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佐川先輩曰く、私が亮くんと一緒に来るのは、予想していた。が、見知らぬ美少年‐光希のこと?‐まで従えてくるとは思わなかった、らしいです。
そして、私が調子に乗って亮くんだけじゃなく、光希とも手を繋いでいたから、予想外すぎて崩れ落ちた、らしいです。
「光希って美少年なの…?」
「普通じゃないの? 俺、姉ちゃんと似てるって良く言われるよ?」
「じゃあ美はつかないよね?」
「…無自覚姉弟…」
光希と二人で首を傾げる。
ぼそりと亮くんが何か呟いたけど、聞き返しても教えてくれませんでした。
「ていうか、さ。何か凄い事になってる一角があるんだけど…これも、手作り?」
光希が家庭科室の一部を見つめて驚いています。まぁ、無理もないです。
総レース作品がこれでもかっ! って飾られてますからね。
勿論、全て木内君の手作りですよ。一針一針手で編んだんです。
いやぁ、あの集中力と手の動は、ちょっとした機械のようでした。
飯塚先輩のせい…ゴホン、お蔭ですね。
「木内君が、段々ほんとにプロになっていくよ…」
「仕方ないよ。飯塚先輩に目ぇ付けられちゃったから。終わりだから、ある意味」
佐川先輩ひどいっす。でも否定は出来ない。
頑張れ、木内君。
一通り作品を見て、早苗ちゃん達のクラスへ向かいます。
勿論、光希とは手を離したよ。亮くん? 離せるはずがないよね。
「早苗ちゃんとかなちゃん、居るかなぁ?」
「あ! 晶子ちゃん! いらっしゃ~い」
二人のクラスへ入れば、かなちゃんがすぐに気付いてくれました。
ていうか、かなちゃん……何故にねじり鉢巻?
素直に聞けば、そのほうが縁日っぽいから。と単純明快な答えが返ってきました。
いやいや、かなちゃん、それあなたしかやってないよ?
「光希君、また背ぇのびた~?」
「一月も経ってないのにそんなに伸びないよ」
「そう? 私も背ぇ抜かされちゃったからな~。あ、早苗ちゃんはね、ついさっき当番終わっちゃったんだけど…」
「そっかぁ~。早苗ちゃん、誰かと回るのかな? 一人なら一緒に回りたいけど」
光希と話して、私と話して。かなちゃんはころころと表情も話すことも変わって忙しないね。
楽しいからこっちはいいけど、良く舌噛まないよね。
かなちゃんに促されて、射的をやることになりました。
射的といっても、輪ゴムを飛ばす割り箸銃です。
「的に両面テープが付いてて、そこに当たれば輪ゴムがくっつくの。そしたら景品が貰えるよ~」
「へぇ~、的の点数で景品も変わるんだね」
「はい、晶子」
「え!?」
「頑張れ姉ちゃん」
「は!?」
「晶子ちゃんファイト!」
「ちょっ!」
亮くんに割り箸銃を手渡され、光希に肩をそっと叩かれ、かなちゃんにサムズアップされました。
…やればいいんでしょ、やれば! どうなっても知らないからねっ!
「……」
「…姉ちゃん」
「えっと…」
「ほらぁ! こういう空気になるじゃない!」
何とも言い難い表情の三人に、私は自棄気味に叫ぶ。
えぇ、えぇ。予想通り、輪ゴムが四方八方飛び散りましたとも。
的? とってもまっさら、綺麗なものですよ。
亮くん、無言で頭を撫でて微笑むの止めよう? すっごい心に刺さるの、その気遣い。
光希、肩竦めて輪ゴムを拾いに行くの止して。お姉ちゃん立つ瀬がないわ。
かなちゃん、我慢してるんだろうけど、肩震えてるし、口の端引きつってるよ。我慢しないで笑ったらいいよ。
結果。
私は参加賞という、折り紙の鶴を貰いました。
「かなちゃ~ん、て、あれ? 晶子ちゃん達、来てくれたんだ」
「早苗ちゃん」
他のものを光希にやらせようと考えていたら、早苗ちゃんがクラスに戻ってきた。
かなちゃんの分の飲み物を買ってきたみたいです。かなちゃんの休憩はまだ先だから、水分だけでもってことらしいです。
早苗ちゃんは誰かと回る約束はしていないらしいので、一緒に回ることにしました。
その前に、光希にヨーヨー釣りをさせました。
三つも取りました。……解せぬ。




