文化祭です
文化祭の、当日です。
クラスの展示も部活の展示も、特に問題なく設置が終わりました。
うちのクラスはガチで無人です。なので荷物を置くのは閉鎖する他のクラスになるらしい。
亮くんの機嫌も良さそうだし、光希も遊びに来るそうです。
うちの両親と亮くんの両親も来るらしいけど、まぁ、相手は特に必要ないでしょう。
「晶子」
「は~い」
体育館で文化祭の開始の挨拶? 朝礼? が終わり、その場での解散になりました。
荷物は朝一で置いてきたし、財布だけ持った状態です。
荷物置き場の教室は鍵が掛けられてしまい、帰り以外開かないので忘れ物に注意ですね。
亮くんに呼ばれ近くへ行けば、よし。って感じで頷かれ、手を掴まれてれっつごーです。
早苗ちゃんには言ってあるから大丈夫。生温かい目で見られたけど、もう気にしない。
不機嫌になった亮くんより全然問題ない。
「ん~、とりあえず、一年生から回る? 展示ばっかりだけど、一応」
「そうだな。二、三年は、特別教室やグラウンド使ってるから、興味あるものだけ回るか」
「うーん…三年のお化け屋敷は行きたいかな?」
たかが中学校の文化祭、だけどちゃんとパンフレットもあるし、所々に地図も貼られている。
パンフレットは邪魔になるから、ってことで、張られた地図を頭に叩き込みます。
午前中は一年生の展示と、剣道部の出し物に行くことにしました。
剣道部の出し物の当番は、三年生が毎年受け持つんだって。だから亮くんは一日フリーです。
「剣道部は~……、風船割り?」
「段ボールで作った刀で、マネキンに付けた風船を叩いて割る。簡単に出来そうだけど、風船は結び目部分だけテープで止めるらしいし、結構難しいと思うぞ」
「え~、メーンとか、コテーってやるの?」
一組から順に展示を見ながらお喋りしていれば、時々亮くんのクラスメイトっぽい子達が驚いたような顔で見てくる。
亮くんの微笑み、レアですしね。
ん? あの三人は……
「晶子、こっち」
「え、うん」
こっちを睨むような目で見ている三人組、私を呼び出した子達だなぁ、と思ったら、亮くんが方向転換しました。
見れば、三人を睨んでた。完全に三人組を敵認識してますね。
あぁ…折角機嫌良かったのに…。
「亮くん、剣道部行ってみようよ」
「そうだな。そうしたら、少し早いがご飯か?晶子の当番もあるし」
「うん。調理室だったよね~」
剣道部は、体育館の一角でやっていますね。
今日は体育館の床にブルーシートが敷かれているので、シューズを履き替える必要がないのが楽です。
「お、桑崎ぃ!」
「どうも」
剣道部の方へ向かえば、ガタイの良い男子生徒が亮くんを見つけ、大きな声をあげた。
剣道部の主将らしい。亮くんに教えて貰い、ぺこりと頭を下げれば、主将さんは驚いた表情になった。
「桑崎お前っ、彼女いたのかよっ! 何で黙ってた! 紹介しろよっ」
「何でって…聞かれた事はないですし。それに、わざわざ晶子を見せる必要がないです」
「亮くん…」
先輩ですよね? 言い方がキツい、っていうか、適当じゃないかな?
というか、彼女って言葉を否定しないの? ……あ、はい。任せます、何も言いませんから、じっと見るの止めようか。周りが騒いでるよ。
剣道部の人達がわらわら集まって来て取り囲まれる。
縦も横も大きい人ばっかりだから、威圧感強い。
ちょっと怖くなって亮くんと繋いでる手に力が入る。私の様子に気付いた亮くんが、三年生達をシッシッ、と追い払うような仕草をする。
そんなことしても、怒られないって凄いな亮くん。
「どうする晶子。やってみるか?」
「うーん…難しそう」
マネキンの頭、お腹、両手首の四ヶ所に小さな風船がついてる。
やってる子達を見ていれば、亮くんの言う通り、風船が風圧でふわふわ動いて当たらなかったり、当たってもずるっと滑ったりしててなかなか割れないみたい。
というか、どこから来たんだろう、このマネキン…
私、運動神経良くはないからなぁ。
止めておこうと思ったら、剣道部の人達が、参加費無料でやっても良い。と言って進めてきた。
そんな勝手に良いのか? と思ったけど、部員は一回はタダで出来るらしい。
亮くんの分、って感じかな? 亮くんがやると、確実にオールクリアーするからね。
……うん。頑張ったけど、一個も割れませんでした。




