やることが、いっぱいです
夏休みは楽しくてあっという間に終わってしまいました。
二学期です。
「う~ん、うぅ~…」
「…どうしたの、晶子?」
テストが近付いてきました。
勉強は、まぁ良いとして、文化祭の作品がまだ途中だし。ピアノの練習が思うようにいきません。
「譜面はちゃんと追えるの。頭ではちゃんと理解してるんだけど、指が思うように動いてくれないのよ。うぁあ~っ! って感じになる…」
「今回が最後だっけ? ピアノ。私は詳しくないから何とも言えないけど、練習あるのみ、じゃないかしら?」
由紀乃ちゃんも、水泳で思うようにいかないことがあるそうで、そういう時は何も考えずに泳ぎまくるそうです。
頭空っぽにして泳ぐのを楽しむんだって。
私も、楽しくピアノを弾きましょう! …家に帰ってから、ね。
文化祭の作品は、手芸店で色々見て回って、カバンにしました。
ちょっと厚めの生地で、可愛い柄を見つけたのです。
ショルダーは既製品だし、蓋を留める磁石は百円ショップに売っていました。
割りと簡単に作れたので、亮くんと光希の分はちゃんと形とか柄とか聞いたよ。ついでにお母さんとお父さんのも作ります。
流石に五つは…疲れますね。無理です、終わりません。
お母さんとお父さんの分は、文化祭が終わってから取りかかります。
文化祭用はとりあえず私の分一つあれば良いので、亮くんと光希の分は飾らない予定。
調子に乗るものじゃないね。
テスト期間は部活がないので、さくっと帰って、まずはピアノの練習。
夕飯を食べたらまた少し弾いて、お風呂に入ったら部屋でテスト勉強。
たま~に、練習じゃない、簡単な曲を弾いたりもします。小さな音で、ですけど。
夜はピアノ弾けませんからね。……夜中にピアノ弾くと蛇が出るって本当かなぁ?
「晶子」
「あれ、亮くん。どうしたの~?」
「それは俺の台詞だ。もう最終下校時間だぞ」
亮くんの言葉に窓を見れば、真っ赤な夕焼けが空一面に広がってました。
結構集中していたみたいです。
「先生が使って良いって言ってくれたから~、つい」
テスト週間が終わって、部活が始まったのですが、今日は合唱部と吹奏楽部がないらしいので、音楽の先生にダメ元でピアノを弾かせて欲しいと頼んだのです。
鍵をちゃんと返すことを約束して、オッケーを貰いました。
「時間忘れて熱中してたのか」
「うん。…ん? 何で亮くんここに?」
「先生から、晶子に音楽室の鍵を貸したから、帰りに迎えにいってあげて、と言われてな」
どうやら音楽の先生が、わざわざ剣道部まで行ったらしい。
…え、て言うか、先生にまで私と亮くん付き合ってる説が浸透している?
何てこったい。
「うわぁ、ごめんね亮くん。鍵返して帰ろう」
「あぁ。晶子の荷物はこれで全部か? 教室に忘れ物ないか?」
「うん。元々ちょっと弾いてすぐ帰る予定だったんだ~」
音楽室の鍵をしっかり施錠して、亮くんから私の荷物を強奪 (笑)して、並んで帰ります。
職員室に鍵を返しに行ったら、音楽の先生と、剣道部の顧問の先生ににこやかに見送られました。
何だろう、物凄く、解せぬ! って言いたい感じ。
「演奏会は何時なんだ?」
「んーっと、文化祭終わった次の日曜日、だったかな? 去年は文化祭と日にち被っちゃったからね~」
「そうだったな。今年が最後だろう? 服は決めたのか?」
帰りながら他愛ない話を亮くんとする。
亮くんと居るときは、喋ってても喋らなくても居心地が良いというか、リラックス出来るというか、自然体でいられるっていうか? 楽なんだよね~。
「服かぁ…流石に、小学校の卒業式に着たやつは、」
「入らないだろ。晶子も結構身長伸びたしな」
「だよね~。制服じゃちょっとアレだしねぇ」
ピアノを人前で弾くのは、緊張はするけど、楽しいからいいんだけど、それに伴うものが面倒だよう。
服とか、髪型とか、プログラムだとか全員で写真とか評価とか。
楽しく弾ければ良いじゃない。と思うのは、私だけかしら?




