んじゃったんだよね~。
「別にね、亮くんと一緒が嫌だとかそういうのじゃないのよ? ただ、行けるなら上の学校のが、色々、後々、いいんじゃないかなぁ~、って、思うんだよねー」
言い方変かもだけど、もったいないじゃない?
早苗ちゃんに言えば、何となくわかる。と頷かれました。
解ってくれて嬉しいです。
「う~ん…そうだなぁ………。あ! ねぇ晶子ちゃん、桑崎君に、こう言ってみたら?」
「ん?」
……亮くんの志望校が、私の志望校より三つ上のランクに変わりました。
早苗ちゃんスゲー。
亮くんの担任の先生にも感謝されました。
早苗ちゃんスゲー。
大事なことだから何回も言うよ、早苗ちゃんスゲー。
何て言ったか? 知りたいですか?
……学校帰りに待ち合わせして制服デートとか素敵だよね~。とか、あそこの男子の制服格好いいよね~。とか、私の志望校の制服はセーラーと学ランだし、亮くんのブレザー見たいな~。とか、亮くんに限って浮気はしないよね~。
とか…とか……
色々言いました。浮気云々は良く分からなかったけど、早苗ちゃんに言われたように色々、それはもう色々言いました。
亮くんの中でどんな化学反応があったのかは不明ですが、とりあえず上手くいったので、良しとしましょう。
「高柳と川口も一緒なら、まぁ、大丈夫か」
「まかせて~、ちゃんとリスト作るから」
亮くん、私を信用していないのが良くわかるよ。
早苗ちゃん、リストって何の? しなちゃんも頷いてるけど、排除ってなにするのさ?
亮くんの志望は、市内でも有数の高偏差値で、制服がブレザー、私の志望校に程近いところにある高校になりました。
推薦枠を取るそうです。推薦って取ろうとして取れるものだっけ? まぁ、亮くんなら取れるよね。
ちなみに、私と早苗ちゃんも推薦狙いです。
どうせならね、少しでもお金かからない方がいいしね。
「えーっと、私と早苗ちゃんが一緒、かなちゃんは××高校、由紀乃ちゃんが〇〇高校? 亮くんが〇×高校かぁ」
「長谷部君はまだ迷ってるんだよね?」
「長谷部、スポーツ推薦も狙えそうらしいから」
早苗ちゃん、由紀乃ちゃん、かなちゃんと、久々に四人でお喋りです。
一応、勉強をしようって名目で集まったんだけどね。話が盛り上がっちゃうよね。仕方ないよね。
「しっかし、忙しすぎない? テストがあって体育大会あって、テストして修学旅行行って、テストして文化祭あって…」
「ね~。せめて修学旅行を二年生にしておいてくれればいいのに…」
「英検や学力模試もあるわね」
「脳ミソ沸騰する…」
どんどん愚痴になってきたよ。
中学三年生って、怒濤の行事攻めだよね~。
皆完全にシャーペンを持った手が動かなくなりました。
お茶のおかわりとお菓子の追加を持ってきましょう。集中切れてしまいましたね、休憩しましょう。
集まったのは私の家です。今更な説明ですが。
お母さんは亮くんのお母さんとお買い物。お父さんは休日出勤。
光希は部活。亮くんは道場。ついでに長谷部君は部活。
今日は女子会です。
「かなちゃんと由紀乃ちゃんは、部活の大会もあるよね~」
「大変だねぇ」
「他人事!」
「当たり前でしょう。でも早苗は、作品展とかあったでしょう?」
「ちまちま描いたやつがたまってるし、大丈夫なんだ~」
うん、部活関係で何もないのは私だけらしい。
皆頑張って~。
夕方ごろまで頑張って勉強をしてそろそろ帰ろうか、という時間に、何故か長谷部君が光希と一緒に帰って来ました。
そしてかなちゃんと由紀乃ちゃんと一緒に帰っていきました。あれ、迎えに来たの?
それなら、と早苗ちゃんは光希が送っていきました。
そして、亮くんは当然のようにうちに帰って? 来ました。




