光希のもて具合がちょっと気になる
野球って、攻守がハッキリしてるから初心者でも分りやすいですね。
光希のチームの、攻撃のターンです。
「打順が、あの掲示板に書かれてる順番になる」
「じゃあ、光希は五番目ね」
「一番から三番の子達は打率が良いのよ~」
亮くんの説明にふむふむ、と頷いていたら、お母さん逹が話に入ってきました。
お母さんとママ友さんの話によると、三番までの子達にベースに出てもらって、四番と五番でクリンナップ? するらしいです。
四番の、羽山君? と光希は力が強いから球が良く飛び、センター越え? ホームランもあるそうです。
……ん? ホームランって、あのフェンスを越えてくるってことだよね? 危なくないの?
「あ、ほら晶子ちゃん! 光希君が出てきたよ!」
「がんばれー! 光希君!」
グラウンドを見たら、光希がバッターボックスに立っていました。
早苗ちゃんとかなちゃんが声を上げて声援を飛ばす。
私も一緒に声を出す。
二人、一塁と三塁に光希と一緒のチームの子がいる。
つまり、光希が打てば点が入るのね?
「光希く~ん! 頑張れ~!」
「打てー!」
周囲にいた、光希の同級生らしき子達も、声を出して応援してる。
女の子が多いのは、気のせい…では、無さそうですね。
光希…本当に、段々と亮くんみたいになっていってる気がするよ?
モテ期? 亮くん並みに女の子のキャアキャア言う声があるよ? 私なんて一回もモテたことないのに……
光希って本当は、亮くんの弟なのかな?
ー キ―――ッン
「ぁっ!」
「打っ…」
「「「キャーッ!!」」」
「ひゃっ!?」
光希が打った、と思ったら、女の子達の大きな声が響いた。
ビックリして早苗ちゃん達と三人揃って肩がはねました。
振り向けば、女の子達が跳びはねながら喜んでます。
「びっくりした~」
「光希君、凄いね…二つの意味で」
グラウンドを見れば、光希が二塁にいて、一塁、三塁にいた子達がホームに戻って二点入ってます。
その後、三塁へ盗塁したけれど、次のバッターが内野ゴロで一回は終了。
二回表で相手チームが一点入れ、裏では光希達は塁に出るも得点なし。
三回は光希達が一点、五回は相手チームが三点入れました。
「うーん、逆転されちゃったねぇ」
「大丈夫かなぁ」
「あ! 由紀乃ちゃ~ん!」
五回が終わってグラウンド整備中、かなちゃんが由紀乃ちゃんを見つけて大声で呼びます。
ちょっと恥ずかしいよ。
「何とか、間に合ったわね」
「あれ、長谷部君は一緒じゃないんだ?」
「長谷部なら…」
「おーい!」
走ってきたらしく肩で息をする由紀乃ちゃん。
長谷部君が居ないのを聞けば、タイミング良く走ってきました。
どうやらコンビニに寄ってきたみたいですね。ビニール袋を持っています。
長谷部君はビニール袋から私達に飲み物をくれました。
わざわざ買ってきてくれたようです。
お母さん達にも渡していました。
気を使わせちゃったみたいだなぁ。
ありがたく頂きますけどね。遠慮はしないよ。
「今は…一点差かぁ」
「相手チームって強いの?」
「ん~、多分、同じくらいの強さなんじゃないかなぁ?」
レジャーシートの端に座った由紀乃ちゃんの隣に長谷部君が座ったので、長谷部君はかなちゃんと由紀乃ちゃんに挟まれた感じになってます。
因みに早苗ちゃん、私、亮くんはレジャーシートの前のほうに並んでます。ちょうど三人ずつ二列になった感じ?
お母さん達はママ友さんの隣にシートをひいてます。お父さん達がママ友さんの旦那さん達と仕事の愚痴語り始めてるのは、無視してます。ストレス溜まってるんでしょうね。
そっとしておこう。
「あ、始まるよ」
グラウンド整備が終わり、六回が始まります。
相手チームは投手が交代しました。次の子は球が速いみたいですね。
逆側の観客席からキャアキャア聞こえます。どうやら、投手の子は女の子人気があるらしい。
相手チームの声援に対抗心を燃やしたのか、応援の女の子達も大きな声を出し始めした。
……うるさいとか、思ってないよ?
六回は両者無得点。七回に相手チームが二点、八回に光希のチームが三点入れました。
「同点だぁ」
「相手に点がはいらなきゃ、光希君達にチャンスがあるね」
かなちゃんと早苗ちゃんの言葉に首だけ振って同意する。
うう~、見てるだけなのに、見てるだけだからドキドキするよ~。
ぎゅっと手を握り締めてグラウンドを見つめる。
早苗ちゃんも私の隣でおんなじ格好してます。ちょっと笑えてきちゃう。
「ぁ、え……っ!」
「ぅ、ひゃ…」
「あ~…よしっ」
上から、私、かなちゃん、長谷部君の呟きです。
早苗ちゃんはいつの間にか私の腕に掴まって無言で観戦してます。
力が強いよ、指食い込んでる。痛い痛い。
由紀乃ちゃんは長谷部君の二の腕辺りの服をぎゅっと握り締めて無言。
亮くんは普通に見てる気がする。腕を組んでじっとグラウンド睨んでる。
何とか、相手チームの得点を一点におさえました。
これで、光希のチームが二点入れれば勝ちです。
「頑張れ…」
光希のチームは七番目の打者から始まるので、光希の打順はもうない。
光希はベンチからグラウンドを見てる。私は、打者でも相手の投手でもなく、光希をじっと見詰めていました。




