夢、もしくは記憶
「ーーっ! ーーはいたーー」
「あっちのーーはいませーーーっから、ーーくん」
……ん、何か煩い?
人の声が聴こえて、寝ていた私はうっすら目を開いた。
暗い視界にぼんやりと映るのは、木?
あぁ、ロッジの中だわ。夏山登山に来てたんだった。
視線を動かせば、一緒の班になった子達の寝顔がうっすら見えた。
「、せいーーーくんは、ーーがたーーにーー」
また、誰かの声。
ロッジの外から。多分先生達。
煩いなぁ、と思いながらも、私はまた眠りについた。
「ふぁあ~、おはよう」
「おはよー、顔洗いに行こ」
朝、班の友達と一緒に外の手洗い場に顔を洗いに行くと、他の班の子達が困惑した様子で何か話してる。
「おはよう、どうしたの?」
「あ、おはよー。それがね、何か、今日の予定が変わったんだって」
今日は山の頂上まで登って、下山して山の学習が終わる。その予定が変更になって、昼前には下山して解散になるらしい。
朝食のために集まった食堂で、山頂の天候が悪いから登山中止になったと先生から連絡があった。
「早く帰れるのは、ちょっと嬉しいね」
「でもちょっと残念。山頂から、晴れてたら富士山が見えるってお姉ちゃんに聞いてたのに」
バスが来るまでは食堂内で待機だそうで、皆でお喋りして時間を潰し、バスに乗って帰った。
「ねぇねぇ、聞いた? 山の学習が早く終わった理由」
「ーー君が、夜居なくなったって」
「ーー君、怪我して崖下にいたって」
「ロッジから追い出されたって」
「イジメだったんじゃないかって」
「怪我、酷いらしいよ」
「やっぱり、イジメ?」
「イジメじゃない? ーー君って確か……」