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演奏会です

文化祭が終わった次の週の土曜日。

演奏会当日です。


「…ちょっと大人っぽ過ぎない?」

「あら~、そんなことないわよ。ちゃんと亮太君が選んでくれたのよ~?」

「なら、大丈夫…なのかな?」


亮くんなら、そんな似合わないものは選ばないよね。

とは、思うけど、鏡に映る自分を眺めると、やっぱり服に負けている気がします。

Aラインのサテン生地のワンピースドレス。膝がチラチラ見え隠れするくらいの丁度良い長さで、子供っぽくないし、イヤらしくないです。

肩紐から胸元にかけて同じ生地でフリルがあって、ボリュームが出来てます。

…胸は成長した、よ? 誤魔化すためとかのボリュームじゃないよね?

クルリと鏡の前で回って、変なところがないか最終確認して、髪の毛をお母さんにセットしてもらいました。


「晶子ちゃん!」

「かなちゃん、来てくれたんだ!」

「勿論! 皆誘ったんだけど、秋季大会も大詰めだしね~」


会場へ行けば、控え室の前にかなちゃんがいました。ちょっとお洒落してますね。

由紀乃ちゃんと長谷部君は部活、早苗ちゃんは、貸し店舗のお店が今日開店するから、様子を見つつお手伝いをするそうです。

早苗ちゃん、大分店主の女の人と仲良くなったみたいです。

頑張って、と励ましを貰い、かなちゃんと亮くんと別れて控え室に入って、順番を待ちます。


『……でした。次の演奏は、』

「神代晶子さん。そろそろ準備お願いします」

「はい」


控え室で演奏を聞きながら自分の譜面を見ながら待っていたら、案外すぐに呼ばれました。

舞台の袖まで移動すると、ピアノ教室の先生がいました。

しっかりね。と微笑まれて、舞台に送り出されます。

譜面は控え室に置いてきました。ゆっくり深呼吸して、いざ!

…戦場ではないけれど、ね。




最後の一音の指を離すと、拍手が聞こえてきました。

……集中しすぎて何も覚えてません。

えっと、拍手されてるってことは、間違えずに弾き終えられた、ってことですよね?

内心あわあわしつつ、椅子から立ち上がって前へ行き、お辞儀をします。

顔を上げたら、亮くん達が花束持って近づいてきました。


「お疲れ、晶子」

「お疲れ様、姉ちゃん」

「晶子ちゃん、完璧だったよ~! 凄く素敵だった!」


亮くん、光希、かなちゃんがそれぞれ花束をくれました。


「ありがとう」


色とりどりの花束を両手に抱えて、もう一度お辞儀をしてから袖に引っ込みます。

花束三つなのに、結構なボリュームです。特にかなちゃん、何故にこんなに張り切った花束にしたのさ?

袖に入れば、先生が笑顔で迎えてくれて、先生からも小さなブーケをいただきました。

控え室に戻って後の人達の演奏も聞き、無事に演奏会が終了しました。

最後には皆で、舞台で記念撮影をしました。


「今日はお父さんが料理を作ってくれるらしいわよ」

「お父さんの料理かぁ。久しぶりだね~」


帰りはお母さんと二人です。

お父さんが先に帰ったのは解りましたが、亮くんと光希もいないよ。お父さんの買い物に付き合ってるのかな?


多分時間がかかるだろうから、と真っ直ぐには帰らず、少しだけウィンドウショッピングをしてから帰ります。

自分の、ドレスアップした姿のまま。っていうのが、ちょっと恥ずかしいんだけどね。


「そろそろ帰ろうか?」

「あら~、もうちょっと大丈夫じゃないかしら?」

「お母さん、また来ればいいじゃない。あんまり遅くなると、お父さん拗ねちゃうよ~?」

「そうね~」


きょろきょろと周りのお店を見てるお母さんを引っ張るようにして、やっと帰路につきました。

お母さん、放っておいたらそのまま買い物しそうな勢いなんだもん。


家に帰ると、お父さんだけじゃなく、光希と、更には亮くんまで、エプロン着用でした。


「…どうしたの、その格好」

「今日は三人で料理を作ったんだ。亮太君も光希も手先が器用だからな~、手際よく完成したぞ」


お父さんがにっこにこですよ。

亮くんは何時も通りな表情。光希はやり遂げた感があるね。

亮くんが当然のようにうちでご飯を食べるのも、最早疑問すらありませんよ、えぇもちろん。

お父さんの料理が純和風で、お母さんよりもめちゃくちゃ美味しかったことにも、疑問はありませんよ。

……やっぱりお父さんに料理習った方が良いのかしら?

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