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*4*

怪我、イジメについての描写、話が軸となっています。

苦手な方は二話分、飛ばしてください。

「6」の前書き部分に説明を入れます。



―ねぇねぇ、聞いた? 山の学習が早く終わった理由―


―……君が、夜居なくなったって―


―……君、怪我して崖下にいたって―


―ロッジから追い出されたって―


―イジメだったんじゃないかって―



一度だけ見た夢がフラッシュバックする。

懐中電灯に照らされた人。横向きに倒れているから、良く見なくても顔が判ります。


「…きうち、くん…」


足が震える。…足だけじゃないわ、体全体が震えてる。体の芯が冷えてるみたい。

頭が痛い…耳鳴りみたいに、キーンっ、て音が響く。


「晶子? …知ってる子?」

「っ!」

「!? 晶子!」


由紀乃ちゃんにそっと腕を触られて、思い出したように体が動いた。

傾斜を飛び降りるようにして木内君の所へ行き、顔を確認する。


「由紀乃ちゃん! 先生! 先生呼んできてっ!」

「! わかった!」


息はあるけど荒いし、顔も、体も凄い冷えてる。唇が真っ青だ。

どうしよう。どうしたら良い?


「ぅちくん、きうちくんっ、木内君っ」


指先まで冷たい。なのに、木内君の体は震えてない。

…寒いときに体が震えるのは、熱を作るためだったはず。震えてないって、あぶないんじゃ?


「っ! 木内君っ木内君!」


半袖の、剥き出しの木内君の腕を、ゆっくり擦る。

正しいかなんて解らない。でも、温めなきゃいけないのはわかる。

声を掛けながらひたすら擦る。着ていた私のジャージは木内君の剥き出しの足をくるむようにして、上から力を掛けないように擦る。


「晶子!」

「神代さんっ! っ! 木内君!?」


暫くしたらバタバタと走る音がして、いくつかの光に照らされた。

声からして、保健の斉藤先生かな。由紀乃ちゃんも戻ってきたみたい。


男の先生が数人降りてきて、木内君の体をそっと持ち上げて道の方へ押し上げる。由紀乃ちゃんもしゃがんで、木内君を覗き込んでます。

その場で簡単に診察するのかと思ったけど、木内君をた斉藤先生は、急いでバンガローへ連れて行きましょう。と木内君を体育の先生に背負わせて行きました。


「神代、南川。少し話を聞きたい。バンガローの方へ行こう」

「はい」

「…はい」


山元先生に手伝ってもらって傾斜をよじ登り、由紀乃ちゃんと一緒にバンガローに向かった。

道中、私達がおトイレに行くために起きたこと、帰ろうとして、小さな光が見えた気がしてこっちの方に来たこと、木内君と私が同じ部活なことを説明しました。


「あ、あのこれ、木内君、が斜面から上げられた時に落ちてきたんです。多分…この光を、私達見つけて……」

「キーホルダー? …豆電球のライトか…」


由紀乃ちゃんが山元先生に小さいものを渡しているのが分かった。

いつ拾ったんだろう?


バンガローに着くと、電気が点いていて、ざわざわと人の気配と話し声がする。

バンガローの前に、男子生徒が二人いる…?

不思議に思って、思わず由紀乃ちゃんの方を見たら、由紀乃ちゃんは少し首を傾げて何か考えてる様子。


「加藤先生」

「あ、山元先生。彼が…」


男子生徒と一緒にいた女の先生‐加藤先生が少し困ったように山元先生に駆け寄ってきました。

男子二人は、木内君のクラスメイトらしく、眼鏡の男子が木内君と一緒の班だったみたいで、帰ってこない木内君のことを先生に報告していたみたい。

だから、由紀乃ちゃんに先生呼んできて貰った時に、すぐに来てくれたんだろうな。


もう一人の男子は、くわ、とあくびをしながら不機嫌に顔を歪めて立っている。

イライラしているのか、足をパタパタと動かしてる。


「なぁセンセー、あいつ見つかったんだろ~? ならもーいーじゃん」


…なんだろうこの男子。木内君のクラスメイトなんだよね? 心配してる様子全くないし、なんで居るの?

嫌な感じの男子に、体の前で握っていた両手にグッと力が入る。


「…晶子、私もう一度おトイレ行ってくるから、ここにいてね」

「ぁ、うん分かった」


山元先生が男子の方へ行くときに、由紀乃ちゃんに小さな声で言われました。

先に帰らないようにですね。待ってますよ。


「日野、赤城を連れてきた理由を、聞かせてくれないか?」

「ぁ、あの……赤城君、が…木内君を、いっ、イジメてて…っ、何時も! 木内君を殴ったり、蹴ったりしてて! だからっ、…お風呂、木内君いなくて…友達が、赤城君に呼ばれてたって、教えてくれて…木内君、帰ってこなくて……」


躊躇うようにしどろもどろに話していた日野君? の声が、段々大きくなる。

吐き出すように、叫ぶように話された事に、頭が冷えてくる。

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